公認心理師資格試験 過去問解説 問58 公認心理師を養成するための実習
- 2021.06.28
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問58】公認心理師を養成するための実習
問58 公認心理師を養成するための実習で学ぶ際に重視すべき事項として、適切なものを2つ選べ。
① 自らの訓練や経験の範囲を超えたクライエントも積極的に引き受けるようにする。
② 実習で実際のクライエントに援助を提供する場合には、スーパービジョンを受ける。
③ 実習で担当したクライエントに魅力を感じた場合には、それを認識して対処するように努める。
④ 業務に関する理解や書類作成の方法を学ぶことよりも、クライエントへの援助技法の習得に集中する。
⑤ クライエントとのラポール形成が重要であるため、多職種との連携や地域の援助資源の活用に注目することは控える。
② 実習で実際のクライエントに援助を提供する場合には、スーパービジョンを受ける
③ 実習で担当したクライエントに魅力を感じた場合には、それを認識して対処するように努める
となります。
公認心理師の実習について
公認心理師の養成課程では、所属する学内での実習に加えて、主要5分野(保健医療・教育・福祉・産業/労働・犯罪/司法)の施設のうちいずれかでの実習が必要です。*医療機関は必須とされています。
実習に関する概要は以下のとおりです。
心理実践実習 大学院 450時間以上
当然のことながら、学部生と大学院生では、実習で求められる部分が異なっており、学部生=見学、大学院生=実践が目的とされています。
【学部・大学院で共通する項目】
(ア)心理に関する支援を要する者等に関する以下の知識及び技能の習得
(1)コミュニケーション
(2)心理検査
(3)心理面接
(4)地域支援 等
【学部】
(イ)多職種連携及び地域連携
(ウ)公認心理師としての職業倫理及び法的義務への理解
【大学院】
(イ)心理に関する支援を要する者等の理解とニーズの把握及び支援計画の作成
(ウ)心理に関する支援を要する者へのチームアプローチ
(エ)多職種連携及び地域連携
(オ)公認心理師としての職業倫理及び法的義務への理解
出典:吉岡久美子(2019). 心理専門職養成に係る「心理実践実習」「心理実習」の現状と今後の展開, 福岡大学研究部論集. B, 社会科学編, 11, 39-42
選択肢の解説
① 自らの訓練や経験の範囲を超えたクライエントも積極的に引き受けるようにする
公認心理師が支援を行う際、自らの判断がもたらした結果に対して責任を負う必要がある。
出典:自己責任と自分の限界|公認心理師 必携テキスト
公認心理師として働く上では、専門職としての責任が発生するため、『専門的能力で支援できる範囲』や『自分の限界』を知っておく必要があります。
自分自身や所属する機関で、要支援者の支援が可能かどうか判断して、適切な対応をすることはインテーク面接でも重要ですね。
公認心理師資格試験 過去問解説 問38 心理状態の観察及び結果の分析「インテーク面接」
適切な対応の選択肢のひとつとしてリファーがあります。
来談者の抱えるテーマが、当初のカウンセラーの守備範囲や技量を超えている場合に、対応できる他のカウンセラーや専門家、および専門機関への対応を依頼すること
出典:よくわかるコミュニティ心理学|ミネルヴァ書房
以上のことから、選択肢①「自らの訓練や経験の範囲を超えたクライエントも積極的に引き受けるようにする」は、必ずしも全て間違っているわけではありませんが『公認心理師として自分の限界を把握する』という観点からは適切とは言い難いでしょう。
② 実習で実際のクライエントに援助を提供する場合には、スーパービジョンを受ける
スーパービジョンとは、セラピストが自分がもつ事例の理解と支援方針の立案、具体的な支援遂行のために受ける個別指導のことである。
(中略)
スーパービジョンなしに臨床活動を行うことは、一般的な理論と特定事例間の溝を無視しており、その結果、大きな危険を冒し、クライエントに不利益を与えることになるとしている。
出典:スーパービジョンの重要性と必要性|公認心理師 必携テキスト
スーパービジョンは上で引用したように、「事例の理解」「支援方針の立案」「具体的な支援遂行」などを目的として、熟達した指導者に個別指導を受けることを意味しています。
たとえ実習であっても、要支援者であるクライエントに支援を行う際には、スーパービジョンを受けることは必須といえます。
*実習以外の実務でもスーパービジョンは必須です。
そのため、選択肢②「実習で実際のクライエントに援助を提供する場合には、スーパービジョンを受ける」は正しい記述といえます。
③ 実習で担当したクライエントに魅力を感じた場合には、それを認識して対処するように努める
こちらの選択肢は「逆転移」「スーパービジョン」に関係していますね。
逆転移というのは、「クライエントに対して何か特別な想い入れを抱くこと」です。
「好き、嫌い」といった感情から、「助けたい」といった気持ちまで様々な感情が含まれますね。
逆転移=悪い、というわけではないですが、自分の逆転移に気づいて何らかの対処をしていくことが必要となります。
実は先程の選択肢で出てきたスーパービジョンには、第三者の視点から事実と支援者の主観とを区別して気づきを深めるような機能も求められています。
以上のことから、選択肢③「実習で担当したクライエントに魅力を感じた場合には、それを認識して対処するように努める」は、逆転移に気づいて対処することが求められているため、適切な記述といえますね。
④ 業務に関する理解や書類作成の方法を学ぶことよりも、クライエントへの援助技法の習得に集中する
こちらは公認心理師養成のための実習のなかでも「実践実習(大学院)」に関係する選択肢となりますね。
大学院における実践実習
(イ)心理に関する支援を要する者等の理解とニーズの把握及び支援計画の作成
(ウ)心理に関する支援を要する者へのチームアプローチ
(エ)多職種連携及び地域連携
(オ)公認心理師としての職業倫理及び法的義務への理解
上にあるような項目はいずれも並列的に重要なものです。
したがって、クライエントへの援助技法である心理面接の習得も重要ですが、他の様々な心理職の業務への理解や支援計画の作成含む書類作成などの実務を学んでいくことも同等に重要とされるでしょう。
そのため、選択肢④「業務に関する理解や書類作成の方法を学ぶことよりも、クライエントへの援助技法の習得に集中する」は、適切とは言い難いでしょう。
⑤ クライエントとのラポール形成が重要であるため、多職種との連携や地域の援助資源の活用に注目することは控える
こちらの選択肢は選択肢④と重なる部分がありますね。
クライエントとのラポール形成は(ア)の心理面接やコミュニケーションの事項とすると、多職種連携および地域連携はそのまま(エ)の項目に該当します。
どちらも同等に重要な視点といえますので、実習で習得すべき事項のどれかだけに偏ってしまうことは避けるべきでしょう。
よって選択肢⑤「クライエントとのラポール形成が重要であるため、多職種との連携や地域の援助資源の活用に注目することは控える」は不適切な記述といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問58は、公認心理師を養成するための実習に関する問題でした❗️
キーワードは以下の通りです。わからない部分は調べるようにしましょう。
キーワード・学部生=見学実習 大学院生=実践実習
・スーパービジョン
・リファー
・逆転移
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