公認心理師資格試験 過去問解説 問59 心理学に関する実験と実験結果の解釈
- 2021.06.29
- 資格試験
- 心理学統計, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!
公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!
【問59】心理学に関する実験と実験結果の解釈
問59 石けんの香りが机を清潔に保とうとする行動に影響を与えるかについて実験を行った。香りあり条件と香りなし条件を設けて、机の上の消しくずを掃除する程度を指標として検討した。その結果、全体的には香りあり条件と香りなし条件の差が検出されなかったが、尺度で測定された「きれい好き」得点が高い群は、全体として「きれい好き」得点が低い群よりもよく掃除をした。さらに、高い群では香りあり条件と香りなし条件の差は明瞭ではなかったが、低い群では、香りあり条件が香りなし条件よりも掃除をする傾向が顕著に観察された。
この実験の結果の理解として、正しいものを1つ選べ。① 交互作用はみられなかった。
② 実験要因の主効果は有意であった。
③ 「きれい好き」要因の主効果は有意ではなかった。
④ 実験要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い。
⑤ 「きれい好き」要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い。
⑤ 「きれい好き」要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い
となります。
香り(あり・なし)×きれい好き(高い・低い)という二要因被験者間分散分析の問題ですね。
従属変数は「掃除=机の上の消しくずを掃除する程度」となっています。
問題文からわかる情報で極端なグラフを作成すると以下のような感じになるでしょうか。
主効果:「きれい好き」要因・・・きれい好き高群が掃除行動が多い
交互作用:「きれい好き」低群では、香りあり条件が香りなし条件よりも掃除をする傾向
このグラフと問題文の説明からおおよそ上の結果がわかりますね💡
公認心理師資格試験 過去問解説 問8 心理学に関する実験「因果関係の推定」
選択肢の解説
① 交互作用はみられなかった
2要因以上の分散分析において、一つの因子の水準の違いによる観測値の期待値の間の差が、他の因子の水準の影響を受けないとき、交互作用がないといわれ、その差が他の因子の水準によって有意に異なるとき、二つの因子の間に交互作用がないといわれる。
出典:交互作用|心理学辞典|有斐閣
交互作用を簡単に説明すると、
となります。
この問題では、
要因A:香り(あり・なし)
要因B:きれい好き(高・低)
従属変数:掃除
と捉えると、要因A(香り ある・なし)は、要因B(きれい好き)の水準(高い・低い)によって、従属変数(掃除)への影響が有意に異なっていることが示されており、交互作用がある可能性が高いとわかります。
よって、選択肢①「交互作用はみられなかった」は、問題の回答として不適切といえます。
② 実験要因の主効果は有意であった
2要因以上の独立変数の影響を調べるために、分散分析を行った場合、それぞれの独立変数の従属変数への影響を示す値のことです。
主効果が統計的に有意であれば、独立変数が従属変数に対して影響を及ぼすということがいえます。
この問題での実験要因とは、実験で操作した要因を指すため、「香り」となります。
ここで「香り」の主効果がある場合は、「きれい好き」要因と独立して、香りがある(あるいは、ない)のときに掃除行動が有意に増加する(あるいは、減少する)ことが示されている必要があります。
問題文を読むと、“全体的には香りあり条件と香りなし条件の差が検出されなかった”とあるため、実験要因の主効果が認められなかったことがわかります。
よって、選択肢②「実験要因の主効果は有意であった」は不適切な記述といえます。
③ 「きれい好き」要因の主効果は有意ではなかった
こちらの選択肢は、選択肢②と考え方が同様になります。
“尺度で測定された「きれい好き」得点が高い群は、全体として「きれい好き」得点が低い群よりもよく掃除をした”とあり、「きれい好き」の高・低によって、従属変数である掃除行動の値に差があることがわかります。
よって、「きれい好き」要因には主効果が認められている可能性が高く、選択肢③「「きれい好き」要因の主効果は有意ではなかった」は不適切な記述となります。
④ 実験要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い
選択肢②で解説したように、実験要因である「香り」は主効果が認められていません。
よって、選択肢④「実験要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い」は不適当といえますね。
⑤ 「きれい好き」要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い
選択肢③で確認したように、「きれい好き」には主効果が認められています。
加えて、選択肢①で解説したように、きれい好き×香りの交互作用が認められています。
そのため、選択肢⑤「「きれい好き」要因の主効果と交互作用が有意であった可能性が高い」が最も適切といえるでしょう。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問59は、心理学に関する実験と実験結果の解釈に関する問題でした❗️
分散分析、主効果、交互作用の基礎的な知識を学習しておくことに加えて、問題文からざっくりと以下のような図を作成できると簡単に解答できるでしょう❗️
主効果:「きれい好き」要因・・・きれい好き高群が掃除行動が多い
交互作用:「きれい好き」低群では、香りあり条件が香りなし条件よりも掃除をする傾向
実験における独立変数と従属変数の関係について知りたい方はこちら💁♂️
-
前の記事
公認心理師資格試験 過去問解説 問58 公認心理師を養成するための実習 2021.06.28
-
次の記事
公認心理師資格試験 過去問解説 問60 事例問題:インテーク面接と初期対応 2021.06.30
コメントを書く