公認心理師資格試験 過去問解説 問26 構成的グループエンカウンター

公認心理師資格試験 過去問解説 問26 構成的グループエンカウンター

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問26】構成的グループエンカウンター

問26 構成的グループエンカウンターの特徴として、最も適切なものを1つ選べ。

① グループを運営するリーダーを決めずに実施する。

② 参加者の内面的・情動的な気づきを目標としていない。

③ 特定の課題設定などはなく、参加者は自由に振る舞える。

④ レディネスに応じて、学級や子どもの状態を考慮した体験を用意できる。

⑤ 1回の実施時間を長くとらなくてはいけないため、時間的な制約のある状況には向かない。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④

 

④ レディネスに応じて、学級や子どもの状態を考慮した体験を用意できる

となります。

 

グループエンカウンター

 

そもそもエンカウンター・グループとは❓

エンカウンター・グループとは、1960年〜1970年代にかけて発展した「集中的グループ経験(intensive group experience)」の流れを汲んでいる人間関係の能力の開発や心理的な成長を目的とした小さな規模のグループ体験のことをさします。

 

ロジャーズらは、1949年以来、カウンセラーの訓練に集中的グループ経験が有効であることに気づき、ワークショップでそれを用いていた。1960年ころからNTL(National Training Laboratories)のTグループの流れと交流が行われるようになり、やがてロジャーズはベーシック・エンカウンター・グループという名称を好んで使うようになった。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

エンカウンター・グループには以下のものが含まれています。

  • Tグループ レヴィン
  • 非構成(unstructured) ロジャーズ リーダーの指示は最小限でメンバーの主体性を尊重
  • 構成的(structured) リーダーがゲームを導入するなど積極的に指示を行う
  • グループ技法 ゲシュタルト療法心理劇交流分析など

 

日本で「エンカウンター・グループ」と言われると、基本的にはロジャーズ(Rogers, C. R)の理論と実践に基づいたグループであるベーシック・エンカウンター・グループ(basic encounter group)をさすことが多いです。

 

構成的グループ・エンカウンター(structured group encounter:SGE)は、リーダーが用意したプログラムに則って作業や議論をしていくなど、グループ体験がある程度構造化されていることが大きな特徴です。

  • グループの参加人数を大人数でも対応しやすい
  • 時間に合わせてプログラムを変更できる
  • プログラムの順番や時間配分をリーダーが参加者のレディネス(=準備状態)に合わせて提案することができる
  • 内容・時間ともにある程度の枠組みがあるため、侵襲的となりにくい
  • 訓練を受けた専門家でなくともリーダーをすることが可能

 

先に示したような特徴があるため、構成的エンカウンター・グループは教育場面で用いられることが多く、実践報告も多数あります。

 

学級における望ましい人間関係づくりに有効と思われる構成的グループ・エンカウンター(SGE)のねらいは、エンカウンターの具体的な体験である自己知覚、感情表現、自己主張、他者受容、信頼感、そして役割遂行をとおして、参加者間の人間関係をつくり、参加者の自己発見を促進し、人間関係を援助することである。

出典:佐々木・菅原(2009). 小学校における学校心理学的援助の方法と構成的グループエンカウンター(SGE)の有効性, 岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要, 8, 107-117.

 

最も基本的なグループ形態

ここでは心理臨床大事典に記載されているジェネラル・エンカウンター・グループと呼ばれる最も基本的なグループ形態について簡単にまとめます。

参加者

1グループは、10〜12名の参加者と、1〜2名のファシリテーター(facilitator)で構成されます。基本的には、参加者の制限はなく誰でも参加することが可能とされています。

 

時間と期間

1泊2日から5泊6日などの合宿形式を取ることが多く、1日3セッション、各セッションの時間は3時間とされています。

 

開催場所

原則として、宿泊施設などの日常生活から離れた場所で行われることが多いとされています。

 



 

選択肢を見ていきましょう

本問題はエンカウンターグループの中でも、構成的グループ・エンカウンターに関する問題でした。非構造と構造の差を理解していれば回答が可能な問題といえるでしょう。

 

① グループを運営するリーダーを決めずに実施する。

構成的なエンカウンター・グループでは、リーダーが決まっており、ゲームや作業などプログラムの導入などの役割を担います。

 

そのため、選択肢①「グループを運営するリーダーを決めずに実施する」は、構成的エンカウンター・グループの説明としては不適切であるため、正しくないといえます。

 

② 参加者の内面的・情動的な気づきを目標としていない。

基本的にエンカウンター・グループの目的は、参加者が自分の認識や感情について気づいていくことで、人間関係の能力の開発や心理的な成長を促すことといえます。

 

そのため、選択肢②「参加者の内面的・情動的な気づきを目標としていない」はエンカウンター・グループの説明として不適切であるといえます。

 

③ 特定の課題設定などはなく、参加者は自由に振る舞える。

構成的グループ・エンカウンターでは、課題設定がなされているため、選択肢③「特定の課題設定などはなく、参加者は自由に振る舞える」は不適切といえます。

 

④ レディネスに応じて、学級や子どもの状態を考慮した体験を用意できる。

「レディネス(readiness)」とは、簡単に説明すると、何かを学習する(獲得する)ための準備状態のことをいい、レディネスが十分に備わっていないと体験から学ぶことが難しくなります

 

先に説明した構成的グループ・エンカウンターの特徴にもありましたが、参加者の個々人のレディネスに合わせて必要な体験をプログラムやエクササイズという形で用意できることが、構成的グループ・エンカウンターが教育現場でも広く活用されている所以でしょう。

 

以上より、選択肢④「レディネスに応じて、学級や子どもの状態を考慮した体験を用意できる」は、問題の選択肢として正しいといえます。

 

⑤ 1回の実施時間を長くとらなくてはいけないため、時間的な制約のある状況には向かない。

構成的グループ・エンカウンターでは、実施時間の大きな取り決めはなく、制約に合わせてプログラムの時間を区切るなどの工夫が可能です。

 

「構成的」 という性質上、通常の教育・ 研修場面で取り入れることも比較的容易なために、 1日(あるいは半日 や数時間) 研修などのように短期集中的に実施されたり、学校の授業時間の中で継続的に実施されたりすることもしばしば見受けられる。

出典:水野邦夫(2009). 構成的グループエンカウンターにおけるグループの深まりの違い : グループメンバーの要因を中心とした検討, 日本教育心理学会総会発表論文集 51(0), 59.

というように、時間的な枠組みに関してもさまざまな形態があり、柔軟に実施されていることがわかります。

 

そのため、選択肢⑤「1回の実施時間を長くとらなくてはいけないため、時間的な制約のある状況には向かない」は不適切といえます。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問26は、構成的グループ・エンカウンターに関する問題でした。

 

この記事のまとめ・エンカウンター・グループ:「Tグループ レヴィン」「非構成(unstructured) ロジャーズ リーダーの指示は最小限でメンバーの主体性を尊重」「構成的(structured) リーダーがゲームを導入するなど積極的に指示を行う」「グループ技法 ゲシュタルト療法心理劇交流分析など」

・構成的グループ・エンカウンターの特徴:「グループの参加人数を大人数でも対応しやすい」「時間に合わせてプログラムを変更できる」

「プログラムの順番や時間配分をリーダーが参加者のレディネス(=準備状態)に合わせて提案することができる」「内容・時間ともにある程度の枠組みがあるため、侵襲的となりにくい」「訓練を受けた専門家でなくともリーダーをすることが可能」