公認心理師資格試験 過去問解説 問37 Vygotskyの発達理論

公認心理師資格試験 過去問解説 問37 Vygotskyの発達理論

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問37】発達「Vygotskyの発達理論」

問37 L.S.Vygotskyの発達理論に含まれる概念として、不適切なものを1つ選べ。

① 内言

② 自己中心性

③ 精神内機能

④ 高次精神機能

⑤ 発達の最近接領域

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ②

 

② 自己中心性

となります。

 

この問題では、

 

memo

Piagetの発達理論」と「Vygotskyの発達理論

の2つの知識が必要となりますね❗️

自己中心性

 

自己中心性(egocentrism)とは❓

自己中心性は、Piaget(ピアジェ)が子どもの認知的な制約を示すために指摘した概念です。

 

自己中心的といわれると、「わがまま」などと捉えがちですが、ピアジェの理論では意味合いが異なります。

 

ピアジェのいう自己中心性は、

幼児が自分自身を他者の立場においたり、他者の視点に立ったりすることができないという、認知上の限界性を示す用語である。

出典:心理学辞典|有斐閣

とされます。

 

ピアジェは幼児が会話の際に自分の考えを相手の伝えようとする意図を感じていないのでは?といった部分に着目して、自己中心性の概念を提唱しました。

 

このように、自己中心性はピアジェの発達理論の概念であるため、選択肢②が問題の正答となります。

 



 

選択肢の解説

残りの選択肢は全てVygotsky(ヴィゴツキー)の発達理論に関連するものとなります。

 

内言と外言

内言とは音声を伴わない自分自身のための内的言語であり、主として思考の道具としての機能を果たす。一方、外言とは他人に向かって用いられる音声言語であり、主として伝達の機能を果たす。

ヴィゴツキーは通常会話などで用いる外に向けた言葉を外言(社会的な言語)、考えるために自分の心の中で用いられる言葉を内言としました。

 

ヴィゴツキーによれば、子どもが最初に用いるのは外言だけであるが、発達とともにそれが外言と内言に分化していく。その移行期である幼児期に出現するのが、音声を伴う内言としての自己中心語である、この自己中心語の音声面が消えていくにつれ、それが内言として成立することになる。

出典:心理学辞典|有斐閣

自己中心語とは、子どもがよく言う自分の行動について述べるなど周囲に向けず自分で完結するような独り言のことをさすピアジェの指摘した概念です。

 

ヴィゴツキーは、外言が内言に変化していく過程で、この「自己中心語」が現れると考えました。

 

高次精神機能

ヴィゴツキーは精神発達全般において次のような仮説を立てています。

人間の高次精神活動はすべて、「最初は、共同活動の形式として発生し、そのあとでのみ、…自分自身の精神活動の形式に移される」という仮説、高次精神機能の、「精神間的機能から、精神内的機能へ」の移行という仮説である。

出典:越野和之(1991). 子どもの言語的伝達の発達についての実験的研究, 教育科学研究, 10, 65-74.

 

高次精神機能とは「論理的な思考や推論」、「注意」などを意味しています。

 

ヴィゴツキーは、この高次精神活動は「言語」という道具を媒介にして社会との関わりの中で形成していくものであると述べています。

 

内言と外言の例でいうのであれば、はじめは社会との関わり、すなわち家族との会話という社会的な状況を通じて行われていた精神間機能(=外言)が、発達していくなかで徐々に自分への問いかけや指示などの思考という精神内機能(=内言)へと変わっていくということを示しています。

 

発達の最近接領域

 

発達の最近接領域(zone of proximal development)とは❓

ヴィゴツキーは、子どもの知的発達の水準を二つに分けて考えることを提唱した。一つは、自力で問題解決できる現下の発達水準であり、もう一つは、他者からの援助や協同によって達成が可能になる水準である。彼は、この二つの水準のずれの範囲を発達の最近接領域とよんだ。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

用語を見てもイマイチピンとこないかもしれませんが、「発達の最近接領域」次に続く発達の領域と考えると少しわかりやすいでしょう。

 

さらに理解を深めるためには以下の文献にある記載がわかりやすいです。

例えばバークL.E.&ウィンスラーA.は、ZPDについて「ヴィゴツキーが示唆していることは、評価すべきなのは、子どもたちが1人で行なえたとか、あるいはすでに知っていることではなく、むしろ他者の助けによってできるようになるとか、学習の可能性をもっているかなのです」といい、「最近接発達領域は、学習や認知発達が引き起こされる可能性の高い領域です」〔2001, p.23〕と述べている。
出典:堀村志をり(2013). 最近接発達領域は「可能性の領域」か―― 発達の力動の観点からの考察 ――, 東京大学大学院教育学研究科 基礎教育学研究室 研究室紀要, 39, 43-52.|バークL. E. & ウィンスラーA.『ヴィゴツキーの新・幼児教育法―幼児の足場づくり』田島信元・田島啓子・玉置哲淳編訳、北王路書房、2001.を引用したもの

 

つまり最近接領域で言いたいことは、発達の評価を行う際に「自分ひとりでできること」のみに着目するのではなく、「誰かの力を借りればできること」=「次に発達が生じる可能性が高い部分」に着目するのが重要だということです。

 

発達の最近接領域は、特に発達評価教授=学習過程において適用されます。

 

発達の最近接領域を知ると、VinelandⅡ適応行動尺度によるアセスメントの有用性を再認識できますね。

 

VinelandⅡ適応行動尺度の概要についてはこちら💁🏻‍♂️

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問37は、ヴィゴツキー(Vygotsky)の発達理論に関する問題でした❗️

 

この問題に含まれているヴィゴツキーの発達理論のポイントは、

思考や推論などの高次精神機能の発達は、言葉を道具として媒介するなかで、最初は外的な環境(社会)との相互作用によって育まれ、その後子ども自身に内在されていく

「自分ひとりでできること」のみでなく、「誰かの力を借りればできること」、つまり「次に発達が生じる可能性が高い部分」に着目すること

となります。

 

ヴィゴツキーは他にも多くの理論や観点を発表しているので、特に児童領域に関心のある方はピアジェの発達理論とともにおさえてくといいでしょう。