公認心理師資格試験 過去問解説 問84 学習及び言語 学習の生物学的制約

公認心理師資格試験 過去問解説 問84 学習及び言語 学習の生物学的制約

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

Advertisement

 

【問84】学習の生物学的制約

問84 学習の生物的制約を示した実験の例として、最も適切なものを1つ選べ。

① E. L. Thorndike が行ったネコの試行錯誤学習の実験

② H. F. Harlow が行ったアカゲザルの学習セットの実験

③ J. Garcia らが行ったラットの味覚嫌悪学習の実験

④ M. E. P. Seligman らが行ったイヌの学習性無力感の実験

⑤ W. Köhler が行ったチンパンジーの洞察学習の実験

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ③

 

③ J. Garcia らが行ったラットの味覚嫌悪学習の実験

 

となります。

 

Advertisement

 

学習の生物学的制約

学習の生物学的制約 biological constraints on learning とは、簡単な言葉で説明すると、学習=刺激と反応の繰り返しによって必ず成立するという行動主義の考えへのアンチテーゼであり、生物の種類によって生得的に学習が成立しないことがある、あるいは、生得的に学習の成立しやすさに差があることを意味しています。

 

準備性 Readiness とほとんど同じ意味を示しています。

 

代表的なものは以下の通りです。

 

レスポンデント条件づけ

  • J. Garciaら ラットの味覚嫌悪学習の実験

 

オペラント条件づけ

  • Bolles SSDR species-specific defence reactions
  • Brown & Jenkins ハトがキーをつつく実験 自動反応形成

 

 

味覚嫌悪学習

味覚嫌悪学習とは、J. Garcia らが行ったラットによる実験が元になっているため、ガルシア効果 Garcia effect とも呼ばれています。

ある食べ物を摂取したあとで不快症状を訴えるとその食べ物の味を長く記憶にとどめ、以後同じ食べ物が呈示されても、その味を手がかりとしてその食べ物を嫌悪するようになる。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

こちらの味覚嫌悪学習は基本的にはレスポンデント条件づけで説明が可能です。

 

すなわち、未経験の味の食べ物(条件刺激:CS)を摂取した後で、吐き気をもよおすような刺激(無条件刺激:US)を与えて、実際に吐き気や腹痛が生じる(無条件反応:UR)ことによって、条件刺激と無条件刺激の連合を学習することになります。

 

一方で、レスポンデント条件づけと異なる以下の特徴を有しています。

  • 繰り返しの呈示ではなく、1度だけの呈示で強力な嫌悪学習が成立すること
  • 条件刺激と無条件刺激を呈示する時間が長くても学習が成立すること
  • 学習が成立しやすい刺激が決まっていること(たとえば、味覚刺激と消化器系の異常は学習が成立しやすいが、痛み刺激や視覚的な刺激と消化器系の異常は成立しにくいなど)
  • 一度学習が成立すると消去が生じにくい

 

なかでも、ガルシアらはラットを用いてさまざまな条件下で嫌悪学習についての実験を行ったことで、学習が成立しやすい刺激とそうでない刺激が存在していることに着目しています。

 

具体的にはラットにおける消化器系の異常についての学習が味覚では成立しやすいのに、聴覚や視覚では成立しにくいことを明らかにしました。

 

そして、このような連合の選択性という結果に対して、ラットが通常味覚を頼りにして食べ物を選択するのが自然であることから、その生物の生得的な要因が学習の成立に影響を与えていること、つまり学習の生物学的制約を見出したわけです。

 

よって、選択肢①「J. Garcia らが行ったラットの味覚嫌悪学習の実験」は正しい選択肢といえます。

 
 



 

選択肢の解説

勉強している男女のイラスト

① E. L. Thorndike が行ったネコの試行錯誤学習の実験

試行錯誤学習

ネコの試行錯誤学習とは、Thorndike ソーンダイクが行った実験です。

 

試行錯誤 trial and error

文字どおり、採りうる手段を問題場面に試みと不成功を繰り返すうちに解決を見出そうとするものである。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

ソーンダイクはこの実験をもとにして、オペラント条件づけの先駆けとなる効果の法則 low of effect を見出しています。

 

② H. F. Harlow が行ったアカゲザルの学習セットの実験

学習セットの実験

「学習セット」あるいは「学習の構え」とも呼ばれるHarlow ハーローがアカゲザルを対象に行った実験です。

 

こちらの実験では、異なる問題であっても近しい部分がある課題を呈示し続けることで、課題への取り組み方を学習し、問題解決の正答率が上がるということを明らかにしています。

 

④ M. E. P. Seligman らが行ったイヌの学習性無力感の実験

学習性無力感

学習性無力感は、Seligman セリグマンが行った有名な実験です。

 

避けられない嫌悪刺激が繰り返し呈示されることで、避けられる状況になったとしても避けるための行動を取らなくなるというものです。

 

このときの無力感は「うつ状態」に近しい状態とされています。

 

⑤ W. Köhler が行ったチンパンジーの洞察学習の実験

洞察学習 Köhler ケーラーがチンパンジーを対象に行った実験です。

 

こちらは試行錯誤学習とは真逆で、不成功や試みを続けなくても、頭の中だけで情報を統合して、一度の試行で問題解決まで結びつけることが可能というものです。

 
 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問84は、学習及び言語 学習の生物学的制約に関する問題でした❗️

 

キーワードは以下の通りです。人物名とセットで覚えておきましょう。

 

キーワードガルシア ー 味覚嫌悪学習
ソーンダイク ー 試行錯誤学習
ハーロー ー 学習セット
セリグマン ー 学習性無力感
ケーラー ー 洞察学習