【公認心理師法②】公認心理師資格試験対策:公認心理師の義務(重要!)

【公認心理師法②】公認心理師資格試験対策:公認心理師の義務(重要!)

公認心理師法第2段として、今回の記事では公認心理師法に明記されている公認心理師の四つの義務とそれぞれの罰則について解説します!

公認心理師法のなかでも一番重要な部分になりますので、解釈も含めてしっかりと押さえておきましょう。

 

この記事で説明するのは、以下の内容です。

  • 第四十条  信用失墜行為の禁止
  • 第四十一条 秘密保持義務
  • 第四十二条 連携等
  • 第四十三条 資格向上の責務

 

公認心理師法の概要はこちら💁‍♂️

【公認心理師法①】公認心理師資格試験対策:目的、定義、欠格事由、登録、登録の取り消し

Advertisement

 

公認心理師の義務について(第四十条、第四十一条、第四十二条、第四十三条)

 

信用失墜行為の禁止(第四十条)

公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

出典:公認心理師法|第四十条|信用失墜行為の禁止

 

信用を傷つけるような行為全般のことを信用失墜行為といいます。

 

職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない

出典:地方公務員法|第三十三条|信用失墜行為の禁止

 

この信用失墜行為ですが、法律上では具体的な行為の内容までは明記されていませんが、信用失墜行為を禁止する条文は、国家公務員・地方公務員・国家資格などには常に明記されています。

 

ポイントは、仕事上での行為だけでなく、私生活での行動も含まれるという点です。

私生活上で刑事罰や民事罰の対象となる行為は概ね全て含まれると捉えて差し支えがないでしょう。

 

勤務時間のみでなく、勤務時間外でも守るべき義務になるといえます。

 

仕事上での行為としては、この記事で後ほど説明するような公認心理師法で明記されている義務の違反や、そのほかの公認心理師に関連する法案に対する違反も含まれるでしょうし、それぞれの職業上の倫理についての違反も信用失墜行為として該当すると考えられます。

 

この第四十条(信用失墜行為の禁止)に違反した場合、前回の記事で説明した第三十二条(登録の取り消し)の第二項に該当することとなるため、「名称の使用停止」あるいは「公認心理師登録の取り消し」といった処分の対象となります。

 

キーワード 信用失墜行為の禁止

  • 信用失墜行為=「その職の信用を傷つける」あるいは「職全体の不名誉となる行為」をさし、職務上(倫理違反)・私生活上(民事罰・刑事罰)全体が含まれる
  • 違反した場合、第三十二条(登録の取り消し)第二項に該当するため、「名称使用の停止」あるいは「登録の取り消し」の処分が下される

 

秘密保持義務(第四十一条)

公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

出典:公認心理師法|第四十一条|秘密保持義務

 

簡単に説明すると、「職務上で知り得た個人情報に関しては公認心理師でなくなったとしても他の人に伝えてはいけませんよ」となり、守秘義務に関する条文になります。

 

秘密保持義務の違反は、公認心理師法第四十六条に明確に規定されており、“一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金”となります。

 

また、個人情報に関連する法案として、個人情報保護関連5法もおさえておく必要があります。

個人情報関連5法
  • 個人情報保護法
  • 行政機関個人情報保護法
  • 独立行政法人等個人情報保護法
  • 審査会設置法
  • 整備法

守秘義務の例外状況

こちらの秘密保持義務には例外状況がいくつか存在します。ここでは簡単な説明のみに留めます。

 

「自傷他害」の可能性が明らかであり、命の危険性がある場合

こちらは1969年に起きた「タラソフ事件」とその判決である1976年の「タラソフ判決」に基づいています。

 

タラソフ事件とは、当時大学病院の精神科でカウンセリングを受けていた男子大学生が、同じ大学に通う女子学生を殺害したという事件です。男子大学生は当時の治療者に「殺害の意思」を告白していましたが、治療者は守秘義務の観点から被害者である女子大学生にはそれを告げていませんでした。

 

この事件の裁判での判決は、「治療者は守秘義務よりも第三者に対する危険を警告する義務」を負うという内容で、この場合、①対象者に対して危険を告げる、②対象者に知らせてくれる関係者(家族や親しい友人)に危険を告げる、③警察に通報する、④危険を回避する最大限の努力をすることが義務づけられました。

 

この犠牲者となり得る可能性がある対象者に対して安全の確保を優先することを保護義務といいます。

 

保護義務の対象者には、もちろんクライエント本人も含まれるため、守秘義務よりも自傷行為に対しても安全を確保するという保護義務が優先されるということです。

 

保護義務が発生するかどうかの判断のポイントは、「明確に差し迫った危険」があるか否かです。

 

虐待が疑われる場合

こちらを理解するためには、児童福祉法第二十五条(要保護児童発見者の通告義務)児童虐待の防止等に関する法律第六条(児童虐待に係る通告)をおさえておく必要があります。

 

要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない(抜粋)

出典:児童虐待防止法|第二十五条|要保護児童発見者の通告義務より抜粋

 

一 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道 府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

二 前項の規定による通告は、児童福祉法第25条の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

三 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の尊守を妨げるものと解釈してはならない。

出典:児童虐待の防止等に関する法律|第六条|児童虐待に係る通告

 

ポイントは、児童虐待の防止等に関する法律第六条の三項で、“守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の尊守を妨げるものと解釈してはならない”と明記されており、こちらが虐待の通告は守秘義務より優先されるべきであるという根拠となります。

 

カンファレンスなど、そのケースに直接関わっている専門家同士の話し合いを行う場合

こちらには、カンファレンスやケア会議、公認心理師に必須ともいえるスーパーバイズ(SV)も含まれます。

 

ここでのポイントは、原則として情報を開示するのにクライエント本人の同意が必要であり、かつ「必要な情報のみ」に限定しなければならないということです。

 

SVを受ける際には、クライエントに説明をして同意を得ることと、誰に伝えるのか(スーパーヴァイザーの氏名)を伝える必要があります。

 

法律によって認められている、あるいは、義務づけられてる場合

こちらは、代表的なものは裁判があげられます。

 

クライエント本人による明確な意思表示がある場合

クライエント本人が面接内での情報を誰かに伝えることを望んだ場合は、守秘義務は適応されませんが、「誰に」対して、「どんな目的」で、「具体的に何を」伝えて良いのかを1つずつ丁寧に確認しておく必要があります。

 

キーワード 秘密保持義務

  • 秘密保持義務」=「守秘義務」であり、違反した場合は、公認心理師法(第四十六条)に基づき、「1年以下の懲役」あるいは「三十万円以下の罰金」といった罰則が課される。
  • 秘密保持義務の例外としては、①「自傷他害」の可能性が明らかであり、命の危険性がある場合、②虐待の疑い、③専門家同士の話し合い、④法律上で認められている、⑤クライエント本人による意思表示がある。

 

連携等(第四十二条)

公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

二 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

出典:公認心理師法|第四十二条|連携等

 

簡単に説明すると、「多職種・他機関含めて連携を密にする必要がありますよ」ということを規定した条文になります。

 

ここでのポイントは第二項の“心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師がいるときは、その指示を受けなければならない”という部分です。

 

要するに、心理的な問題を主訴として医療機関(以外でも医師の診察)に受診しているクライエントさんに対して、心理的な支援を行う場合は同機関の主治医の指示を仰ぐ必要があることが、法律上で明記されたということです。

 

この第四十二条(連携等)に違反した場合は、第三十二条(登録の取り消し)の第二項に該当することとなるため、「名称の使用停止」あるいは「公認心理師登録の取り消し」といった処分の対象となります。

 

主治医の指示を受ける必要性」に関しては、非常に重要な部分となりますので、説明を補填するために以下の2つの資料を引用していきます。

厚生労働省|公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

日本精神神経学会|公認心理師法第 42 条第 2 項に係る主治の医師の指示に関する運用基準についての見解

なぜ指示を受ける必要があるのか(指示を受ける必要性)

 

まず始めに、主治医の指示を受ける必要性について確認していきましょう。

 

これは、公認心理師が行う支援行為は、診療の補助を含む医行為には当たらないが、例えば、公認心理師の意図によるものかどうかにかかわらず、当該公認心理師が要支援者に対して、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行うこと等によって、結果として要支援者の状態に効果的な改善が図られない可能性があることに鑑み、要支援者に主治の医師がある場合に、その治療方針と公認心理師の支援行為の内容との齟齬を避けるために設けられた規定である。

出典:厚生労働省|公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

 

ポイントは、“公認心理師の意図によるものかどうかにかかわらず、当該公認心理師が要支援者に対して、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行うこと等によって、結果として要支援者の状態に効果的な改善が図られない可能性がある”という部分です。

 

つまり、公認心理師がクライエントに対して主治医の治療方針と異なった対応をしてしまった場合、ダブルスタンダードとなり、結果としてクライエントさんに不利益が生じる可能性があるため、公認心理師は主治医の指示を受ける必要があるということです。

 

「公認心理師の専門性とは何か?」といった疑問を抱かせる部分ではありますが、日本精神神経学会では「医師法による医行為」と「公認心理師法による支援行為」を厳密に区別することは難しいとしたうえで以下の見解を出しています。

 

業務独占の立場から主治の医師が指示する「医行為」の場合には、名称独占である公認心理師の「支援行為」は含まれるものであり、それが、公認心理師法第 42 条第 2 項 (以下、法第 42 条第 2 項)において「主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」と規定された所以である。

日本精神神経学会|公認心理師法第 42 条第 2 項に係る主治の医師の指示に関する運用基準についての見解

 

簡単に説明すると「公認心理師による支援行為」の多くが「医師による医行為」に含まれるものであり、「医行為」は医師の業務独占とされていることから、医師による指示に従う必要性があるということです。

 

また運用基準には、

以下のような場合においては、主治の医師からの指示を受ける必要はない。

・ 心理に関する支援とは異なる相談、助言、指導その他の援助を行う場合

・ 心の健康についての一般的な知識の提供を行う場合

また、災害時等、直ちに主治の医師との連絡を行うことができない状況下においては、 必ずしも指示を受けることを優先する必要はない。ただし、指示を受けなかった場合は、 後日、主治の医師に支援行為の内容及び要支援者の状況について適切な情報共有等を行うことが望ましい。

出典:厚生労働省|公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

と記載されています。

 

こちらも見解がわかれている部分ですので、やはり可能な範囲で主治医の判断を仰ぐことが無難でしょう。

 

主治医にどのような指示を受ける必要があるのか(指示の内容)

 

次に、どんな内容の指示を受ける必要があるのかについて説明していきます。

 

具体的に想定される主治の医師からの指示の内容の例は、以下のとおりである。

・ 要支援者の病態、治療内容及び治療方針について
・ 支援行為に当たっての留意点について
・ 直ちに主治の医師への連絡が必要となる状況について 等

出典:厚生労働省|公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

 

こちらは条文そのままの理解で問題なさそうです。

 

①クライエントの病態、治療内容や治療方針について、②支援行為を行う際に注意すること、③主治医への連絡が必要となる状況などを確認する必要があります。

 

また指示を受けた際は、日時や指示の内容、継続した情報共有の必要性や具体的な日程などを記録に残しておく必要があります。

 

身体疾患に関する主治医の指示を受ける必要があるかどうかに関しては、現行の運用基準と日本精神神経学会の見解との間で意見がわかれています。クライエントに関わる主治医すべての指示を仰ぐことは現実的ではない部分も否めません。

 

今後運用基準の見直しが行われるまでは、現行の運用基準にある“要支援者に、心理に関する支援に直接関わらない傷病に係る主治医がいる場合に、当該主治医を主治の医師に当たらないと判断することは差し支えない”に従うことが現実的でしょう。

 

指示の内容

①クライエントの病態、治療内容や治療方針について、②支援行為を行う際に注意すること、③主治医への連絡が必要となる状況について指示を仰ぎ、指示を受けた日時・内容・継続した情報共有の必要性・具体的な日程を記録に残す。

心理的な支援に直接関連性の低い傷病に係る主治医は、現行の運用基準上では必ずしも指示を受ける必要はない。

 

主治医の存在をどのように確認するのか(主治医の有無の確認)

 

公認心理師は、把握された要支援者の状況から、要支援者に主治の医師があることが合理的に推測される場合には、その有無を確認するものとする(抜粋)

出典:厚生労働省|公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

 

見解がわかれているポイントは“合理的に推測される場合”という部分です。

これに対する日本精神神経学会の見解を見てみましょう。

 

保健医療の現場だけではなく、どの現場であっても、健康や傷病の問題に遭遇する際は 「主治の医師の有無を確認」することは基本的な情報収集であり、医師は通常、かかりつけの医療機関の有無を確認している。(略)「支援行為」を始める際に、要支援者が拒否する場合だけ確認できない事もやむをえないという記載に変更するべきである。

日本精神神経学会|公認心理師法第 42 条第 2 項に係る主治の医師の指示に関する運用基準についての見解

 

確かに、医療機関では「病院受診の有無」「その他の疾患の有無および治療」などを確認するのは当たり前となっておりますので、クライエントとの初回来談までの電話受付の際やインテーク面接時に「かかりつけの医療機関や主治医の有無」を必ず確認するというこの見解が妥当なように思われます。

 

また運用基準でも日本精神神経学会の見解でも、「クライエントの意向を尊重する」ことが重要視されていますが、クライエントが主治医が関わることを拒否する場合には、法律上の規定であることや医師の責任性を丁寧に説明して同意を得る必要があるという部分は一致しています。

 

基本的にはクライエントの同意は必要となりますし、同意を得るための努力を継続的に続ける必要もありますが、秘密保持義務の例外にもあるように、専門家間での限定的な守秘義務として、同意が得られなくても主治医との連携を取る必要があると理解しておいた方が良さそうです。

 

また、クライエント本人に確認するのが原則ですが、こちらも状況によっては、関係者に直接確認することが起こり得るでしょう。

 

主治医の有無の確認

初回面談開始時までに主治医の有無を確認する。原則、クライエント本人に直接確認、かつ、同意を得た上で主治医の指示を受けるが、状況によっては同意の有無にかかわらず関係者に確認することや主治医の指示を受けることもあり得る。

 

資質向上の責務(第四十三条)

 

これまでは法律上の義務に関して説明してきましたが、第四十三条は「責務」つまり「努力義務」となります。

 

公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

出典:公認心理師法|第四十三条|資質向上の責務

 

公認心理師資格は国家資格であるため、一度取得すると更新の必要性はありませんが、「日々自身を振り返り研鑽を積むことように努めてくださいね」ということです。

 

ポイントは、臨床心理士資格では5年ごとの更新が義務づけられていますが、公認心理師資格では「責務」という点です。

資格に関してはこちら💁‍♂️

 

そのため、違反した際に罰則や処分に関する規定はありません。

 

Advertisement

 

まとめ

この記事では、公認心理師の義務(信用失墜行為の禁止・秘密保持義務・連携等・資質向上の責務)に関してまとめてきました。

 

いずれも非常に重要でありますが、まだ曖昧とされている部分もいくつかあるため、資格を取得したあとでも運用基準の見直しなどには敏感になっておく必要があります。

 

本日紹介した義務を含めた公認心理師法で規定された罰則に関してまとめました。

義務など 罰則 処分
第四十条  信用失墜行為の禁止 民事罰・刑事罰

(公認心理師法 第三十二条)

登録取り消し

名称使用の停止

第四十一条 秘密保持義務 (公認心理師法 第四十六条)

1年以上の懲役

30万円以下の罰金

(公認心理師法 第三十二条)

登録取り消し

名称使用の停止

第四十二条二項 連携等(主治医の指示) ×

(公認心理師法 第三十二条)

登録取り消し

名称使用の停止

第四十三条 資質向上の責務 × ×
第四十四条 名称使用の制限 30万円以下の罰金 ×

 

資格試験勉強についてはこちら💁🏻