公認理師資格試験 過去問解説 問114 Neisserによる5つの自己知識

公認理師資格試験 過去問解説 問114 Neisserによる5つの自己知識

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

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問114 U. Neisser が仮定する5つの自己知識について、不適切なものを 1つ選べ。

① 公的自己

② 概念的自己

③ 対人的自己

④ 生態学的自己

⑤ 拡張的/想起的自己

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ① 公的自己

となります。

選択肢の解説

自己概念について

心理学では「自分の性格や能力、身体的な特徴などの自分自身に関する知識を客観的に把握して概念化しているもの」を自己概念 self concept と呼びます。

自己概念は、自己観察や、周囲の人々のその人に対する言動や態度、評価などを通して形成される。

出典:心理学辞典|有斐閣

自己概念を発展させていくには他者との関係性(相互作用)が重要であり、Mead ミード は、特に、このような自己概念を社会的自己 social me と呼びました。

その後、自己概念に関するさまざまな理論が発展していき、そのなかでNeisser ナイサーが出てきます。このナイサーは「Cognitive Psychology」という著書を出版するなど心理学の大家です。

Neisserによる5つの自己知識

では、ナイサーの自己概念に関する理論を見ていきましょう。

Neisserは、それぞれ異なるソースに由来する、5種類の自己知識を仮定することができるとしている。

出典:遠藤(1997). 乳幼児期における自己と他者、そして心-関係性、自他の理解、および心の理論の関連性を探る-, 心理学評論, 40, 57-77.

5つの自己知識は以下の通りとなります。

*自己知識は自己概念よりもさらに狭い範囲をさす用語として用いられているようです。

  • 生態学的自己 ecological self
  • 対人的自己 interpersonal self
  • 概念的自己 conceptual self
  • 拡張的自己 extended self /想起的自己 
  • 私的自己 private self

このうち、自分の行動によって周囲の環境と自分との関係性を知覚する「生態学的自己」と、他者との関わりのなかで知覚される自分を示す「対人的自己」は社会的自己とされます。

いずれも「客観的・物理的な環境や他者」との間での「自分の経験」のなかで獲得していく「知識」といえます。

残りの3つに関しては以下のようにされています。

その知識が記憶され(=想起的自己)、概念化されて(概念的自己)、我々はいつしか他者とは違う「自分」として感じるような(=私的自己)仮説的構成体を意識するようになっている。それが、自己概念(あるいは概念的自己)とよばれるところである。

出典:水間(2002). 自己形成過程に関する研究の外観と今後の課題:個人の主体性の問題. 京都大学大学院教育学研究科紀要, 48, 429-441.

「客観的・物理的な環境や他者」との間で獲得した「社会的自己(生態学的自己と対人的自己)」を記憶し(想起的自己)自分の経験としていくなかで、これが自分と感じる(私的自己)。この経験を繰り返すなかで自己概念が獲得される(概念的自己)ということを論じています。

以上のことから、Neisserの5つの自己知識に含まれていないのは、選択肢①「公的自己」となります。