公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問30|回避・制限性食物摂取症〈ARFID〉

公認心理師試験
Ig Knowledge 〜イグナレッジ心理ブログ〜

臨床心理士・公認心理師の有資格者が、心理界隈の知識についてまとめるブログです!

こんな人におすすめ

  • 心理学に興味がある人
  • カウンセラーになりたい人
  • 臨床心理士・公認心理師を目指す人
  • 若手臨床家のみなさま

 



noteも応援よろしくお願いします📔

note|Yamashun@心理屋さん



全記事一覧

公式問題

DSM-5の回避・制限性食物摂取症/回避・制限性食物摂取障害の特徴として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 小児に特有である。
  2. 食べることへの関心を失う。
  3. 過度の減量を契機に発症する。
  4. 体型に対する認知に歪みがある。
  5. 文化的慣習によって引き起こされる。

正答:②

この問題のポイント

第5回午前問30は、DSM-5における回避・制限性食物摂取症〈Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder:ARFID〉の特徴を問う問題です。

ARFIDを理解するときの最大のポイントは、

「食べる量が少ない」という結果ではなく、なぜ食物摂取が回避・制限されているのか

を見ることです。

ARFIDでは代表的に、

  • 食べること・食物への関心が乏しい
  • 味、におい、食感などの感覚的特性を強く避ける
  • 窒息や嘔吐など、食べた結果に対する恐怖がある

といった背景から、必要なエネルギーや栄養を十分に摂取できなくなります。

そのため、選択肢②「食べることへの関心を失う」が最も適切です。

ARFIDそのものについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

ARFIDとは

国立精神・神経医療研究センターの摂食障害全国支援センターでは、ARFIDを、食物摂取の回避または制限によって必要なエネルギー・栄養を十分に摂取できず、身体面または心理社会面に影響が生じる状態として説明しています。

診断上は、食物摂取の問題によって、次のような結果のうち1つ以上が生じることが重要です。

  • 著しい体重減少
  • 期待される体重増加が得られない、あるいは成長が遅れる
  • 著しい栄養不良
  • 経腸栄養や栄養補助食品への依存
  • 心理社会的機能の著しい障害

つまり、単に「好き嫌いが多い」「少食である」というだけではARFIDとはいえません。

栄養状態や成長、生活機能に臨床的に意味のある影響が生じているかが重要です。

摂食障害全体の位置づけについては、以下の記事も参考になります。

ARFIDの3つの代表的なパターン

ARFIDには一つの原因だけがあるわけではありません。

国立精神・神経医療研究センターの解説では、食物の回避・制限に至る契機として、大きく次の3つが整理されています。

1.食物への関心が乏しいタイプ

食欲が乏しい、食事そのものへの関心が低い、生来小食である、といったパターンです。

このタイプが、本問の②「食べることへの関心を失う」に対応します。

2.感覚的特性を避けるタイプ

  • におい
  • 食感
  • 温度
  • 見た目

など、食物の感覚的な特徴に対して強い不快感や過敏さがあり、食べられる食品が非常に限られるタイプです。

単なる好き嫌いとの違いは、栄養摂取や生活に大きな影響が出ているかどうかです。

3.食べた結果を恐れるタイプ

過去の窒息や嘔吐などをきっかけに、

  • また喉につまるのではないか
  • 吐いてしまうのではないか
  • 痛みが出るのではないか

といった恐怖が強まり、食べることを避けるタイプです。

同じARFIDでも、背景となるメカニズムはかなり異なります。

神経性やせ症との違い

ARFIDと神経性やせ症〈Anorexia Nervosa:AN〉は、どちらも体重減少や低栄養がみられる可能性があります。

しかし、食事を制限する理由が異なります。

ARFIDでは、体型や体重へのこだわり、ボディイメージの歪みを中核としません。

一方、神経性やせ症では、

  • 体重増加への強い恐怖
  • 体重増加を妨げる行動
  • 体重や体型の経験の仕方の障害

などが重要になります。

そのため試験では、

「食べない」ではなく「なぜ食べないのか」

を区別することが重要です。

神経性やせ症については以下の記事も関連します。

選択肢ごとの解説

① 小児に特有である

不適切です。

ARFIDは児童・青年期で臨床的に問題となることが多い疾患ですが、小児だけに生じる疾患ではありません。

国立精神・神経医療研究センターの専門家向け解説では、ARFIDは年齢に関係なく、小児・思春期・成人・高齢者を問わず診断されるとされています。

「子どもに多い」と「子どもにしか起こらない」は異なります。

選択肢の「特有」という限定表現に注意しましょう。

② 食べることへの関心を失う

適切です。正答です。

DSM-5のARFIDでは、食物摂取が制限される背景の例として、

摂食や食物への明らかな関心の欠如

が挙げられています。

食事への関心が乏しく、食べる必要性を感じにくい、あるいは食事を後回しにしてしまうようなパターンでは、結果として必要なエネルギー摂取が不足することがあります。

ただし、ARFIDの全員がこのタイプではありません。

感覚的な回避や、窒息・嘔吐への恐怖など、別の経路から食事制限が生じる場合もあります。

したがって②は、ARFIDの代表的な特徴の一つとして適切です。

③ 過度の減量を契機に発症する

不適切です。

体重を減らしたいという目的から食事制限を始め、体重・体型へのこだわりが中心となる場合は、ARFIDの典型的な病態とは異なります。

ARFIDでは、

  • 食物への関心低下
  • 感覚的特性への回避
  • 窒息や嘔吐などへの恐怖

が重要な背景になります。

「痩せたいから食べない」という動機をARFIDの中核として覚えないようにしましょう。

④ 体型に対する認知に歪みがある

不適切です。

これはARFIDと神経性やせ症を区別する重要なポイントです。

ARFIDでは、体重や体型へのこだわりやボディイメージの歪みを中核としません。

食事量が減少し、結果として低体重になっていたとしても、

  • 太ることが怖い
  • 自分は太っていると感じる
  • 体型を変えるために食事を制限する

という理由が中心ではありません。

したがって④は、ARFIDよりも神経性やせ症との鑑別で重要になる特徴です。

⑤ 文化的慣習によって引き起こされる

不適切です。

DSM-5の診断基準では、食物摂取の制限が、

  • 食物を得ることができない状況
  • 文化的に容認される慣習

によって十分に説明される場合には、ARFIDとは考えません。

つまり、文化や宗教上の習慣に基づいて特定の食品を食べないこと自体を、精神疾患として扱うわけではありません。

本人の文化的背景を無視して病理化しないことも重要です。

「偏食」とARFIDは同じではない

ARFIDを学ぶと、「偏食が強い=ARFID」と誤解しやすいので注意が必要です。

子どもにも大人にも、食べ物の好き嫌いや苦手な食感はあります。

診断上重要なのは、食物摂取の制限によって、

  • 体重や成長に影響がある
  • 栄養欠乏がある
  • 栄養補助や経管栄養への依存がある
  • 学校、仕事、家族との食事など心理社会的機能に大きな支障がある

といった臨床的な影響が生じていることです。

したがって、単なる「好き嫌い」「少食」とARFIDを同一視しないことが重要です。

ARFIDでは身体面と心理社会面の両方を見る

ARFIDでは、食行動だけでなく、その結果を評価する必要があります。

身体面では、

  • 低体重
  • 成長の遅れ
  • 栄養欠乏
  • 貧血
  • 低血糖
  • 脱水

などが問題になることがあります。

一方、心理社会面では、

  • 家族と同じ食事を取れない
  • 外食が難しい
  • 学校行事に参加しにくい
  • 食事場面への不安が強い

など、生活上の制約が大きくなることがあります。

ARFIDは「何を食べられないか」だけではなく、食物摂取の制限が身体と生活にどのような影響を及ぼしているかまで見る必要があります。

選択肢を比較する

選択肢 ARFIDとの関係 判定
① 小児に特有 成人・高齢者でも診断される 不適切
② 食への関心低下 代表的な発症パターンの一つ 適切
③ 過度の減量が契機 体重・体型目的の制限はARFIDの中核ではない 不適切
④ 体型認知の歪み 神経性やせ症との鑑別点 不適切
⑤ 文化的慣習 それだけで説明される場合はARFIDではない 不適切

試験での見分け方

ARFIDの問題では、

「食事量が少ないか」ではなく「なぜ食べられないのか」

を確認しましょう。

ARFIDで押さえる3つの方向は、

  1. 食への関心が乏しい
  2. 感覚的特性を避ける
  3. 食べた結果を恐れる

です。

さらに、

体型・体重へのこだわりが中心ではない

という点をセットで覚えると、神経性やせ症との鑑別がしやすくなります。

まとめ

第5回午前問30は、ARFIDの中核的な特徴を理解しているかを問う問題です。

ARFIDでは、食物摂取の回避・制限の背景として、

  • 食物への関心の乏しさ
  • 味・におい・食感などへの感覚的回避
  • 窒息や嘔吐などへの恐怖

がみられることがあります。

小児だけに限定される疾患ではなく、体型や体重への認知の歪みを中核としません。また、文化的慣習だけで説明される食事制限はARFIDとは区別されます。

したがって、正答は②「食べることへの関心を失う」です。

正答:②

Sources

  • 日本心理研修センター「第5回公認心理師試験 午前問題」

https://www.jccpp.or.jp/files/items/127/File/04_gokaku_happyo_05.pdf

  • 日本心理研修センター「第5回公認心理師試験 合格基準及び正答」

https://www.jccpp.or.jp/files/items/127/File/03_gokaku_happyo_06.pdf

  • 国立精神・神経医療研究センター 摂食障害全国支援センター「摂食障害とは|回避制限性食物摂取症」
摂食障害はどんな病気? | 摂食障害について | 摂食障害情報 ポータルサイト(一般の方)
摂食障害全国支援センターおよび摂食障害情報ウェブサイト検討委員会が運営する、摂食障害に関する情報を紹介するポータルサイトです。摂食障害で悩んでいるご本人や周囲のご家族・学校の先生など、一般の方向けの情報を掲載しています。
  • 国立精神・神経医療研究センター 摂食障害全国支援センター「摂食障害|専門家向け情報」
摂食障害の概説と疫学 | 摂食障害情報 ポータルサイト(専門職の方)
摂食障害全国支援センターおよび摂食障害情報ウェブサイト検討委員会が運営する、摂食障害に関する情報を紹介するポータルサイトです。医療従事者や保健師、心理職、養護教諭の方など、専門職の方向けの情報を掲載しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました