公認理師資格試験 過去問解説 問146 事例問題 「家族への心理教育」

公認理師資格試験 過去問解説 問146 事例問題 「家族への心理教育」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問146 

55 歳の男性 A、会社員。A は、意欲や活気がなくなってきたことから妻 B と共に受診した。A は4か月前に部長に昇進し張り切って仕事をしていたが、1か月前から次第に夜眠れなくなり、食欲も低下した。仕事に集中できず、部下に対して適切に指示ができなくなった。休日は部屋にこもり、問いかけに何も反応しないことが多くなり、飲酒量が増えた。診察時、問診に対する反応は鈍く、「もうだめです。先のことが見通せません。こんなはずじゃなかった」などと述べた。血液生化学検査に異常所見はみられなかった。診察後、医師から公認心理師 C に、B に対して家族教育を行うよう指示があった。

C の B への説明として、不適切なものを1つ選べ。

① 薬物療法が治療の1つになります。

② 入院治療が必要になる可能性があります。

③ できる限り休息をとらせるようにしてください。

④ 今は落ち着いているので自殺の危険性は低いと思います。

⑤ 気晴らしに何かをさせることは負担になることもあります。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ④ 今は落ち着いているので自殺の危険性は低いと思います

選択肢の解説

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今回の事例問題では、公認心理師が家族に行う心理教育として不適切な内容を選ぶ必要があります。

本事例を整理すると以下のようになります。

  • 1か月前から、不眠症状、食欲低下、集中困難、意欲の低下など、抑うつ症状が出現した。
  • 休日は部屋に引きこもりがちとなり、飲酒量が増加。周囲からの問いかけに対する反応も鈍くなっている。
  • 先行きに対する絶望感を訴えている。

問題文から把握できる範囲でも、重篤な抑うつ症状があることがわかります。

発端は環境の変化(昇進)ではありますが、①症状が重篤であること、②飲酒など不適切な対処法をとっていることから、薬物療法・入院治療が選択される可能性が高く、自殺のリスクも高い状態と考えられます。

これらのことから、選択肢①「薬物療法が治療の1つになります」、②「入院治療が必要になる可能性があります」、③「できる限り休息をとらせるようにしてください」は、家族に伝える内容として適切な内容となります。

残りの選択肢は④と⑤ですが、選択肢④「今は落ち着いているので自殺の危険性は低いと思います」は現状を鑑みると最も不適切な選択肢といえるでしょう。

また、選択肢⑤「気晴らしに何かをさせることは負担になることもあります」は、思考制止や精神運動抑制も生じているようなうつにはかえって負担となることがあるため、適切な言葉掛けとなりますね。