公式問題
公認心理師の基本的なコンピテンシーについて、最も適切なものを1つ選べ。
- 科学的な知見を参考にしつつも、直観を優先して判断する。
- 要支援者への関わり方や対応の在り方を自ら振り返って検討する。
- 普遍的な視点に立ち、文化的背景を考慮せず、要支援者を同様に扱う。
- 専門職としての知識と技術をもとに、最低限の実践ができるようになってから職業倫理を学ぶ。
正答:②
この問題のポイント
この問題では、公認心理師に必要な「コンピテンシー」を、単なる知識量や技術の有無ではなく、専門職として安全かつ適切に実践するための総合的な能力として理解できているかが問われています。
とくに重要なのが、選択肢②に示されている反省的実践(reflective practice)です。
反省的実践とは、支援が終わったあとに「うまくいった/うまくいかなかった」と感想を持つだけではありません。自分の関わり方、判断、感情、前提、価値観、要支援者への影響を振り返り、必要に応じて支援のあり方を修正していく専門的な実践です。
公認心理師のコンピテンシーを考えるときは、反省的実践だけでなく、科学的知識と方法、職業倫理、法的基準、文化的背景への配慮、多職種連携、生涯学習なども関連づけて理解しておくと整理しやすくなります。
コンピテンシーとは何か
コンピテンシーとは、ある専門職として必要な知識を「知っている」だけではなく、知識・技能・態度・倫理的判断などを統合して、実際の場面で適切に行動できる能力を指します。
公認心理師の場合、たとえば次のような側面が関係します。
- 専門職としての姿勢
- 自らの実践を振り返る反省的実践
- 科学的知識と研究方法の理解
- 要支援者との専門的関係の形成
- 職業倫理・法的基準の理解
- 文化的背景や多様性への配慮
- 多職種との連携
- 継続的な自己研鑽
厚生労働省が示す公認心理師養成の到達目標でも、「必要な倫理を身につけること」「自分の力で課題を発見し自己学習によって解決すること」「生涯にわたり自己研鑽を続けること」などが重視されています。
反省的実践とは
反省的実践では、自分自身の実践を対象化して検討します。
たとえば、
- なぜこの判断をしたのか
- 自分の思い込みや価値観が判断に影響していないか
- 要支援者の反応をどのように理解したか
- 自分の感情が関わり方に影響していないか
- 他の見立てや対応の可能性はなかったか
- 自分だけでは判断が難しい場合、誰に相談するべきか
といった点を振り返ります。
ここで重要なのは、振り返ること自体を目的にするのではなく、より安全で適切な支援へつなげることです。
そのため、反省的実践はスーパービジョンやコンサルテーション、生涯学習とも密接に関係します。
科学的知識と専門的判断
選択肢①では、「科学的な知見を参考にしつつも、直観を優先して判断する」とされています。
専門職の実践では、経験や臨床的判断が不要というわけではありません。しかし、科学的知見を脇に置いて直観を優先するという考え方は適切ではありません。
心理支援では、研究知見、要支援者の特徴や価値観、臨床上の専門的判断などを統合して考えることが重要です。
この考え方は、心理学におけるエビデンスに基づく実践〈EBPP〉と関連づけると理解しやすくなります。
職業倫理は「あとから学ぶもの」ではない
選択肢④では、最低限の実践ができるようになってから職業倫理を学ぶとされていますが、これは順序が逆です。
倫理は、ある程度経験を積んだ専門職だけが追加的に学ぶものではありません。
公認心理師として実践を始める段階から、
- 要支援者の安全
- 秘密保持
- 説明と同意
- 多重関係
- 利益相反
- 専門職としての限界
などを理解し、実践に組み込む必要があります。
公認心理師の職責と倫理については、公認心理師が留意すべき職責や倫理も関連します。
文化的背景を考慮する
選択肢③では、「文化的背景を考慮せず、要支援者を同様に扱う」とされています。
一見すると「誰に対しても平等に対応する」という意味に見えますが、専門的支援では、文化的背景、言語、家族観、宗教、生活環境、社会的条件などが、その人の経験や支援ニーズに影響することがあります。
したがって、文化的背景を無視して一律に扱うことが、必ずしも適切な支援になるとは限りません。
重要なのは、背景の違いを固定観念で決めつけることではなく、その人にとって何が重要なのかを確認しながら支援することです。
選択肢を確認する
① 科学的な知見を参考にしつつも、直観を優先して判断する
誤りです。
専門職としての判断では、科学的知見や専門的知識を踏まえて考える必要があります。経験や臨床的判断は重要ですが、直観を科学的知見より優先することが基本原則ではありません。
② 要支援者への関わり方や対応の在り方を自ら振り返って検討する
正しいです。
自分自身の関わりや判断を振り返り、限界や偏りを検討し、必要に応じて修正することは反省的実践の中核です。
③ 普遍的な視点に立ち、文化的背景を考慮せず、要支援者を同様に扱う
誤りです。
要支援者の文化的背景や多様性を考慮することも、専門職として重要なコンピテンシーです。一律に扱うことと、公平で適切な支援を行うことは同じではありません。
④ 専門職としての知識と技術をもとに、最低限の実践ができるようになってから職業倫理を学ぶ
誤りです。
職業倫理は実践開始後に追加で学ぶものではなく、専門職としての基盤です。養成段階から倫理的判断を学び、実践に組み込む必要があります。
試験対策
この問題では、選択肢の中にある次の表現に注目すると判断しやすくなります。
- 「直観を優先」
- 「文化的背景を考慮せず」
- 「実践ができるようになってから職業倫理を学ぶ」
これらはいずれも、専門職としての基盤コンピテンシーと逆方向の表現です。
一方で、「自ら振り返って検討する」は反省的実践そのものを示しています。
公認心理師のコンピテンシー=知識だけではなく、反省的実践・科学的知識・倫理・文化的多様性・連携・生涯学習を統合して実践する能力と整理しておくと、類題にも対応しやすくなります。
参考資料
- 一般財団法人 日本心理研修センター「第4回公認心理師試験 午前問題」
https://www.jccpp.or.jp/files/items/126/File/04_gokaku_happyo_05.pdf
- 一般財団法人 日本心理研修センター「第4回公認心理師試験 正答」
https://www.jccpp.or.jp/files/items/126/File/03_gokaku_happyo_05.pdf
- 厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査・コンピテンシー関連資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000966887.pdf
- 厚生労働省「公認心理師現任者講習会等に係るプログラムの到達目標」



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