第3回公認心理師試験・午前問1は、要支援者と公認心理師の関係について、支援の枠組み、医療との連携、多重関係、組織的判断、学校危機対応を横断して問う問題です。
正答は②「投薬が必要となり、精神科に紹介したケースも、必要であれば心理的支援を継続する」です。
ポイントは、精神科への紹介や薬物療法の開始が、心理的支援の終了を自動的に意味するわけではないことです。一方で、要支援者に心理支援に係る主治の医師がいる場合、公認心理師には主治の医師との連携と、法令上求められる指示への対応が必要です。
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【問1】要支援者と公認心理師の関係
問1 要支援者と公認心理師の関係について、適切なものを1つ選べ。
① 心理療法の面接時間は、要支援者のニーズに合わせてその都度変えるのが良い。
② 投薬が必要となり、精神科に紹介したケースも、必要であれば心理的支援を継続する。
③ 知らない人に対して気後して話ができないという友人の母親のカウンセリングを引き受ける。
④ 大学附属の心理相談室で新規ケースのインテーク面接を行う場合、受理するかどうかは自分一人で決める。
⑤ 学校内で自殺者が出た場合の緊急介入時には、事実を伝えるのは亡くなった生徒と親しかった少数のみに限定するのが原則である。
正答:②
第3回公認心理師試験の午前問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式ページで確認できます。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター
②が正しい理由:精神科紹介後も心理支援は継続しうる
心理的支援の途中で、症状や安全面などから精神科等の医療機関への紹介が必要になることがあります。
しかし、医療機関へ紹介したことだけを理由に心理的支援を終了しなければならないわけではありません。要支援者にとって心理的支援が引き続き必要であり、役割分担と連携が適切に行われるのであれば、支援を継続することは可能です。
精神科へ紹介することと、心理支援を終了することは同義ではない
という点が、この選択肢の中心です。
主治の医師がいる場合は「連携」と「指示」が重要
公認心理師法第42条は、他職種・関係機関との連携を定めています。
さらに第42条第2項では、心理に関する支援を要する者に、その支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならないとされています。
厚生労働省・文部科学省の運用基準では、この規定は、公認心理師の支援内容と主治医の治療方針との齟齬を避け、要支援者に適切な支援を提供するためのものと説明されています。
したがって②は、
- 精神科紹介後も必要に応じて心理的支援を継続できる
- 主治医がいる場合は、法令と運用基準に沿って連携し、必要な指示を受ける
という二つをセットで理解するのが適切です。
なお、これは「心理支援を続けるかどうかを主治医だけが一方的に決める」という意味ではありません。運用基準は、公認心理師の専門性・自立性を損なわないことにも配慮しつつ、主治医との連携を求めています。
① 面接時間をその都度変えるのがよい?
①は不適切です。
心理的支援では、面接の時間・場所・頻度などの枠組みをあらかじめ共有し、一定の予測可能性を保つことが重要です。
もちろん、支援法、機関、要支援者の状態、安全上の必要などによって面接設定を調整することはあります。
しかし、選択肢のように、要支援者のその時々のニーズに合わせて面接時間を毎回変えることを一般原則とするのは適切ではありません。
枠組みは固定絶対ではないが、「その都度変えるのがよい」が原則ではない
と整理するとよいでしょう。
③ 友人の母親のカウンセリングを引き受ける?
③は、多重関係の観点から慎重な判断が必要な場面です。
日本公認心理師協会の倫理綱領・ガイダンスでは、専門的な支援関係と、それ以外の個人的・社会的関係が重なることによって、支援の公正さや専門的判断が損なわれるような不適切な多重関係を避けることが重視されています。
「友人の母親だから必ず支援してはいけない」という単純な法的禁止として覚える必要はありません。
ただし、友人関係を介した依頼をそのまま引き受けると、
- 秘密保持が複雑になる
- 支援者としての中立性・客観性が損なわれる
- 友人との関係と専門的支援関係が衝突する
などの問題が生じる可能性があります。
したがって、③を「適切」とすることはできません。
④ 新規ケースの受理を自分一人で決める?
④も不適切です。
大学附属の心理相談室などの組織では、新規ケースの受理・担当決定は、担当者個人だけの判断ではなく、相談室の方針や受理手続きに沿って、スーパービジョンやカンファレンス等を含む組織的な検討を行うことが重要です。
特に、
- 相談内容が機関の支援範囲に合っているか
- 緊急性や安全上の問題がないか
- 医療・福祉・教育など他機関との連携が必要か
- 担当者の力量や役割に適合するか
などを確認する必要があります。
「受理するかどうかは自分一人で決める」という記述が誤りのポイントです。
⑤ 学校で自殺が起きたとき、事実は親しかった少数だけに伝える?
⑤も不適切です。
学校で児童生徒の自殺が起きた場合、情報共有は非常に慎重に行う必要があります。しかし、「親しかった少数の生徒だけに限定して事実を伝えること」が原則ではありません。
文部科学省『子供の自殺が起きたときの緊急対応の手引き』では、正確な情報を保護者に伝え、憶測に基づく噂の拡大を防ぐことや、学校と保護者が協力して対応することが示されています。
また、児童生徒へ事実を伝える際には、遺族への配慮や了解、児童生徒への心理的影響、個人情報の保護などを踏まえながら、学校として組織的に対応します。
つまり、
「無制限に詳しく伝える」でも「親しかった少数だけに限定する」でもなく、遺族への配慮と正確な情報共有を両立する
ことが重要です。
5つの選択肢を整理
| 選択肢 | ポイント | 判定 |
|---|---|---|
| ① 面接時間をその都度変える | 面接の枠組みを毎回変えることを一般原則とはしない | 誤り |
| ② 精神科紹介後も必要なら心理支援を継続 | 医療との連携を保ちながら継続可能 | 正答 |
| ③ 友人の母親を引き受ける | 不適切な多重関係のリスク | 誤り |
| ④ 受理を自分一人で決める | 組織的な検討が必要 | 誤り |
| ⑤ 自殺の事実を親しい少数だけに伝える | 遺族への配慮と正確な情報共有を踏まえた組織対応が必要 | 誤り |
旧記事から修正したポイント
旧記事では②について、精神科へ紹介した後の心理支援は、主治医が「心理的支援が必要」と判断することが求められる、という趣旨の説明がありました。
しかし、公認心理師法第42条第2項が定めているのは、主治の医師がいる場合にその指示を受けることです。厚生労働省・文部科学省の運用基準も、主治医との密接な連携を求めつつ、公認心理師の専門性・自立性への配慮を明記しています。
そのため今回の改訂では、
- 医療紹介後も心理支援は継続しうる
- 主治医がいる場合は法令に沿った連携・指示が必要
- 「主治医だけが心理支援継続の可否を決める」とは説明しない
という形に整理しました。
また、①の面接時間についても「50分が絶対」といった固定的説明を避け、支援の枠組みをその都度恣意的に変えることを原則としないという本質に絞っています。
試験対策ではここまで覚える
- 医療紹介 ≠ 心理支援の自動終了
- 主治医がいる場合は、公認心理師法第42条第2項に沿って連携・指示を受ける
- 心理支援では面接の枠組みを大切にする
- 不適切な多重関係を避ける
- 受理判断は組織的に行う
- 学校危機対応では、遺族への配慮と正確な情報共有を両立する
問1の中心:公認心理師は一人で完結せず、適切な枠組みと他職種・組織との連携の中で支援する
まとめ
第3回公認心理師試験・午前問1の正答は、②「投薬が必要となり、精神科に紹介したケースも、必要であれば心理的支援を継続する」です。
精神科への紹介後も、必要性があり、医療との役割分担・連携が適切であれば心理的支援は継続できます。
同時に、主治医がいる場合の法令上の連携、不適切な多重関係の回避、組織的な受理判断、学校危機対応での適切な情報共有までを関連づけて理解しておきましょう。



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