公認心理師資格試験 過去問解説 問8 心理学に関する実験「因果関係の推定」

公認心理師資格試験 過去問解説 問8 心理学に関する実験「因果関係の推定」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

公認心理師試験の勉強方法はこちら💁‍♀️

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

 

Advertisement

 

【問8】心理学に関する実験:「因果関係の推定」

問8 心理学の実験において、「XがYに及ぼす影響」の因果的検討を行うとき、正しいものを1つ選べ。

① Xを剰余変数という。

② Yを独立変数という。

③ 研究者があらかじめ操作するのはYである。

④ Xは、値又はカテゴリーが2つ以上設定される。

⑤ 結果の分析には、XとYの相関を求めるのが一般的である。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

問8は「心理学実験」「因果関係」がキーワードの問題になります。基礎心理学のひとつですね。

 

正答は 

 

④ Xは、値又はカテゴリーが2つ以上設定される。

 

となります。

 

因果関係の推定

因果関係とは、一般的には、「2つ、もしくはそれ以上のものの間に、原因と結果という関係があること」を意味します。

 

簡単に言うと、「XというものによってYが起きますよ」と、原因(X)によって結果(Y)が必ず起こるといえるような関係が因果関係と呼ばれます。

 

混同されやすい相関関係は、「Xが増えたり減ったりすると、Yも一緒に増えたり減ったりしますよ」と、どちらが原因で結果なのかは不明瞭ですが「Xの動きにともなってYも何かしらの動きがある」という関係性をさします。

 

相関関係(相関係数)は因果関係を示さない

 

因果関係の推定は、心理学・臨床心理学などを含め、どの学問においても科学的なエビデンスを示すために非常に重要視されています。

 

心理療法のエビデンスに関してはこちらを💁‍♂️

 

以下に、因果関係を推定するための条件を記載します。

 

変数XがYの原因であることを示すための条件

XとYが共変動している

XがYに時間的に先行している

XとYの関係が擬似的なものではない(第三変数の影響ではない)

出典:高比良・安藤・坂本 (2006)より抜粋。Menard, 1991を邦訳して本文に引用されている内容から記載。

 

  • XとYが共に変動している(関連して動いている) = 相関関係(量的)・連関関係(質的)などがあること
  • XがYに時間的に先行している = Xの方がYより先の時点に起きていること
  • XとYの関係が擬似的なものではない(第三変数の影響ではない) = XとY以外の変数の影響が除外されていること

 

の3つの条件が全て満たされていて初めて「因果関係」について述べることができるようになります。

 

上で示した「因果関係」を示すための条件をカバーするような計画で作られているのが「実験」になります。

 

選択肢の解説

 

選択肢の解説に入る前に、「実験」に関する説明を見てみましょう。

実験の場合、基本的に、X(いわゆる独立変数)の値は実験者が操作する。そして、Xの設定された値(水準)ごとに実験参加者をランダムに割り当て、そのXを経験した結果として実験参加者に生じたY(いわゆる従属変数)の変動を測定していく。

出典:高比良・安藤・坂本 (2006). 縦断調査による因果関係の推定-インターネット使用と攻撃性の関連. パーソナリティ研究, 15(1), 87-102.

 

上のイラストが今回の解説の概略図になります。

 

選択肢④(正答)の解説

因果関係を推定するためには、Xは必ず複数(2つ以上)となります。

 

たとえば、実験A(変数X)がYに及ぼす効果を検討する場合を考えてみましょう。

 

このとき、Aを行うという変数のみで実験をすると、Yに何かしら変動があったとしても、その変動がA以外の剰余変数の影響かもしれませんし、何もしなくても時間経過のみでYが同じように変動する可能性も否定できません。

 

この時間経過のみでYが同じように変動する可能性を除外するためには、Aを行う水準とAを行わない水準を用意して、それぞれのYの変動を比較する必要があります。

 

そのため、最もシンプルな実験デザインであっても、変数Xは(実験Aあり、実験Aなし)というように2つ以上にわけられることになります。

 

選択肢①②③⑤(誤答)の解説

一般的に原因となる変数を独立変数、結果となる変数を従属変数、その他Yに影響を与えると考えられる変数を剰余変数と呼びます。

 

実験では研究者が事前にX(独立変数)を複数用意して操作し、そのXを経験した被験者のY(従属変数)の変動を測定することになります。

 

イラストにも記載した知識を理解できていれば、選択肢①②③については問題なく誤答だと判断が可能でしょう。

 

次に、選択肢⑤“結果の分析には、XとYの相関を求めるのが一般的である。”についてですが、こちらは因果関係の推定でも説明した通り、相関はあくまで「変数が共に変動する」関係性の強さを示した数値となります。

 

実験における因果関係を推定するための分析は、一般的にはX(独立変数)の各水準ごとのYの値の平均値の差の検定を行うことになります。

 

細かい分析手法は実験計画によって異なりますが、平均値の差の検定として代表的なものは以下の通りです。

  • 対応のないt検定
  • 対応のあるt検定
  • 被験者間分散分析(一要因・複数要因)
  • 被験者内分散分析(一要因・複数要因)

 

Advertisement

 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問8は心理学に関する実験「因果関係の推定」に関する知識が問われる問題でした。

 

因果関係に関するルールは押さえておく必要があります!

 

  • XとYが共に変動している(関連して動いている) = 相関関係(量的)・連関関係(質的)などがあること
  • XがYに時間的に先行している = Xの方がYより先の時点に起きていること
  • XとYの関係が擬似的なものではない(第三変数の影響ではない) = XとY以外の変数の影響が除外されていること

 

また、実験に関する変数の名称については以下のイラストを押さえておきましょう。