公認理師資格試験 過去問解説 問95 災害時の保健医療支援体制

公認理師資格試験 過去問解説 問95 災害時の保健医療支援体制

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問95】災害時の保健医療支援体制

問95 災害時の保健医療支援体制について、最も適切なものを1つ選べ。

① 災害派遣精神医療チームDPATは、都道府県医師会によって組織される。

② 災害拠点病院は、高度の医療を提供できる 400 床以上の病院の中から厚生労働省が指定する。

③ 災害派遣医療チームDMATは、各都道府県で実施する養成研修の修了者によって構成される。

④ 災害医療コーディネーターは、所定の研修を修了した者に対して厚生労働省が付与する資格である。

⑤ 広域災害救急医療情報システムEMISは、インターネット上で災害時の医療情報の共有を図るシステムである

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ⑤

 

⑤ 広域災害救急医療情報システムEMISは、インターネット上で災害時の医療情報の共有を図るシステムである

となります。

 

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広域災害救急医療情報システム

広域災害救急医療情報システム Emergency Medical Information Systemとは、

広域災害・救急医療情報システム(EMIS)は、災害拠点病院をはじめとした医療機関、医療関係団体、 消防機関、保健所、市町村等の間の情報ネットワーク化及び国、都道府県間との広域情報ネットワーク化を図り、災害時における被災地内、被災地外における医療機関の活動状況など、災害医療に関わる情報を収集・提供し被災地域での迅速かつ適切な医療・救護活動を支援することを目的としたシステム である
出典:広域災害・救急医療情報システム(EMIS) を活用した情報収集体制の強化について|第8回救急・災害医療提供体制 等の在り方に関する検討会

とあります。

 

EMISは災害時に、医療機関・消防機関・保健所・市町村間での情報ネットワーク、さらには国や都道府県などの広い範囲での情報ネットワークを確立することで、災害医療に関する情報を収集・提供して迅速に医療を提供するためのシステムということですね。

 

平成7年の阪神淡路大震災をきっかけとして、平成8年から運用が開始されています。

 

こちらの資料が参考になりますので、是非ご参照ください。

 



 

選択肢の解説

① 災害派遣精神医療チームDPATは、都道府県医師会によって組織される

災害派遣精神医療チーム(Disaster Psychiatric Assistance Team:DPAT)について厚生労働省の活動要領を確認すると、

自然災害や犯罪事件・航空機・列車事故等の集団災害が発生した場合、被災地域の精神保健医療機能が一時的に低下し、さらに災害ストレス等により新たに精神的問題が生じる等、精神保健医療への需要が拡大する。このような災害の場合には、被災地域の精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制との連携、各種関係機関等とのマネージメント、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援が必要である。
このような活動を行うために都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)によって組織される、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームがDPATである。

出典:災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領|厚生労働省

とあります。

 

活動要領に記載されている通り、“都道府県及び政令指定都市”によって組織されます。

 

そのため、選択肢①「災害派遣精神医療チームDPATは、都道府県医師会によって組織される」は正しくは「都道府県及び政令指定都市」となりますね。

 

② 災害拠点病院は、高度の医療を提供できる 400 床以上の病院の中から厚生労働省が指定する

災害拠点病院は、「災害時における初期救急医療体制の充実強化を図るための医療機関」として厚生労働省が指定した病院です。

 

指定される要件にかんしては災害拠点病院指定要件(令和元年7月17日一部改正)に記載されています。

 

要件の詳細は資料を参照いただければと思いますが、救命救急センター又は第二次救急医療機関であることという記載のみで、病床に関する規定は特にありません。

 

そのため、選択肢②「災害拠点病院は、高度の医療を提供できる 400 床以上の病院の中から厚生労働省が指定する」は誤った回答となります。

 

③ 災害派遣医療チームDMATは、各都道府県で実施する養成研修の修了者によって構成される

災害医療派遣医療チーム Disaster Medical Assistance Team:DMAT について、日本DMAT活動要領|厚生労働省 を確認してみましょう。

・DMATとは、大地震及び航空機・列車事故といった災害時に被災地に迅速に駆けつけ、救急治療を行うための専門的な訓練を受けた医療チームである。
・ 阪神淡路大震災では、多くの傷病者が発生し医療の需要が拡大する一方、病院も被災し、ライフラインの途絶、医療従事者の確保の困難などにより被災地域内で十分な医療も 受けられずに死亡した、いわゆる「避けられた災害死」が大きな問題として取り上げられた。
・ 自然災害に限らず航空機・列車事故といった大規模な集団災害において、一度に多くの 傷病者が発生し医療の需要が急激に拡大すると、被災都道府県だけでは対応が困難な場合も想定される。
・このような災害に対して、専門的な訓練を受けた医療チームを可及的速やかに被災地 域に送り込み、被災地域での緊急治療や病院支援を行いつつ、被災地域で発生した多く の傷病者を被災地域外に搬送できれば、死亡や後遺症の減少が期待できる。
・このような災害医療活動には、通常時の外傷の基本的な診療に加え、災害医療のマネージメントに関する知見が必要である。
・この活動を担うべく、厚生労働省の認めた専門的な研修・訓練を受けた災害派遣医療チームが日本DMAT(以下「DMAT」という。)である。

出典:日本DMAT活動要領|厚生労働省

 

活動要領によると、“厚生労働省の認めた専門的な研修・訓練を受けた災害派遣医療 チーム”とあります。

 

そのため、選択肢③「災害派遣医療チームDMATは、各都道府県で実施する養成研修の修了者によって構成される」は正しくは「厚生労働省で実施された専門的な研修・訓練を受けた」となるため、今回の問題の解答として不適切となりますね。

 

④ 災害医療コーディネーターは、所定の研修を修了した者に対して厚生労働省が付与する資格である

災害医療コーディネーターについて、災害医療コーディネーター活動要領の概要|厚生労働省を確認してみましょう。

○ 災害時に、都道府県並びに保健所及び市町村が保健医療活動の総合調整等を適切かつ円滑に行えるよう、保健医療調整本部並びに保健所及び 市町村における保健医療活動の調整等を担う本部において、被災地の保健医療ニーズの把握、保健医療活動チームの派遣調整等に係る助言及び支 援を行うことを目的として、都道府県により任命された者である。
○ 平常時から当該都道府県における医療提供体制に精通しており、専門的な研修を受け、災害対応を担う関係機関等と連携を構築している者が望ましい。
出典:災害医療コーディネーター活動要領の概要|厚生労働省

 

災害医療コーディネーターは、都道府県に配置される「都道府県災害医療コーディネーター」と、保健所や市町村での保険医療活動の調整などを担う本部に配置される「地域災害医療コーディネーター」とに分けられています。

 

災害医療コーディネーターは、都道府県により任命されます。

 

よって、選択肢④「災害医療コーディネーターは、所定の研修を修了した者に対して厚生労働省が付与する資格である」は、正しくは「都道府県が任命する」となるため、不適切な解答となります。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問95は、災害時の保健医療支援体制について問題でした❗️

 

本問では災害医療に関連する組織などの知識が広く問われた問題でした。

  • 広域災害救急医療情報システム Emergency Medical Information System
  • 災害拠点病院
  • 災害派遣精神医療チーム(Disaster Psychiatric Assistance Team:DPAT)
  • 災害医療派遣医療チーム Disaster Medical Assistance Team:DMAT
  • 災害医療コーディネーター

これらの用語に関しては、記事内で紹介した厚生労働省の資料を参照して調べておくのが良いでしょう。