【心理検査】若手臨床家が知っているといい半構造化面接法の心理検査(ADI-R、VinelandⅡ)の概要を紹介!
- 2021.01.13
- 臨床心理士 / 公認心理師
- 心理検査, 若手心理職・大学院生
この記事では、若手の臨床家向けに少しアドバンスな内容ということで以下の検査を紹介します!
- 自閉症診断面接改訂版
- Vineland-II適応行動尺度
こちらの2つの検査、恥ずかしながらYamashunは臨床現場に出てはじめてその存在を知り、実施もしました。
多くの機関で日常的に行われている検査というわけではない部分もありますが、非常に有用ですので、特に発達障害・知的障害に興味関心がある方は身につけておくべきだと思います。
同じく発達障害を対象とした症状評価(PARS-TR、CAADID)については、以下の記事で解説しています!
自閉症診断面接改訂版(Autism Diagnostic Interview-Revised)
自閉症診断面接改訂版(以下、ADI-R)は、その名の通り、自閉症スペクトラム障害の診断に有益な情報を得ることを目的として開発された半構造化面接による心理検査です。
自閉スペクトラム障害の疑いのある児童または成人の保護者に対して、一般的に自閉スペクトラム障害の行動的な問題が一番明確にあらわれるとされる「生育暦上の過去の時点」を想い出してもらいながら93項目の質問を行います。
概要は以下の通りです。
適用年齢 | 精神年齢2歳以上〜成人 |
検査目的 | 自閉症スペクトラム障害の疑い |
被検査者 | 保護者 |
実施時間 | 90分〜150分 |
検査実施時のポイントとしては、
①聴取したひとつの具体的な事項(エピソード)は、ひとつの項目評価にしか用いることができない。
②0点=定型発達、1点=定型発達と自閉症スペクトラム障害の間、2点=自閉症スペクトラム障害、3点以上=症状の程度が強い
という点です。
検査結果では、「診断アルゴリズム」に沿って、DSM-Ⅳにおける自閉スペクトラム障害の診断基準にも含まれている領域を評価していきます。各領域ごとにカットオフ値が設定されています。
- A 相互的対人関係の質的異常
- B 意思伝達の質的異常
- C 限定的・反復的・常同的行動様式
- D 3歳以前の発症
結果の解釈は、
A、B、C、Dの4つの領域それぞれの得点がいずれもカットオフ値を超えるならば、「診断アルゴリズムから得られた結果(アルゴリズム診断と呼ぶ)=自閉症スペクトラム障害である可能性が高い」という結果が導かれる。
出典:発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン
とされています。
ADI-R実施には、自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの側面に関する本質的な理解が必要!!
この検査の重要なところは、自閉症スペクトラム障害の発達的な特徴について詳細な知識が必要なことです。
以下に項目評価の例を挙げます。
いかがでしょうか?
今例にあげた2項目を見て、「へぇ」となった方はぜひADI-Rを身につけることをオススメします。
自閉症スペクトラム障害のコミュニケーションの質的な側面について、本質的な理解が得られるきっかけになるでしょう。
以下は参考サイトのリンクです。
ADI-R ポイント
ADI-Rは、自閉症スペクトラム障害の診断に必要な情報を得ることを目的とした半構造化面接の心理検査である。
ADI-Rでは、保護者を対象として、過去を想い出してもらい評価する。
ADI-R実施には、自閉症スペクトラム障害の本質的な理解(特にコミュニケーションの側面)が必要であり、そのため実施するためには臨床研修を受ける必要がある。
日本版Vineland-II適応行動尺度(Vineland Adaptive Behavior Scales Second Edition)
日本版Vineland-II(ヴァインランド)適応行動尺度は、自閉症スペクトラム障害をはじめとする発達障害や知的障害を対象として、適応機能を測定するための半構造化面接による心理検査です。
令和2年度の診療報酬改定により、保険点数が取れるようになりました。
医療機関で働く公認心理師に必要な診療報酬制度(保険点数)の知識
概要は以下の通りです。
適応行動の発達水準を幅広くとらえ、支援計画作成に役立つ検査です。年齢群別の相対的評価を行うとともに、個人内差を把握できます。適用範囲が広く(0歳~92歳)福祉・医療・教育・研究といった幅広い分野で利用可能です。
適用年齢 | 0歳〜92歳 |
検査目的 | 適応行動の発達水準を評価 |
被検査者 | 保護者・評価対象をよく知っている者 |
実施時間 | 20分~〜60分 |
VinelandⅡでは、適応行動を以下のように説明しています。
適応行動を個人的・社会的充足を満たすのに必要な日常生活における行動と定義づけている
①適応行動は、それぞれの年齢で重要となるものが異なる
②適応行動の評価は、個人が関わる環境の期待や基準によって変化する
③適応行動は、環境の影響および支援効果などによって変容する
④適応行動の評価は、行動そのものを評価するものであり、個人の可能性を評価しない出典:発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン
つまり、適応行動とは、対象者の年齢において期待される行動の水準を意味します。
適応行動にはコミュニケーションや身辺自立を含めた日常生活での必須スキル、運動能力などが含まれています。
1・・・その行動が時々見られたり、または促しによって起こる場合
0・・・行動がめったに見られなく不十分である、または見られない
結果は、平均が100、標準偏差が15の領域標準得点で示されます。また、下位領域は平均が15、標準偏差が3の得点で示され、ウェクスラー式の知能検査と似ておりスコアをパッと見るだけで感覚的に捉えることが可能です。
実際の臨床場面では、以下に知能検査で知的に高くともこの適応機能が低く、うまくいっていないクライエントさんが多く存在します。
適応行動の視点を身につけることは、介入ターゲットとなる行動を特定することにも繋がるため、実臨床に役立つ心理検査ともいえるでしょう。
Vineland-Ⅱ ポイント
Vineland-Ⅱは、発達障害や知的障害を対象として適応機能を測定することを目的とした実臨床に役立つ半構造化面接の心理検査である。
知能検査で測定できない現実的な行動を測定可能なため、介入の方向性を定めやすい。
まとめ
この記事では、若手臨床家が知っているといい半構造化面接法の心理検査と題して、検査使用に臨床研修やトレーニングが特に推奨されているADI-RとVineland-Ⅱを紹介しました。
どちらの検査も、対象とする特性や行動に対して本質的な理解が必要であり、実際の臨床場面でも有用な検査といえます。
この記事のまとめADI-Rは、自閉症スペクトラム障害の診断に必要な情報を得ることを目的とした半構造化面接の心理検査である。
ADI-Rでは、保護者を対象として、過去を想い出してもらい評価する。
ADI-R実施には、自閉症スペクトラム障害の本質的な理解(特にコミュニケーションの側面)が必要であり、そのため実施するためには臨床研修を受ける必要がある。
Vineland-Ⅱは、発達障害や知的障害を対象として適応機能を測定することを目的とした実臨床に役立つ半構造化面接の心理検査である。
知能検査で測定できない現実的な行動を測定可能なため、介入の方向性を定めやすい。
また、今回の記事作成にあたり参考にした書籍は、発達障害児・者のアセスメントに必要な検査がメジャーどころからマイナーなものまで網羅的に説明されているオススメ書籍です。
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