公認理師資格試験 過去問解説 問98 正統的周辺参加

公認理師資格試験 過去問解説 問98 正統的周辺参加

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

Advertisement

 

【問98】正統的周辺参加

問98 学びは多様であるが、例えば洋裁を学ぶ際に、工房に弟子入りし、仕上げ、縫製、裁断などの作業に従事し、やがて一人前となるような学びを説明する概念として、最も適切なものを1つ選べ。

① 問題練習法

② ジグソー学習

③ 問題解決学習

④ 正統的周辺参加

⑤ プログラム学習

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④

 

④ 正統的周辺参加

となります。

 

Advertisement

 

正統的周辺参加

正統的周辺参加 Legitimate Peripheral Participation

正統的周辺参加理論とは、レイブとウェンガーによって提起された理論で、学習(学ぶこと)の本質を実践共同体への正統的周辺参加にあると考える理論である(レイブら,1993)。

出典:岩堀・宮本・矢守・城下(2015). 正統的周辺参加理論に基づく防災学習の実践. 自然災害科学,J.JSNDS, 34(2), 113-128.

 

「学習」にはいわゆる座学のように現場での実践を含まない形態での学習も含まれていますが、正統的周辺参加では実際に活動している人や組織≒実践共同体に、時間経過に伴って変化していく形で参加するということが学習の本質であるとされています。

 

細かい部分の理解を省略すれば、「実際に活動している人や組織(実践共同体)に参加」「時間経過に伴い関わり方が変化していく」がキーワードとなります。

 

実際に活動している熟達者からの指導が受けられるのであれば、「認知的従弟制」も近しい概念のように感じますね。

 

今回の問題では、洋裁を学ぶ際に座学ではなく、実際に実践をしている工房のなかで活動に従事して、時間経過(あるいは、熟練度の変化)によって多様な仕事に従事するようになって、やがて一人前になっていくという学習経過が記載されています。

 

先程の「実際に活動している人や組織(実践共同体)に参加」「時間経過に伴い関わり方が変化していく」の2つのキーワードを含んでいると考えられるため、正統的周辺参加の説明として矛盾しなさそうですね。

 

選択肢の解説

① 問題練習法

問題練習法という用語は辞書的な定義や関連する論文は見当たりませんでした。

 

推測するに、後述する「問題解決学習」が否定している機械的かつ受動的な学習態度、すなわち、ただ単純に練習問題を解いたり、暗記を行うことを示している可能性が高いでしょう。

 

したがって、今回の問題の回答としては不適切と考えられます。

 

② ジグソー学習

ジグソー学習 jigsaw method は、アロンソンが考案した協同学習の方法のひとつです。

クラス5〜6人からなる小集団(原集団)に分割し、それぞれのグループから一人ずつを集め、別の集団(新集団)をいくつか構成する。そして、学習教材を新集団の数に分割し、その一つ一つの部分を新集団で学習する。最後に、児童たちはそれぞれ原集団に戻り、新集団で学習した内容をメンバーの間で教え合う。

出典:心理学辞典|有斐閣

つまり、新集団で学習したテーマを原集団に戻って共有するというプロセスを通じて、学習者が「ある分野の専門家」であり「ある分野の初学者」という役割を担い、お互いに学習し合うという方法になります。

 

今回の問題文からはジグソー学習の要素は読み取れないため、選択肢②「ジグソー学習」は不適切となります・

 

③ 問題解決学習

問題解決学習 problem-solving learning とは?

生徒自らの積極的・能動的な問題解決過程を経て知識を習得させたり、問題解決の能力を発達させたりする学習指導の方法

出典:心理学辞典|有斐閣

アメリカの学者であるジョン・デューイが提唱した学習理論です。

 

学習は能動的なもので、自発的に問題を発見して解決していくことを目指す学習であるため、「課題解決学習」とも呼ばれています。

 

具体的には、「課題の発見」「仮説の設定」「解決策の考案」「解決策の実践」「振り返り」という流れがあるようです。

 

今回の問題では、課題や仮説などには触れられていないため、選択肢④「問題解決学習」は回答としては不適切になりますね。

 

⑤ プログラム学習

プログラム学習 programed learning とは?

一般には、学習目標の達成のために、系統だった内容を詳細な手順に沿って学習者自身が学習を進め、反応の正誤を確認できるような学習指導の方法を指す

出典:心理学辞典|有斐閣

つまり、学習内容を細かい段階に分けて学習者自身が進展を把握しつつ進めていく学習方法、ということになります。

 

プログラム学習には、スキナーが考案した直線型プログラム(目標までを一直線とみなして、スモールステップで学習が進んでいく)と、クラウダーが考案した枝分かれ型プログラム(各学習の特性に応じて進め方を多様化していく)の2種類があります。

 

今回の問題文には細かく具体的な目標などは記載されていないため、選択肢⑤「プログラム学習」は不適切なことがわかりますね。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問98は、正統的周辺参加について問題でした❗️

 

正統的周辺参加 = 実際に活動している人や組織≒実践共同体に、時間経過に伴って変化していく形で参加するということが学習の本質
あわせて、以下のキーワードも押さえておきましょう。
  • ジグソー学習
  • 問題解決学習
  • プログラム学習