公認理師資格試験 過去問解説 問105 双極性障害について

公認理師資格試験 過去問解説 問105 双極性障害について

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問105 双極性障害について、適切なものを1つ選べ。

① 遺伝的要因は、発症に関与しない。

② うつ病層は、躁病層よりも長く続く。

③ 自殺のリスクは、単極性うつ病よりも低い。

④ うつ病層に移行したら、気分安定薬を中止する。

⑤ 気分の変動に伴ってみられる妄想は、嫉妬妄想が多い。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ② うつ病層は、躁病層よりも長く続く

となります。

双極性障害

双極性障害に関する説明を見ていきましょう。

双極性障害では、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。躁状態になると、眠らなくても活発に活動する、次々にアイデアが浮かぶ、自分が偉大な人間だと感じられる、大きな買い物やギャンブルなどで散財するといったことがみられます。

出典:双極性障害(躁うつ病)|こころの病気を知る-厚生労働省

双極性障害は、気分の落ち込みや活動性の低下などに代表される抑うつ症状と、気分の高揚や活動性の増加などに代表される躁状態が交互に見られる精神疾患です。

DSM-5で双極性障害および関連障害群に該当する診断名の代表的なものは以下の通りです。

  • 双極性Ⅰ型障害 BipolarⅠ 
  • 双極性Ⅱ型障害 BipolarⅡ 
  • 気分循環性障害 Cyclothymia 

双極性Ⅰ型障害

躁病エピソードのみ、あるいは、軽躁病エピソードとうつ病エピソードが繰り返される

双極性Ⅱ型障害

軽躁病エピソードとうつ病エピソードが反復する

気分循環性障害

軽躁病エピソードとうつ病エピソードの反復が2年間以上続く

双極性Ⅰ型とⅡ型の大きな違いは、躁病エピソードの有無となっているので押さえておきましょう。

ちなみに、躁状態とは、「気分の高揚」、「活動性の増加」、「睡眠欲求の減少」、「自尊心の肥大」などを指し、軽躁病と躁病エピソードの違いは「症状の持続する期間」や「症状の重症度」となっています。

  • 躁病エピソード:4日間以上〜1週間未満
  • 軽躁病エピソード:1週間以上

選択肢の解説

①遺伝的要因は、発症に関与しない

双極性障害は遺伝病ではありませんが、双生児研究では一致率が約75%程度という結果が出ているものもあります。

つまり、同じ遺伝子を持つ双生児では約80%程度の確率で双極性障害に罹患するということになるため、遺伝子的な要因が関与していると考えられています。

うつ病も遺伝要因が関係しているといわれますが、双極性障害ではうつ病よりも遺伝的な要因の影響が高いといえます。

よって、こちらの選択肢は不適切となります。

②うつ病層は、躁病層よりも長く続く

双極性障害の各エピソードの期間に関しては個人差の影響が大きいですが、一般的にうつ病エピソードの方が長いとされています。

よって、「うつ病層は、躁病層よりも長く続く」という記述は正しいものとなります。

③自殺のリスクは、単極性うつ病よりも低い

自殺リスクに関して、以下のサイトの記述を見てみましょう。

自殺の生涯リスクは気分障害4%、アルコール依存症7%、双極性障害8%、統合失調症5%と推定され、併存疾患があると自殺関連行動の危険は増大し、精神障害が2つ以上ある人は自殺の危険が有意に高いと記されています。

出典:No.3 自殺の予兆への介入|こころの耳-厚生労働省

このように双極性障害では単独のうつ病よりも自殺リスクが高いといわれています。

よって、「自殺のリスクは、単極性うつ病よりも低い」は不適切な記述といえます。

④うつ病層に移行したら、気分安定薬を中止する

双極性障害の治療としては、気分安定薬単独か気分安定薬と非定型精神病薬、あるいは抗うつ薬が併用された薬物療法が行われます。

基本的にはうつ病エピソードの際も「抗うつ薬単独」での治療は、再発のリスク(いわゆる、躁転)を防ぐために行われません。

そのため、こちらの選択肢も不適切なものとわかります。

⑤気分の変動に伴ってみられる妄想は、嫉妬妄想が多い

軽躁病エピソードの際には幻覚・妄想といった精神病症状はみられないですが、躁病エピソードの際には幻覚・妄想が生じることがあります。

なかでも多いとされているのが、誇大妄想被害妄想とされます。

また、うつ病エピソードも重篤な際には、幻覚・妄想を伴うことが多いですが、こちらは微小妄想といわれ、「心気妄想」「貧困妄想」「罪業妄想」が代表的な症状となっています。

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まとめ

第3回公認心理師資格試験 問105は「双極性障害」に関してでした。

  • 双極性Ⅰ型障害 BipolarⅠ :躁病エピソードのみ、あるいは躁病エピソードに加えて軽躁病エピソードとうつ病エピソードが繰り返される
  • 双極性Ⅱ型障害 BipolarⅡ  :軽躁病エピソードとうつ病エピソードが繰り返される(うつが重い)
  • 気分循環性障害 Cyclothymia  :軽躁病エピソードとうつ病エピソードの反復が2年間以上続く

  • 躁病エピソード:4日間以上〜1週間未満
  • 軽躁病エピソード:1週間以上

  • 双極性障害の遺伝率は双生児研究で約75%
  • 躁病エピソード時には誇大妄想と被害妄想を含めた幻覚・妄想が生じることがある