公認理師資格試験 過去問解説 問11 社会心理学 「集合的無知」

公認理師資格試験 過去問解説 問11 社会心理学 「集合的無知」

第4回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

【令和3年10月29日14時】第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)合格発表|講習・試験・登録|一般財団法人 日本心理研修センター 公認心理試験

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

Advertisement

【問11】集合的無知

問11 集団や社会の多くの成員が、自分自身は集団規範を受け入れていないにもかかわらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状況を指す概念として、最も適切なものを1つ選べ。
① 集団錯誤

② 集合的無知

③ 集団凝集性

④ 少数者の影響

⑤ 内集団バイアス

出典:第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

正答は ②

② 集合的無知

集合的無知

集合的無知 pluralistic ignorance とは、オールポート Allportらによって提唱された社会心理学の概念で、「多元的無知」とも呼ばれています。

定義に関しては以下の記載をみてみましょう。

多元的無知とは、「集団の多くの成員が、自らは集団規範を受け入れていないにもかかわらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状況」と定義されてきた(神,2009, p. 300)。

出典:岩谷・村本(2015). 多元的無知の先行因とその帰結:個人の認知。行動的側面の実験的検討, 社会心理学研究, 31(2), 101-111.

簡単に説明すると、ある集団に属する人々があるルールに関して、自分は信じていないにも関わらず、他のみんなは信じているとと疑わない状況ということになります。

考え方のズレがあるということではなく、集団に属している個人は、自分自身の考えよりも、他の人が信じているであろう考えに従った行動をする傾向があるという行動的な部分も示唆している概念となっています。

集合的無知には、自分の行動を選択する際に、他者の選好を推測して、他者の選好(と推測されるもの)に合わせた行動を取るというプロセスが関連しています。

自分以外の傍観者がいる時に行動が抑制されるという傍観者効果 bystabder effect にも関係している概念といえますね。(他の人が行動をしていない=他の人は行動をするべきでないと考えている、と考えてしまうため、自分も行動に移すことができない)

問題文の記述を見ると、「集団や社会の多くの成員が、自分自身は集団規範を受け入れていないにもかかわらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状況」とあり、集合的無知の定義と完全に合致するため、問題の正答となります。

Advertisement

選択肢の解説

勉強している男女のイラスト

① 集団錯誤

集団錯誤 group fallacy に関する定義をみてみましょう。

集団が、成員個々の心理を超えて、固有の心性をもつことを想定するのは幻想に過ぎないという見解。

出典:心理学辞典|有斐閣

集団錯誤とは、『「心」はあくまで個人がもつもので、集団が「心」をもつというのはおかしいのではないか』といったオールポート Allport による指摘を意味している概念です。

当時はイギリスの心理学者であるマクドゥーガル McDougallが、集団が集団全体として特有の心性を持つという「集団心」が提唱されていました。

それに対して、オールポートは性格理論「集団の心性とされるものは、あくまで個人がもつ特性でしかない」という批判をしたということになります。

③集団凝集性

集団凝集性 group cohesiveness とは、

メンバーを自発的に集団に留まらせる力の総体のこと。凝集性の高い集団は、メンバー間での相互理解・受容、役割分化、類似した意見・態度、相互魅力などにより特徴づけられる場合が多い。

出典:心理学辞典|有斐閣

とされています。

簡単な言葉で説明すると、集団内での「集団の一員であることへの動機づけ」や集団の「求心力」となる概念です。

選択肢には合いませんね。

④少数者の影響

少数者の影響 minority influence とは、モスコヴィッシュ Moscovici が提案した集団内の少数派が果たす役割に関するモデルです。

モスコヴィッシュによれば、少数派の意見は浸透していくことに時間がかかる一方で、表面上の同調ではなく、集団メンバーの真の態度変化を導くとのことです。

少数派の意見は集団の多数派に認知的な葛藤を引き起こさせ、意見の変化を呼ぶとされます。

⑤内集団バイアス

内集団バイアス in-group favoritism とは、

外集団成員よりも内集団成員に対して、より好意的な認知・感情・行動を示す傾向で、後者に対してより望ましい属性を認知する、より高く評価する、そして優遇するといった例があげられる。

出典:心理学辞典|有斐閣

別名、「内集団びいき」とも呼ばれます。こちらの名称の方が覚えやすいかもしれません。

Advertisement

まとめ

第4回公認心理師資格試験の問11は、集合的無知に関する問題でした!

  • 集合的(多元的)無知:自分は信じていないにも関わらず、他のみんなは信じていると疑わない状況
  • 集団錯誤:集団に「心性」はなく、あくまで個人の「心性」の集まりだということ
  • 集団凝集性:集団の一員であろうという動機づけの要因となるもの
  • 少数派の影響:少数派の意見は時間がかかるが多数派の意見に真の変化を生み出す可能性がある。
  • 内集団バイアス:集団外のメンバーよりも集団内のメンバーに対して好意的な評価をして、優遇する態度を示すこと