公認心理師資格試験 過去問解説 問66 事例問題:ごまかし勉強

公認心理師資格試験 過去問解説 問66 事例問題:ごまかし勉強

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問66】事例問題:ごまかし勉強

問66 13 歳の男子 A、中学1年生。A の学校でのテストの成績は中程度よりもやや上に位置している。試験に対しては出題される範囲をあらかじめ学習し、試験に臨む姿もよくみられる。しかし、その試験を乗り切ることだけを考え、試験が終わると全てを忘れてしまう質の低い学習をしているように見受けられる。勉強に対しても、ただ苦痛で面白くないと述べる場面が目につき、学習した内容が知識として定着していない様子も観察される。
現在の A の状況の説明として、最も適切なものを1つ選べ。

① リテラシーが不足している。

② メタ記憶が十分に発達していない。

③ 深化学習や発展学習が不足している。

④ 機械的暗記や反復練習が不足している。

⑤ 具体的操作期から形式的操作期へ移行できていない。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ③

 

③ 深化学習や発展学習が不足している

となります。

 

今回の事例問題は、藤澤(2002)のごまかし勉強に関する問題ですね❗️

 

ごまかし勉強

ごまかし勉強を簡単に説明すると、学習において点検される箇所(つまり、テストなどの学業成績)のみ基準を合格するように勉強して、それ以外の部分で手を抜くことといえます。

 

  • 学習範囲の限定
  • 代用主義
  • 機械的暗記志向
  • 単純反復志向
  • 過程の軽視傾向

などがごまかし勉強の特徴といえます。

 

自ら学習を開始して発展させていくような自律的学習とは正反対ですね。

 

 

ごまかし勉強では、定期テストなどで一時的に良い成績を収めることがありますが、範囲の広いテストでは良い成績を収められなかったり、学習した内容を忘れてしまうことがあります。

 



選択肢の解説

勉強している男女のイラスト

事例について簡単にまとめましょう。

中学校1年生 13歳 男子 成績は中の上

その試験を乗り切ることだけを考え試験が終わると全てを忘れてしまう質の低い学習をしているように見受けられる。勉強に対しても、ただ苦痛で面白くないと述べる場面が目につき、学習した内容が知識として定着していない様子も観察される。

 

ここでAは試験を乗り切るためだけに学習を行い、ある程度の結果を示すことはできていますが、知識が定着せずに忘れてしまうと記述されており、典型的な「ごまかし勉強」のケースと考えられますね。

 

① リテラシーが不足している

リテラシー literacy とは、知識を適切に理解・解釈して活用できる能力のことを意味します。

 

特定の分野に対して〇〇リテラシーという言い方をします。

 

学習到達度評価では、「数学的リテラシー 」「科学的リテラシー 」などが調査される分野として挙げられています。

 

今回の事例問題では、学習した知識の活用方法というよりは、学習の仕方・向き合い方を問うているため、

こちらの選択肢は該当しないでしょう。

 

② メタ記憶が十分に発達していない

メタ記憶 metamemory とは❓

メタ認知は、自己の認知活動(思考,知覚,記憶など)や自己の行動を客観的に認知することを意味し、メタ記憶は、そのうちの記憶に関する認知活動や行動(記憶過程など)に対する客観的な認知を指す。

出典:上原泉(2011). メタ記憶の発達に関する考察 ―概観と展望―, 東京外国語大学論集, 82, 331-350.

 

  • 自分の記憶方法に関する知識と判断
  • 自分の記憶能力に関する判断

などが含まれます。

 

このメタ記憶が発達していると、自分の記憶方法や能力に関しての判断能力が高くなるため、

忘れっぽいのであればメモを活用するなど自分に合わせた対策を取ることができるとされています。

 

こちらも選択肢①と同様に、学習の仕方・向き合い方には当てはまらないため、正答とはいえません。

 

③ 深化学習や発展学習が不足している

ごまかし勉強では、深化学習や発展学習が行われません

深化学習:新しい概念の意味、既知の概念との関係性などを学習すること

発展学習:知識の活用の仕方、新たに出てきた問題を解決するために積極的に学習に取り組むこと

 

本問題の事例Aは、ごまかし勉強をしている状態であるため、上で記述したような深化学習や発展学習が不足している状態であると考えられます。

 

よって、選択肢③「深化学習や発展学習が不足している」が問題の回答として適切といえます。

 

④ 機械的暗記や反復練習が不足している

ごまかし勉強の最も大きな特徴として、機械的暗記反復練習が挙げられます。

 

機械的暗記や反復練習は、自律的学習においても知識を定着させるためには必要な要素ではありますが、

それのみでは深化・発展へとは繋がっていかないというわけですね。

 

Aはごまかし勉強をしているので、事例に記述されてはいませんが、おそらく機械的暗記と反復練習を繰り返しているのだと思われます。

 

よって選択肢④「機械的暗記や反復練習が不足している」は不適切といえます。

 

⑤ 具体的操作期から形式的操作期へ移行できていない

「具体的操作期」と「形式的操作期」はいずれもピアジェ Piaget の発達理論 からの用語となります。

 

こちらの記事では詳しい記述は避けますが、発達段階と関係ある概念に関して載せておきます。

 

ピアジェの発達段階

  • 感覚運動期 sensorimotor stage:0-2歳 対象の永続性 object permanence
  • 前操作期 pre-operational stage:2-7歳 自己中心性 egocentrism、中心化 centration
  • 具体的操作期 concrete operational stage:7-11歳 論理的思考、保存 conservation
  • 形式的操作期 formal operational stage:11歳から 抽象的思考
自己中心性に関してはこちらにも記載があります❗️

 

 

本問題ではAは13歳であることから、形式的操作期に位置づけられますね。

 

ピアジェの発達段階では、勉強への姿勢とは直接的な関係はありませんので、本問題の選択肢としては不適切となります。



まとめ

第3回公認心理師資格試験の問66は、事例問題:ごまかし勉強に関する問題でした❗️

 

ごまかし勉強 = 学習において点検される箇所(つまり、テストなどの学業成績)のみ基準を合格するように勉強して、それ以外の部分で手を抜くこと

 

ごまかし勉強の特徴は以下の通りです。

  • 学習範囲の限定
  • 代用主義
  • 機械的暗記志向
  • 単純反復志向
  • 過程の軽視傾向

 

他にも学習方略やメタ記憶など、学習に関係するキーワードは押さえておきましょう❗️