公認心理師資格試験 過去問解説 問65 事例問題:児童自立支援施設

公認心理師資格試験 過去問解説 問65 事例問題:児童自立支援施設

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

Advertisement

 

【問65】事例問題:児童自立支援施設

問65 9歳の男児 A、小学3年生。A は、学校でけんかした級友の自宅に放火し、全焼させた。負傷者はいなかった。A はこれまでにも夜間徘徊で補導されたことがあった。学校では、座って授業を受けることができず、学業成績も振るわなかった。他児とのトラブルも多く、養護教諭には、不眠や食欲不振、気分の落ち込みを訴えることもあった。A の家庭は、幼少期に両親が離婚しており、父親 B と二人暮らしである。 家事は A が担っており、食事は自分で準備して一人で食べることが多かった。時折、B からしつけと称して身体的暴力を受けていた。
家庭裁判所の決定により、A が入所する可能性が高い施設として、 最も適切なものを1つ選べ。

① 自立援助ホーム

② 児童自立支援施設

③ 児童心理治療施設

④ 児童発達支援センター

⑤ 第三種少年院医療少年院

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ⑤

 

② 児童自立支援施設

となります。

 

社会的養護に関連する事例問題となっていますね❗️社会的養護に関しては以下をご一読ください💁🏻

 

 



児童自立支援施設

児童自立支援施設とは、かつて「教護院」と呼ばれていた施設です❗️

*1998年4月の児童福祉法改正により名称が児童自立支援施設に変更となりました。

 

施設の目的は、児童福祉法第44条に規定されています。

第四十四条

児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

出典:児童福祉法|e-Gov法令検索

 

つまり児童自立支援施設とは、

  • 不良行為を行った児童
  • 不良行為を行うおそれのある児童
  • 家庭環境などから生活指導が必要な児童

を対象として、自立を支援していく施設となります。

 

懲罰や矯正が目的ではなく、家庭的な集団生活のなかで、気持ちの安定や生活の安定(学校生活なども含めた)を図る施設です。

 

ここで本事例について確認しましょう。

小学校3年生 9歳 男子

学校で喧嘩した同級生の自宅を放火し全焼させた。負傷者はいなかった。

過去に夜間徘徊で補導されたことがあり、学校では離席多く、学業成績も振るわない。他児童とのトラブルも多く、不眠・食思不振・気分の落ち込みを訴えることもあった。

両親は離婚しており、父親と二人暮らし。家事を担うことや、しつけと称した身体的暴力を受けていた。

 

ここでのポイントは、

  • Aは刑法に触れる行為をしたが14歳未満であるため「触法少年」であるということ
  • 家庭環境から虐待が疑われ、情緒面の不安定さも散見されるなど、家庭環境含めた生活の調整が必要と考えられること

となります。

 

14歳未満の触法少年は、刑事責任能力が欠けていると判断されるため、刑法ではなく少年法が適用となり、児童相談所通告ののち、重大な事件であれば児童相談所に送致されることになります。

 

また、児童相談所の判断で家庭裁判所へ送致となることもあります。

 

今回の事例の場合、触法少年であること(放火して全焼という重大な事件を起こしていること)から鑑みても、児童自立支援施設への入所が最も妥当であると判断できますね。

 



選択肢の解説

① 自立援助ホーム

自律援助ホームは、児童福祉法第6条の3第33条の6によって位置付けられている「児童自立生活援助」を行うための施設です。

 

「自立援助ホーム」とは、なんらかの理由で家庭にいられなくなり、働かざるを得なくなった原則として15歳から20歳まで(状況によって22歳まで)の子どもたちに暮らしの場を与える施設です。

出典:全国自立援助ホーム協議会|自立援助ホームとは

 

詳細に関しては、全国自立援助ホーム協議会のホームページが参考になりますので、是非ご覧ください。

 

③ 児童心理治療施設

児童心理治療施設とは、かつて「情緒障害児短期治療施設(いわゆる、情短)」と呼ばれていた施設です。

 

児童心理治療施設は児童福祉法第43条の2に以下のように規定されています。

第四十三条の二

児童心理治療施設は、家庭環境、学校における交友関係その他の環境上の理由により社会生活への適応が困難となつた児童を、短期間、入所させ、又は保護者の下から通わせて、社会生活に適応するために必要な心理に関する治療及び生活指導を主として行い、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

出典:児童福祉法|e-Gov法令検索

 

児童心理治療施設は、心理的な困難を抱え日常生活に生きづらさを感じており、心理的な治療が必要とされる児童を入所・通所させて、治療を行う施設とされています。

 

対象年齢は、学童期から18歳までですが、必要に応じて20歳までは延長することが可能なようです。

 

平均的な入所期間は2年半ほどで、入所期間が比較的長いことを加味して情緒障害児短期治療施設(いわゆる、情短)から児童心理治療施設への名称の変更がされました。

 

④ 児童発達支援センター

児童発達支援センターは児童福祉法43条に規定される施設です。

第四十三条

児童発達支援センターは、次の各号に掲げる区分に応じ、障害児を日々保護者の下から通わせて、当該各号に定める支援を提供することを目的とする施設とする。
一 福祉型児童発達支援センター 日常生活における基本的動作の指導、独立自活に必要な知識技能の付与又は集団生活への適応のための訓練
二 医療型児童発達支援センター 日常生活における基本的動作の指導、独立自活に必要な知識技能の付与又は集団生活への適応のための訓練及び治療

出典:児童福祉法|e-Gov法令検索

 

つまり、身体障害、知的障害、発達障害、精神障害などを有する児童を対象として、日常生活に必要な基本的動作や知識・技能、集団生活に適応できるための訓練を行う施設です。

 

主に生活面や学業面での適応するための支援を行う「福祉型児童発達支援センター」と身体の機能障害がある児童を対象とした「医療型児童発達支援センター」の2種類があります。

 

放課後等デイサービスは「福祉型児童発達支援センター」に含まれます。

 

手帳の有無は関係ありませんが、利用には各市町村の判断が必要とされています。

 

⑤ 第三種少年院医療少年院

少年院は2015年(平成27年)の少年院法の改正により、4つの種類に分けられるようになりました。

  • 第一種少年院心身に障害がないおおむね12歳以上23歳未満の者を収容する
  • 第二種少年院心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を収容する
  • 第三種少年院心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満の者を収容する
  • 第四種少年院:少年院において刑の執行を受ける者を収容する

 

第三種少年院は、医療少年院とも呼ばれています。

 

いずれにしてもAは年齢的に少年院への入所は適応されませんね。



まとめ

第3回公認心理師資格試験の問65は、事例問題:児童自立支援施設に関する問題でした❗️

 

今回の問題のキーワードは以下の通りでした。

 

 

 

キーワード・自立援助ホーム:児童福祉法第6条の3、第33条の6:15歳以上20歳までの自立支援
・児童自立支援施設:児童福祉法第44条:不良行為、不良行為のおそれ、家庭環境など生活の調整が必要な児童への支援
・児童心理治療施設:児童福祉法第43条の2:心理的な治療が必要とされる18歳までの児童
・児童発達支援センター:児童福祉法第43条:障害を有している児童を対象に日常生活に必要な基本的動作や知識・技能、集団生活に適応できるための訓練を行う
・第三種少年院:少年院法:「医療少年院」