公認心理師資格試験 過去問解説 問14 社会及び集団に関する心理学「自己中心性バイアス」

公認心理師資格試験 過去問解説 問14 社会及び集団に関する心理学「自己中心性バイアス」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問14】社会及び集団に関する心理学「自己中心性バイアス」

問14 自己中心性バイアスに該当する現象として、最も適切なものを1つ選べ。

① ハロー効果

② スリーパー効果

③ 自己関連づけ効果

④ フレーミング効果

⑤ スポットライト効果

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ⑤

 

⑤ スポットライト効果

となります。

 

社会心理学に関連する問題であり、基礎的な用語をおさえておけば回答可能ですね。

 

自己中心性とは?

 

世間一般で「自己中心的」といわれると、「自分の利益や考えを優先して行動する」「他人に対する思いやりがない」といった意味合いが思い浮かぶと思います。

 

心理学界隈では世間一般の「自己中心」とは若干ニュアンスが異なります。

「自己中心性」といわれると、ピアジェの発達段階の考え方である「自分以外の視点を想定したり理解できない」「客観的な事実や現実から物事を判断できず、主観の影響が強いこと」を意味することが多いです。

 

自己中心性自分の視点や経験で物事をとらえること

 

自己中心性バイアスとは、このような自己中心性に基づく認知の歪みをさしているため、「自分以外の視点を想定せずに、自分の視点や経験(主観)で物事を判断することによる認知の歪み」と考えればいいでしょう。

 

選択肢の解説

ハロー効果(halo effect)

ある側面について善し悪しの印象を受けると他の側面までその印象を適用しがちな傾向

出典:心理学検定 基本キーワード|実務教育出版

 

ハロー効果は、人を評価するときに、その人のあるひとつの特徴に対する評価が他の部分の評価にまで影響してしまうという認知の歪みの一種です。

 

この認知の歪みは良い評価・悪い評価のどちらにも繋がります。

 

聖人や神仏から光が発せられるように、1つの特徴から他の部分の評価を決めてしまうため後光効果光背効果とも呼ばれます。

 

ハロー効果は、「自分以外の視点を想定せずに、自分の視点や経験(主観)で物事を判断することによる認知の歪み」とはいえないため、自己中心性バイアスとはいえず、選択肢としては不適当となります。

 

スリーパー効果(sleeper effect)

説得効果が、時間の経過とともに増大する現象。信憑性の低い送り手による説得は、説得直後にはあまり効果がなく、一定時間経過後の方が効果的な場合がある。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

スリーパー効果を簡単に説明すると、信憑性の低い情報が時間が経つとともに信憑性の低さが忘れ去られて、情報の内容だけが記憶に残ってしまい情報を信じるようになるという現象をさしています。

 

もう少し細かく説明すると、信憑性の低さ=「割引き手がかり」と呼ばれ、情報を初めて得たときにはこの割引き効果が説得効果を減らすのに対して、時間経過とともに「割引き効果」が薄れて説得効果が上がる、といった流れです。

 

スリーパー効果は、「自分以外の視点を想定せずに、自分の視点や経験(主観)で物事を判断することによる認知の歪み」とはいえないため、自己中心性バイアスとはいえず、選択肢としては不適当となります。

 

自己関連づけ効果(self-reference effect)

記銘材料を自己に関連させて処理すると、意味的処理や他者に関連させて処理した場合よりも記憶が促進される、という記憶現象である。

出典:中尾・宮谷(2003). 自己関連付け効果に感情価処理が介在するか. 広島大学大学院教育学研究科紀要, 52, 291-296.

 

自己関連づけ効果を簡単に説明すると、新しい何かを記憶するときに、自分自身に関連づけた方法で覚える方が、記憶に残りやすい現象といえます。

 

形態・音韻・意味による処理や他者の情報と関連づけて記憶するよりも、自分自身に関連づけた方が、記憶の成績が良いという結果が複数の実験で示されています。

 

自己関連づけ効果は、「自分以外の視点を想定せずに、自分の視点や経験(主観)で物事を判断することによる認知の歪み」とはいえず、記憶の方略の話てであるため選択肢としては不適当となります。

 

フレーミング効果(framing effect)

意思決定問題における選択肢の生成において、全く同じ選択肢が生成され、他の客観的状況が同じでも、その心的構成の仕方(フレーミング:framing)によって結果が異なることがある。これをフレーミング効果という。たとえば、手術をするかどうかの意思決定をする場合、医師が生存率が95%と言うのと、死亡率5%と言うのでは、決定結果に及ぼす効果が異なると考えられる。

出典:竹村和久(1994). フレーミング効果の理論的説明ーリスク下での意思決定の状況依存的焦点モデルー, 心理学評論, 37(3), 270-291.

 

フレーミング効果とは簡単に説明すると、背景にある状況が全く同じ選択肢であっても、情報の提示方法(表現の仕方)によって、意思を決定する場合に与える影響が違うという現象を指します。

 

フレーミング効果は、「自分以外の視点を想定せずに、自分の視点や経験(主観)で物事を判断することによる認知の歪み」とはいえず、選択肢としては不適当となります。

 

スポットライト効果(spotlight effect)

スポットライト効果(spotlight effect)とは、自分の装いや振る舞いが、実際よりも周囲の注目を集めていると推測することである(Gilovich & Savitsky, 1999)。例えば、行為者が自分の行為に気づいた人を見積もるとき、潜在的な観察者の中で実際にその行為に気づいた人数よりも多くの人数を見積もる現象を指す。

出典:藤島・町田(2005). 化粧行動におけるスポットライト効果:化粧行動の顕現性推測における自己中心性バイアス. 昭和女子大学生活心理研究所紀要, 8, 35-44.

 

スポットライト効果は、「自分の見た目や行動が現実よりも他者から注目されている」と錯覚する現象を指します。

 

このスポットライト効果は、ネガティブなものだけでなく、ポジティブなものでも起きるようです。

 

スポットライト効果とも関連する選択的注意に関する記事はこちら💁‍♂️

スポットライト効果の場合、自分の視点からの考えや内的状態、行動が係留点となり、そこから他者の考えや内的状態、行動を推測することになると考えられる。その際の調節が何らかの理由で不十分なものとなり、他者は自分と類似した考えや内的状態、行動であると判断してしまう。この結果、「自分は注目されている」と実際よりも見積もることとなり、スポットライト効果が生じるのである。

出典:藤島・町田(2005). 化粧行動におけるスポットライト効果:化粧行動の顕現性推測における自己中心性バイアス. 昭和女子大学生活心理研究所紀要, 8, 35-44.

 

つまり、スポットライト効果の場合は、自分の経験や考えが判断の基準となって、それをもとに他者の考えなどを推測していく認知の歪みと考えられています。

 

そのため、「自分以外の視点を想定せずに、自分の視点や経験(主観)で物事を判断することによる認知の歪み」である自己中心性バイアスの1つと考えられ、回答として適切になります。

 

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まとめ

第3回公認心理師資格試験の問14は社会及び集団に関する心理学「自己中心性バイアス」に関する知識が問われる問題でした。

 

以下のキーワードはおさえておく必要があるでしょう。

キーワード
・ハロー効果
・スリーパー効果
・自己関連づけ効果
・フレーミング効果
・スポットライト効果