公認心理師資格試験 過去問解説 問33 公認心理師の職責「公認心理師の具体的な業務」

公認心理師資格試験 過去問解説 問33 公認心理師の職責「公認心理師の具体的な業務」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

公認心理師試験の勉強方法はこちら💁‍♀️

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

 



 
 

【問33】公認心理師としての職責の自覚「公認心理師の具体的な業務」

問33 公認心理師の業務について、不適切なものを1つ選べ。

① 必要に応じて、他の保健医療の専門家と協力する。

② 心理療法の料金については、心理療法を始める段階で合意しておく必要がある。

③ 心理療法の効果に焦点を当て、限界については説明を行わず、心理療法を開始する。

④ 心理的アセスメントには、心理検査の結果だけではなく、関与しながらの観察で得た情報も加味する。

⑤ クライエントが、被虐待の可能性が高い高齢者の場合は、被害者保護のために関係者との情報共有を行う。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ③

 

③ 心理療法の効果に焦点を当て、限界については説明を行わず、心理療法を開始する。

となります。

 

第3回公認心理師資格試験では、初めての不適切なものを選べという問題になっています。

 

治療契約とインフォームド・コンセント

③ 心理療法の効果に焦点を当て、限界については説明を行わず、心理療法を開始する。

この選択肢と関連するキーワードとして治療契約が挙げられますので、まずは「治療契約」について確認していきましょう。

 

治療契約とは、簡単に説明すると、治療が開始される前に、治療者と患者(クライエント)の間で、治療の目標・方法・期間・ルールなどについて事前に話し合いお互いに合意を得ておくことといえます。

 

心理職も適切なインフォームド・コンセントを行い患者(クライエント)と治療契約を結びます。

 

インフォームド・コンセントに関してはこちらの記事をどうぞ💁🏻

 

首藤・山本・坂井(2016)によると、心理面接におけるインフォームド・コンセントは大きく以下の内容にわけられます。

  • 援助の根拠や援助方法、予想される結果に関する説明
  • 臨床心理学的援助の実施者である心理臨床家自身に関する説明
  • 時間帯や場所、費用など実施機関やシステムに関する説明

出典:首藤・山本・坂井(2016). 臨床心理学におけるインフォームド・コンセント, 中京大学心理学研究科・心理学部紀要, 16(1), 7-12.

 

「援助の根拠や援助方法、予想される結果に関する説明」の中には、心理学的援助(心理療法)を受けた場合の効果とリスク、受けない場合のメリットとリスクなどの説明が含まれます。

 

つまり、効果のみでなく、心理療法を受けた場合のリスク・デメリットという観点からも説明の必要性があります。

 

心理療法は特定の症状に対してある一定程度の改善効果は期待できますが、心理療法を受けることで全ての問題が解決するわけでもありませんし、いろいろな要因が重なって効果が限定されることもあります

 

心理療法を受けるために機関に訪れて継続して通うという労力を払う患者さん(クライエント)にとって、心理療法で全て改善できるわけではないという点はデメリットになるので、事前に知っておいて了解しておくべき内容となります。

 

そのため選択肢③ 「心理療法の効果に焦点を当て、限界については説明を行わず、心理療法を開始する」は、「限界については説明を行わず」の部分が不適切であるといえます。

 

この問題では「不適切なものを選べ」となっているため、問題の正答となります。

 

また、選択肢

② 心理療法の料金については、心理療法を始める段階で合意しておく必要がある。

についてですが、「料金」に関してもインフォームド・コンセントを行うべき内容に含まれています。

 

そのため、この選択肢は正しい記述となります。

 



 
 

選択肢の解説

公認心理師の義務

 

公認心理師法(連携等・守秘義務)に関してはこちらの記事をどうぞ💁🏻

 

連携等

① 必要に応じて、他の保健医療の専門家と協力する。

こちらの選択肢は、他職種との連携についてのものですね❗️

 

他職種との連携に関しては、公認心理師の義務として公認心理師法にも記載されています。

 

そのため、この選択肢は正しいといえますね。

 

守秘義務

⑤ クライエントが、被虐待の可能性が高い高齢者の場合は、被害者保護のために関係者との情報共有を行う。

公認心理師の義務として「守秘義務」がありますが、「虐待」に関してはそれぞれの福祉の法律によって守秘義務の例外状況となります。

 

高齢者に関する福祉の法律としては、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」があります。

 

同法では、高齢者の虐待(あるいは、虐待が疑わしい)を発見した場合、市区町村への通報努力義務とされています。

 

児童虐待のように、厳格に通告が義務づけられているわけではありませんが、心理職が虐待を発見した場合にはクライエントの尊厳を維持するための行動に出ることが望ましいと考えられます。

 

そのため、選択肢⑤「クライエントが、被虐待の可能性が高い高齢者の場合は、被害者保護のために関係者との情報共有を行う」は正しい判断と考えられます。

 

公認心理師の業務

公認心理師の業務内容に関しては公認心理師法に記載されています。

 

公認心理師法に関してはこちらをどうぞ💁🏻

 

④ 心理的アセスメントには、心理検査の結果だけではなく、関与しながらの観察で得た情報も加味する。

この選択肢は公認心理師の業務である「心理状態の観察・結果の分析」に関する内容となっています。

 

関与しながらの観察(participant observation)とは、アメリカの精神科医であるHarry Stack Sullivan(サリヴァン)が提唱した概念です。

観察者としての治療者は自らの存在の影響を排除して患者を観察することができない。

出典:心理学辞典|有斐閣

この概念は、「関与」と「観察」はお互いに相互作用があり、「関与」なしでの十分な「観察」は行われない、ということを示したものになります。

 

公認心理師の全ての業務に関して共通する態度といえるでしょう。

 

心理的アセスメントの重要なツールとして心理検査がありますが、心理検査も実施者とクライエントが関わりながら行われるものであるため、「関与しながらの観察」はもちろん適用されることになります。


そのため、選択肢④「心理的アセスメントには、心理検査の結果だけではなく、関与しながらの観察で得た情報も加味する」は正しいといえ、問題の回答としては不適切となります。

 



 
 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問33は、公認心理師の職責のなかから「公認心理師の具体的な業務」に関する問題でした。

 

基礎的な問題であるため、難易度が高いとはいえませんが、資格を取得してからの業務に深く関連する内容であるため、法律の項目などはあらためておさえておく必要があるでしょう。