公認理師資格試験 過去問解説 問115 ペアレントトレーニング

公認理師資格試験 過去問解説 問115 ペアレントトレーニング

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

Advertisement

問115 発達障害のある子どもの親を対象としたペアレント・トレーニングについて、不適切なものを1つ選べ。

① 育児から生じるストレスによる悪循環を改善する。

② 対象は母親に限定していないが、参加者の多くは母親である。

③ 親と子どもが一緒に行うプレイセラピーを基本として発展してきた。

④ 子どもへの関わり方を学ぶことで、より良い親子関係を築こうとするものである。

⑤ 注意欠如多動症/注意欠如多動性障害AD/HDのある子どもの親に有効である。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ③親と子どもが一緒に行うプレイセラピーを基本として発展してきた

となります。

ペアレント・トレーニングとは

ペアレント・トレーニングは1960年代頃にアメリカで開発され発展してきたプログラムです。

ペアレント・トレーニングでは、子どもの行動変容を目的として、親がほめ方や指示などの具体的な養育スキルを獲得することを目指します。

出典:ペアレント・トレーニング実践ガイドブック|日本発達障害ネットワーク

ペアレント・トレーニングは、レクチャー形式のみではなく、ロールプレイや演習を行うことで体験的にスキルを獲得していくことが特徴的です。

具体的には

  • 「子どもの行動のアセスメント(良いところを見つけて褒める)」
  • 「子どもの行動を理解する(ABC分析)」
  • 「行動が起きる前の環境を調整する」
  • 「行動を達成しやすいような指示出し」
  • 「子どもの行動への対応」

といったプロセスで構成されるのが代表的です。

近年では厚生労働省によりさまざまな場所で実施されることが推奨され発展してきています。

また、子どもの行動変容を目的とせずに、保護者の認知を肯定的に修正することを目的としたペアレント・プログラムというものもあります。

選択肢の解説

①育児から生じるストレスによる悪循環を改善する

以下の記載を見てみましょう。

「この子が悪いわけではない、私の育て方の失敗ではない、でも私(親)がかかわり方を変えるところから始めてみよう」とモチベーションを持って、一つひとつの行動に注目することから始めることです

出典:ペアレント・トレーニング実践ガイドブック|日本発達障害ネットワーク

とあります。

ペアレント・トレーニングは子どもの行動変容を目的としていますが、その根幹には「子どもの行動を見て親がストレスや焦りを感じて叱責する」→「子どもの問題となる行動が増える」という悪循環を改善するという目的もあります。

親が余裕を持って子どもの行動をアセスメントして変容に導く専門家となることが重要といえます。

よって選択肢①「育児から生じるストレスによる悪循環を改善する」は適切な記述といえ

②対象は母親に限定していないが、参加者の多くは母親である

基本的なペアレント・トレーニングでは、保護者を対象として数名のグループで運営されます。

参加者は母親に限定されませんが、実際に参加される保護者は母親が多いという実情があります。

よって選択肢②「対象は母親に限定していないが、参加者の多くは母親である」は誤りとは言い難いため、適切な回答とはなりません。

③親と子どもが一緒に行うプレイセラピーを基本として発展してきた

基本的なペアレント・トレーニングでは、保護者を対象として数名のグループで運営されます。

参加者は母親に限定されませんが、実際に参加される保護者は母親が多いという実情があります。

よって選択肢②「対象は母親に限定していないが、参加者の多くは母親である」は誤りとは言い難いため、適切な回答とはなりません。

④子どもへの関わり方を学ぶことで、より良い親子関係を築こうとするものである

選択肢②で確認したように、ペアレント・トレーニングは子どもの行動変容を目的としていますが、そのためのアセスメントの仕方、声かけや指示の出し方、環境の調整の仕方など、養育者と子どもの関係性に関するスキルを身につけるトレーニングとなります。

よって選択肢④「子どもへの関わり方を学ぶことで、より良い親子関係を築こうとするものである」は適切な記述といえます。

⑤注意欠如多動症/注意欠如多動性障害AD/HDのある子どもの親に有効である

ペアレント・トレーニングの対象は、自閉スペクトラム症、ADHD、発達障害の疑いなど多岐にわたります。

しかし、元々の基礎となったUCLAで開発されたプログラムは、ADHDのある子どもの親子関係の改善や適応行動を増やすことを目的としていました。

よって、選択肢⑤「注意欠如多動症/注意欠如多動性障害AD/HDのある子どもの親に有効である」は適切な記述といえます。

まとめ

  • ペアレント・トレーニングは、子どもの行動変容を目的として、親がほめ方や指示などの具体的な養育スキルを獲得することを目的としたプログラムである。
  • 行動変容は主の目的とせず、保護者の認知を肯定的に修正することを目的としたペアレント・プログラムもある。
  • ペアレント・トレーニングでは、行動療法を基盤として(ABC分析)、子どもの問題行動のアセスメントの方法や声の掛け方、指示の出し方、環境調整の方法を学んでいく。