公認心理師資格試験 過去問解説 問9 認知心理学②「心理物理学」

公認心理師資格試験 過去問解説 問9 認知心理学②「心理物理学」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問9】認知心理学②:「心理物理学」

問9 100gの重さの知覚における弁別閾を測定したところ10gであった。このときに予測される400gの重さの知覚における弁別閾として、正しいものを1つ選べ。

① 2.5g

② 10g

③ 13.01g

④ 20g

⑤ 40g

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

問9は認知心理学領域の「心理物理学」に関する問題で、基礎心理学のひとつですね。

 

正答は 

 

⑤ 40g

 

となります。

 

キーワード弁別閾、心理物理学、フェヒナーの法則、ウェーバーの法則

 

弁別閾(discriminative threshold)

識別可能な刺激の値のこと。(省略)識別の手がかりになる物理的な特徴を弁別刺激とよび、識別を学ぶことを弁別学習と呼ぶ。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

特に「2つの刺激の違いがわかるかどうかの境界に位置する刺激」を弁別閾ということが多いです。

 

  • 相対的弁別(relative threshold):変化が識別される最小の差異
  • 絶対的弁別(absolute threshold):存在が識別される最小の差異

 

弁別閾は「ちょうど気づくことができる差」という意味で、丁度可知差異(just noticeable difference;jnd)とも呼ばれます。

 

心理物理学(Psychophysics)

続いて、この問9を回答するために必要な知識である「心理物理学」に関して簡単に解説していきます。

 

心理物理学(Psychophysics)とは、ドイツのライプチヒ大学の物理学の教授であったフェヒナー(Fechner, G. T)が、物理学的な事象である刺激と、心理学的事象である感覚との関係性を関数によって理論化しようとしたことに端を発する学問です。

 

心理物理学は、刺激の物理量と刺激に対応する感覚量との関係性を数学的に示そうという考えからフェヒナーが創始した。

 

代表的なものには以下のものが挙げられます。

  • ウェーバーの法則
  • フェヒナーの法則

 

ウェーバーの法則(Weber’s law)

ウェーバーの法則は、ドイツのライプチヒ大学の生理学・解剖学の教授であったウェーバー(Weber, E. H)が行った重さの弁別閾に関する実験から見出された法則です。

 

ウェーバーは弁別閾(ΔI)が、その時の刺激量(おもりの重さ:I)に比例して変化することを発見した。

たとえば、100gと比べて103gがようやく弁別できたとすると、おもりが200gの場合には、206gのおもりになってようやくその違いが弁別できるということである。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

式では以下のようにあらわされます。

ウェーバーの法則

 

重さの場合ですと、「重さの違いを識別できたおもりの重さ(弁別閾)」を「もともとのおもりの重さ」で割ったときの数値をウェーバー比といい、「もともとのおもりの重さ」が変わってもウェーバー比は一定の数値を取るということです。

 

フェヒナーの法則(Fechner’s law)

フェヒナーの法則には、前提としているフェヒナーの考え方を2つ押さえておく必要があります。

 

  • ウェーバーの法則がどのような刺激強度に対しても成立する
  • 丁度可知差異(jnd)を感覚の基本単位とする

 

では、フェヒナーの法則についての説明を見てみましょう。

フェヒナーは感覚を直接測定することはできないと考え、丁度可知差異(jnd)を感覚の基本単位として、間接的に感覚量を尺度化しようと試みたのである。つまり、強度の異なる二つの刺激がある場合に、その二つの強度差を、いくつかのjndを積算することによって等しくしうるかで間接的に尺度化しようとしたのである。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

つまりどういうこと??と思うかもしれません。

 

ウェーバーの法則は具体的な数値や単位から一定の比率を算出しましたが、フェヒナーの法則ではウェーバーの法則がどんな感覚量に対しても適用すると考え、単位が異なる感覚量に対しても一定の比率が算出できるように数学的な工夫を加えて増加率との関係性を理論化したものになります。

 

式では以下のようにあらわされます。

フェヒナーの法則

 

しかしながら現在では、ウェーバーの法則がどのような刺激に対しても成立するわけではなく、限定的なものであると考えられているため、フェヒナーの法則自体も限定された範囲内でのみしか成立しないとわかっています。

 

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選択肢の解説

それでは問題の解説に移りましょう。

 

この問題は先に説明したウェーバーの法則を用いて考えれば簡単に回答できますね。

 

「重さの弁別閾(10g)」➗「もとのおもりの重さ(100g)」= 0.1

 

とウェーバー比が「0.1」と算出できます。

 

このウェーバー比「0.1」は、一定の数値を取るはずなので以下の式が成り立つようになります。

 

「重さの弁別閾(?)」➗「もとのおもりの重さ(400g)」= 0.1

 

この式を解くには両辺に400をかければいいので、「重さの弁別閾」は40gとなります。

 

感覚的に回答しても正解しそうな問題ではありますが、このように理論的に回答することが可能です。

 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問9は「心理物理学」に関する知識が問われる問題でした。

 

  • 弁別閾
  • ウェーバーの法則
  • フェヒナーの法則