公認理師資格試験 過去問解説 問143 事例問題 「職場復帰支援」
- 2023.07.14
- 公認心理師(第3回)
- 事例問題, 産業・組織, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!
【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!
問143
20 代の男性 A、会社員。A は、300 名の従業員が在籍する事業所に勤務している。A は、うつ病の診断により、3か月前から休職している。現在は主治医との診察のほかに、勤務先の企業が契約している外部のメンタルヘルス相談機関において、公認心理師 B とのカウンセリングを継続している。抑うつ気分は軽快し、睡眠リズムや食欲等も改善している。直近3週間の生活リズムを記載した表によれば、平日は職場近くの図書館で新聞や仕事に関連する図書を読む日課を続けている。職場復帰に向けた意欲も高まっており、主治医は職場復帰に賛同している。
次に B が行うこととして、最も適切なものを1つ選べ。
① 傷病手当金の制度や手続について、A に説明する。
② A の診断名と病状について、管理監督者に報告する。
③ 職場復帰の意向について管理監督者に伝えるよう、A に提案する。
④ 職場復帰に関する意見書を作成し、A を通して管理監督者に提出する。
⑤ A の主治医と相談しながら職場復帰支援プランを作成し、産業医に提出する。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
職場復帰支援
職場復帰支援に関しては、厚生労働省が出している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が参考になります。
職場復帰支援の手引きを参照すると、職場復帰支援は大きく以下の5つの段階に分けられます。
- 病気休業開始及び休業中のケア
- 主治医による職場復帰可能の判断
- 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
- 最終的な職場復帰の決定
- 職場復帰後のフォローアップ
今回の事例問題は上記の段階に対応した問題となっているので、見たことのない方は職場復帰支援の手引きに目を通しましょう。
選択肢の解説
選択肢の解説の前段階として、事例の状況を整理します。
Aはうつ病の治療が進んでおり、各種症状は改善が得られて、日常的な生活を送ることができるようになっています。
さらに、A自身が職場復帰に意欲を示し、主治医も職場復帰に賛同している状態です。
先ほど説明した段階で考えると、「②主治医による職場復帰可能の判断」を終えた段階にあると考えられます。
①傷病手当金の制度や手続について、A に説明する
傷病手当金の制度や手続きについての説明などの経済的な保障は、①病気休業開始及び休業中のケアに行うことが妥当です。
本事例では既にその段階は超えていると考えるべきであるため、回答として不適切となります。
②A の診断名と病状について、管理監督者に報告する
診断名や病状などについての報告は、初期の①病気休業開始及び休業中のケアに行われる必要があります。
よってこちらの選択肢も不適切といえます。
③職場復帰の意向について管理監督者に伝えるよう、A に提案する
事例では②主治医による職場復帰可能の判断を超えて、③職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成段階に移行するタイミングと考えられます。
この第3段階は、事業者が行う必要があり、最初の段階として、休業中の労働者から事業者に対して職場復帰の意思を伝えることが必要となります。
そのため、選択肢③「職場復帰の意向について管理監督者に伝えるよう、A に提案する」は、事例に最も適切と考えられます。
④職場復帰に関する意見書を作成し、A を通して管理監督者に提出する
職場復帰に関する意見書が必要となるのは、休業中の労働者から事業者に対して職場復帰の意思が伝えられ、事業者が労働者に対して「職場復帰が可能」という旨の主治医からの診断書の提出を求めた際に診断書に付随して必要となるものです。
*公認心理師からの意見書が必ず必要というわけではなく、あくまで主治医の意見書が必要です。
選択肢③がない状態であれば、現段階のAには適切といえますが、選択肢③がある以上は最も適切なものとはなり得ないため、回答としては不適切となります。
⑤A の主治医と相談しながら職場復帰支援プランを作成し、産業医に提出する
職場復帰支援プランを作成するのは、事業者側の役割となっています。
このとき、事業場内産業保健スタッフ・管理監督者・休業中の労働者が連携して作成を進めていくこととなっています。
もちろん公認心理師も意見を求められることはあるかもしれませんが、あくまで事業者側が作成するということが前提となっています。
よって、こちらの選択肢も適切とはいえません。
職場復帰支援についてはこちらの記事も参考になりますので、一度ご参照ください。
-
前の記事
公認理師資格試験 過去問解説 問142 事例問題 器質的疾患の疑い 2023.07.12
-
次の記事
公認理師資格試験 過去問解説 問144 事例問題 「長時間労働者の面談指導」 2023.07.17
コメントを書く