第4回公認心理師試験・午前問36は、H. P. Griceの「会話の公理」について問う問題です。
正答は②「場の雰囲気に配慮する」です。
Griceは、会話が協力的に進むときの基本的な考え方として協調の原理(cooperative principle)を示し、その下に量・質・関係・様態の4つの会話の公理を整理しました。
問36の正答は②「場の雰囲気に配慮する」
選択肢は次の5つです。
- ① 根拠があることを話す。
- ② 場の雰囲気に配慮する。
- ③ 過不足なく情報を伝える。
- ④ その時の話題に関連したことを言う。
- ⑤ 曖昧な表現を避け、分かりやすく情報を伝える。
このうちGriceの4つの会話の公理に直接対応しないのが②です。
Griceの協調の原理とは
Griceは、会話の参加者が、その会話の目的や方向に応じて必要な発言を行うという協調の原理を提示しました。
その具体的な指針として、次の4つの公理が示されます。
- 量の公理(Quantity):必要なだけの情報を与え、多すぎたり少なすぎたりしない。
- 質の公理(Quality):偽りと考えることや、十分な根拠のないことを述べない。
- 関係の公理(Relation / Relevance):話題に関連することを述べる。
- 様態の公理(Manner):曖昧さや分かりにくさを避け、簡潔で秩序立った表現をする。
①「根拠があることを話す」
①は質の公理に対応します。
質の公理では、話者が偽りだと考えていることを言わないことに加え、十分な証拠・根拠のないことを言わないことが求められます。
したがって①は会話の公理に該当します。
②「場の雰囲気に配慮する」
②が正答です。
場の雰囲気や相手への社会的配慮は、実際のコミュニケーションでは重要です。しかし、Griceが整理した量・質・関係・様態の4公理そのものには、「場の雰囲気に配慮する」という独立した公理はありません。
したがって②が「会話の公理に該当しないもの」です。
③「過不足なく情報を伝える」
③は量の公理に対応します。
必要な情報量を満たす一方で、必要以上に情報を付け加えないことがポイントです。
したがって③は会話の公理に該当します。
④「その時の話題に関連したことを言う」
④は関係の公理に対応します。
発言は、その会話の目的や現在の話題と関連するものであることが求められます。
したがって④は会話の公理に該当します。
⑤「曖昧な表現を避け、分かりやすく情報を伝える」
⑤は様態の公理に対応します。
様態の公理では、分かりにくい表現や曖昧さを避け、簡潔かつ秩序立って表現することが重視されます。
したがって⑤は会話の公理に該当します。
5つの選択肢を整理する
| 選択肢 | Griceの公理との対応 | 判断 |
|---|---|---|
| ① 根拠があることを話す | 質の公理 | 〇 |
| ② 場の雰囲気に配慮する | 4公理に直接対応しない | ×/正答 |
| ③ 過不足なく情報を伝える | 量の公理 | 〇 |
| ④ 話題に関連したことを言う | 関係の公理 | 〇 |
| ⑤ 曖昧さを避け分かりやすく伝える | 様態の公理 | 〇 |
「公理に違反する=会話として失敗」とは限らない
Griceの理論では、話者が表面的には公理から外れた言い方をすることで、聞き手が会話の含意(conversational implicature)を推論する場合があります。
そのため、4つの公理は単純なマナー集や「必ず守らなければならない会話ルール」というより、話者が何を意味しているかを聞き手が推論するための理論的枠組みとして理解すると整理しやすくなります。
試験対策のポイント
- 量:必要十分な情報量
- 質:真実性・根拠
- 関係:関連性
- 様態:明瞭さ・簡潔さ・秩序
「量・質・関係・様態」の4語と、それぞれの意味をセットで覚えると本問は解きやすくなります。
まとめ
- 第4回公認心理師試験・午前問36の正答は②
- Griceの会話の公理は量・質・関係・様態の4つ
- ①は質、③は量、④は関係、⑤は様態に対応する
- ②「場の雰囲気に配慮する」は4つの公理に直接対応しない
- 会話の公理は、会話の含意を理解するための理論的枠組みでもある



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