公認理師資格試験 過去問解説 問130 生物心理社会モデル

公認理師資格試験 過去問解説 問130 生物心理社会モデル

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問130 生物心理社会モデルに共通する考え方を含んでいるものとして、 適切なものを2つ選べ。

① DSM-5

② HTPテスト

③ 洞察の三角形

④ Cannon-Bard 説

⑤ 国際生活機能分類ICF

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ①DSM-5 ⑤国際生活機能分類ICF

生物心理社会モデル

生物心理社会モデル(Bio-Psychi-Social model)とは、1977年にジョージ・エンゲルによって提唱されたモデルで、「人間の疾患について、病因と疾患という因果関係ではなく、生物学的・心理学的・社会的な複数の要因が絡み合ったシステムとして捉える」というものです。

当時の主流であった、生物医学モデル(Bio-Medical Model)に対比するモデルとなっています。

生物医学モデルでは、疾患に対して「遺伝子や身体の構造などの生物学的要因」のみ考慮して、疾患を診断して身体を治療するという考え方でしたが、生物心理社会モデルでは「遺伝子や身体の構造などの生物学的要因」「気分や行動などの心理学的な要因」「生活する環境といった社会的な要因」という3つの枠組みで疾患についてのアセスメントや介入をするという考え方になっています。

選択肢の解説

①DSM-5

DSM-5とは、精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の略で、記述的方法により精神疾患を分類することを目的としています。

DSMはアメリカ精神医学会によって出版されており、DSM-Ⅳ-TRまでは生活機能も含めた多軸診断が採用されていました。

最新版であるDSM-5では多軸診断は廃止されていますが、精神障害の診断基準に機能障害を含めている点などから、生物心理社会モデルに即した考え方といえます。

DSMについての詳細はこちらの記事をどうぞ

よって、選択肢①「DSM-5」は正しい回答といえます。

②HTPテスト

HTPテスト(House-Tree-Person Test)は、Buck バック により開発された描画テストです。

大まかな手順を説明すると、被検査者に、家と木と人物を順番に描かせて、解釈のための質問をするというものです。

心理検査であり生物心理社会モデルの考え方を反映したものではありません。

③洞察の三角形

洞察の三角形とは、Menninger(1958)による力動的(精神分析)な概念です。

説明に関しては以下の論文から引用します。

これはすなわち、過去・現在・治療内での対人関係における、隠された感情(衝動)・不安・防衛の反復パターン(あるいは自尊心の維持のために防衛を用いる反復パターン)をみることで、その人のありようを理解しようとする姿勢である。

出典:池田政俊(2008). 心理臨床におけるパーソナリティの見立て, 帝京大学心理学紀要, 12, 33-50.

このように、医学的な診断ではなく(関係なく)、心理学的な診断(つまり、見立てやアセスメント)の際に、三角形の関係性を意識するという概念となります。

よって、選択肢③「洞察の三角形」は生物心理社会モデルの考え方とはいえず、不適切な回答となります。

④Cannon-Bard 説

キャノン=バード説(Cannon-Bard)とは感情に関する理論のひとつです。

「人は泣くから悲しい」と、末梢の変化→情動体験といったプロセスを仮定したジェームズ=ランゲ説を反証したものとなります。

つまり、「悲しいから泣く」というように、情動体験→抹消の変化というプロセスを考えているため、中枢起源説とも呼ばれます。

このように感情の理論であるため、生物心理社会モデルとは無関係といえます。

⑤国際生活機能分類ICF

国際生活機能分類(International Classification of Functioning Disbility and Health:ICF)とは、

人間のあらゆる健康状態に関係した生活機能状態から、その人をとりまく社会制度や社会資源までをアルファベットと数字を組み合わせた方式で分類し、記述・表現をしようとするものである。

出典:国際生活機能分類ー国際障害分類改訂版ー|厚生労働省

とあります。

国際生活機能分類(ICF)
= 健康状態の構成要素(生活機能)に関する分類法

ICFが作成された目的については、国際生活機能分類ー国際障害分類改訂版ー|厚生労働省によれば、

”健康状況と健康関連状況を記述するための、統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供することである”とされています。

もともとは1980年に世界保健機関(WHO)が「国際疾病分類(ICD)」の補助として発表した「WHO国際障害分類(ICIDH)」が用いられていましたが、2001年5月にこのICFが採択されました。

ICFでは、「健康状態」を生活機能(心身機能/身体構造・活動・参加)」「背景因子(環境因子・個人因子)で分類します。

そして、この「生活機能」に支障が生じた状態を「障害」と捉えることになっています。

以上のように、ICFは疾患についてを生物学的要因(心身機能/身体構造)のみでなく、社会的な要因(活動・参加)や個人の心理的な要因(個人因子)で評価するなど生物心理社会モデルに基づいた考え方をしているといえます。

よって、選択肢⑤「国際生活機能分類ICF」は正しい記述といえます。