第3回公認心理師資格試験 過去問解説 問5 人物名選択問題① 〜遊戯療法〜
- 2021.02.27
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問5】人物名選択問題①〜遊戯療法〜
問5 遊戯療法と最も関係が深い人物として、正しいものを1つ選べ。
① A. Ellis
② A. Freud
③ A. T. Beck
④ H. A. Murray
⑤ J. B. Watson
問5は「遊戯療法」についての問題になります。
問題の形式は人物名を選択するというものですが、少し曲者なのが全てアルファベット形式というところですね。
A. Freud(アンナ・フロイト)
となります。
Anna Freud(アンナ・フロイト)
現在の遊戯療法の基礎を築き、精神分析的自我心理学の開拓者でもある。
出典:心理臨床大事典|培風館
Anna Freud(アンナ・フロイト)は、精神分析の創始者であるSigmund Freud(ジークムント・フロイト)の娘で、主な功績としては以下のものがあります。
- 防衛機制を発展させた
- 精神分析学的自我心理学の基礎を作った
- 精神分析をこどもに適用する(児童分析)ことで、遊戯療法(プレイセラピー)を始めた
他にもさまざまな業績はありますが、試験対策としては以下のキーワードと人物名を結びつけておく必要があります!
アンナ・フロイト防衛機制、精神分析学的自我心理学、児童分析、遊戯療法(プレイセラピー)
児童を対象とした精神分析で、成人を対象とする場合と同じく、抵抗や防衛、転移(感情転移)などの解釈を扱う。しかし発展途上にあるため、自由連想やコミュニケーションの能力は不十分で、一般に遊戯療法が行われている。
出典:心理学事典|有斐閣
要するに、遊戯療法(プレイセラピー)の発端は、「児童を対象とした精神分析」なんですね。
遊戯療法の話題となると長くなってしまうため、別の記事で紹介することとしますが、「児童分析に対するアンナ・フロイトとメラニー・クラインの考え方の違い」については押さえておく必要があります。
簡単に説明すると、アンナ・フロイトは以下のように考えました。
児童の心的機能の未発達と両親との強い結びつきのゆえ、治療者は成人の時のような中立性を保つことなく積極的に介入し、児童の自我を強めること
としています。
残りの選択肢も見ていきましょう!
Albert Ellis(アルバート・エリス)
Albert Ellis(アルバート・エリス)は、論理(合理)情動療法(Rational Emotive Therapy:RET、あるいは論理療法Rational Emotive Therapy:RT)の創始者です。
エリスはこの合理情動療法に、「行動」を付け加えて、合理情動行動療法(Rational Emotive Behavioral Therapy:REBT)とも称しており、日本では「人生哲学感情療法」とも呼ばれます。
合理情動行動療法(REBT)に関しては、こちらのサイトが参考になります。
REBTで重要となる部分のみ抜粋して説明します!
Activating event:出来事(反応を引き出す出来事)
Belief:信念(出来事Aについての思考や信念)
Consequence::結果(信念Bから起きた感情・行動的な結果)
出来事Aに対する反応であるCはAによって直接引き起こされるように見えますが、その間に信念Bが存在しており、出来事Aに対する信念Bがクライエントの不適応を起こしていると考えます。
問題を起こす信念Bのことを非合理的信念(irrational belief)と呼びます。
REBTでは、この非合理的信念を問題を減らすような合理的信念(rational belief)にかえていくことが目標となります。
Dispute:論駁(非合理的な信念への反証)
Effect:効果(合理的信念の効果)
Aaron Temkin Beck(アーロン・ベック)
Aaron. T. Beck(アーロン・ベック)は、認知療法(Cognitive therapy)の創始者である精神科医です。
イェール大学医学部を卒業した後、精神分析療法を行っていたが、うつ病の精神療法的研究を通して認知のあり方がうつなどの情緒状態と深く関連していることを明らかにして、短期間の構造化された面接で非適応的な認知を修正することによってうつ病やパニック障害(恐怖性障害)などの精神疾患を治療することを目的とした認知療法を提唱した。
出典:心理学辞典|有斐閣
認知療法は、認知の歪みに焦点を当てる精神療法の1つです。
認知の歪みというフィルターを通した主観的な体験が、人の感情に強く影響を及ぼしていると考え、認知の歪みを修正していくことで感情の問題を治療していく精神療法になります。
認知の歪みは、パッと浮かんでくる考えやイメージである「自動思考(automatic thought)」と自分や世界に対する確信をもった考えやイメージである「スキーマ(schema)」の2つのレベルに分けられます。
【よく見られる認知の歪み】
- 二分割思考/白黒思考
- 選択的抽出
- 拡大視・縮小視
- 極端な一般化
- 情緒的理由づけ
- 自己関連づけ
Henry Alexander Murray(ヘンリー・マレー)
Henry. A. Murray(ヘンリー・マレー)はアメリカの心理学者で、Morgan(モーガン)とともに投影法検査である主題(絵画)統覚検査法(Thematic Apperception Test:TAT)を開発した人物です。
欲求(要求)は環境に働きかける行動を引き起こす個体内部からの力であり、「最初の状況ー行動パターンー週末の状況」という過程で表現される。欲求には空気・水・食物への欲求(一次欲求)と獲得・支配・顕示など二次的欲求があり、人格学で重要な後者に関しては20個の欲求の存在が仮定されている。
圧力は、環境内の対象や状況が個体に及ぼす、あるいは及ぼすことのできる効果をいう。圧力には個体にとって有利に働くもの(食物、友人など)や、妨害的に働くもの(侮辱など)がある。
出典:心理学辞典|有斐閣
欲求圧力理論はマレーの提唱した代表的な理論で、マレーはこの理論をもとにTATを開発しています。
また欲求圧力理論をもとにしたエドワーズ(Edwards)によって開発された性格検査(質問紙法)として、EPPS(Edwards Personal Preference Schedule)というものもあります。
TAT検査の概要は以下の通りです。
多様な受け取り方を許す場面を描いた図版30枚と、何も描かれていない白紙図版1枚からなる。これら31枚の図版から何枚かーマレーらの方法では20枚ーを選び、被験者に1枚1枚みせて、それぞれに物語をつくってもらう訳である。
出典:心理臨床大事典|培風館
Henry. A. Murray(ヘンリー・マレー)主題(絵画)統覚検査法(TAT)、欲求圧力理論
John Broadus Watson(ジョン・ワトソン)
J. B. Watson(ジョン・ワトソン)は、行動主義(Behaviorism)の提唱者です。
現代心理学における基本的方法論の一つ。科学的心理学とは行動の科学であり、その研究対象は客観的測定の不可能な意識ではなく直接観察可能は行動であり、その目的は刺激ー反応関係における法則性の解明であるとする立場
出典:心理学辞典|有斐閣
行動主義は、ヴントの内観法による意識心理学に対抗する形で1912年にワトソンによって提唱されました。
現在では古典的行動主義と呼ばれることもあります。
ワトソンが自分のこどもに対して行った有名な実験として、『アルバート坊やの実験』がありますね。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問5は「人物名選択問題① 〜遊戯療法〜」と人物に関する知識が問われる問題でした。
アンナ・フロイト:防衛機制、精神分析学的自我心理学、児童分析、遊戯療法
アルバート・エリス:論理(合理)情動療法
アーロン・ベック:認知療法
ヘンリー・マレー:TAT、欲求圧力理論
ジョン・ワトキンス:行動主義
がキーワードとなります。
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