大学院生のときに身につけておくべき症状評価尺度 その②(PARS-TR、CAADID、CDR)

大学院生のときに身につけておくべき症状評価尺度 その②(PARS-TR、CAADID、CDR)

今回の記事では、「大学院生の時に身につけておくべき症状評価尺度について」第2段として、心理職として働き始めてから身につけた心理検査のなかで、特に有用な症状評価尺度に関して紹介していきます。
まだ大学院在学中の方や、臨床家として働いているけど「この検査は知らなかった」という方は是非ご一読ください。

 

今回紹介する症状評価尺度は以下の通りです。( )の部分は第1段で既に紹介していますので、そちらの記事をご参照ください!

 

(ハミルトンうつ病症状評価尺度)
(陽性・陰性症状評価尺度)
親面接式自閉スペクトラム症評定尺度
CAADID™ 日本語版
臨床認知症尺度

 

この検査の多くが診療報酬に含まれています。診療報酬について詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。

令和2年度(2020)診療報酬点数表(臨床心理・神経心理検査)

医療機関で働く公認心理師に必要な診療報酬制度(保険点数)の知識

 

この記事のまとめ

  • この記事では親面接式自閉スペクトラム症評定尺度(PARS-TR)、CAADID日本語版、臨床認知症尺度(CDR)の概要について紹介します。
  • 自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、認知症の症状を詳しく知りたい方は是非今回紹介する検査を身につけてください。
  • 症状評価を適切に実施できることは、①クライエントに対する適切な介入方法の選択、②医療機関へのリファーを行うための知識を与えてくれます。

 
 

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親面接式自閉スペクトラム症評定尺度(Parent-interview ASD Rating Scale)

勉強している男女のイラスト

親面接式自閉スペクトラム症評定尺度(以下、PARS)は、「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)」の症状評価を行う全57項目からなる半構造化面接の心理検査です。改訂版なのでTRがついています。

 

概要は以下の通りです。

自閉スペクトラム症(ASD)の発達・行動症状について母親(母親から情報が得がたい場合は他の主養育者)に面接し、その存否と程度を評定する57項目からなる検査です。

PARS-TR 得点から、対象児者の適応困難の背景に自閉スペクトラム症の特性が存在している可能性を把握することができます。(判定結果は、医学的診断に代わるものではありません。ASDの確定診断は、専門医によってなされる必要があります)

幼児期および現在の行動特徴を自閉スペクトラム症の発達・行動症状と症状に影響する環境要因の観点から把握します。基本的な困難性に加えて支援ニーズと支援の手がかりが把握できます。

半構造化面接により発達・行動症状を把握することを通じて養育者の対象児者に対する理解を深めることができます。

出典:PARS-TR|親面接式自閉スペクトラム症テキスト改訂版|心理検査専門所|千葉テストセンター

 

全項目版が57項目で実施時間は90分程度、短縮版は23項目で実施時間が30〜45分程度です。令和元年度の診療報酬改定により、450点取ることができるようになりました。

 

実施方法のポイント

  • 対象者の年齢によって実施する項目数が異なるということ
  • 項目34までは同じ質問項目を幼児期ピーク現在(幼児期/児童期/思春期・成人期)とわけて評価すること
  • 半構造化面接であること

 

PARS-TRの検査用冊子に質問の仕方や評価のための具体例が詳細に記載されています。評価の基準は概ね以下の通りと考えていいです。

0…症状該当なし

1…発達・行動の症状はあるが軽い。あるいは、機能障害がない。

2…発達・行動の症状が明らかに存在し、機能障害もある。

 

合計点数の評価は以下のようになっています。

ASDが強く示唆される ASDの可能性は低い
幼児期ピーク得点 9点以上 8点以下
幼児期ピーク得点(短縮版) 5点以上 4点以下
児童期得点 13点以上 12点以下
児童期得点(短縮版) 7点以上 6点以下
思春期・成人期得点 20点以上 19点以下
思春期・成人期得点(短縮版) 8点以上 7点以下

 

項目内容には、ASDの診断基準にも該当するような発達・行動上の特性が複数含まれていますが、検査実施者がどの程度ASDの特性について正確に理解できているかによって結果が左右されてしまう検査となります。

 

クライエントの主訴や症状が全く発達障害とは関係ない場合でも、クライエントに発達障害の可能性がある場合に実施することも多いため、心理職として勤務すると目にすることが多い症状評価といえます。

 

母親(養育者)に対して評価をするため、対象者の年齢が高い場合には想起が難しい場合が多い。そのため、母子手帳や小学生の頃の成績表などを持参してもらったり、検査実施前に幼少期の様子を広く尋ねておくなど想起しやすい状況にしておくことが重要!

 

検査の結果のみで診断が確定するというわけではありませんが、心理職が検査を実施する際にASDについての正確な知識をもっておくことはクライエントさんの利益につながると思われます。

 



 

CAADID™ 日本語版(Conners’ Adult ADHD Diagnostic Interview)

CAADIDは、注意欠如多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Dsorder:ADHD)の症状評価を行う半構造化面接です。対象年齢は18歳以上の成人で、評価対象者本人に対して行います。

 

概要は以下の通りです。

内容説明

  • 18歳以上を対象とした、注意欠如・多動性障害(ADHD)およびADHD関連の症状によりADHDを診断する面接ツールです。
  • 成人のADHDを診断する際には、現在の症状だけでなく、子どもの頃にADHDの症状があったかどうか確認する必要があります。そのため、CAADIDでは成人期と小児期の両方における症状によってADHDを診断できるように構成されています。
  • パートⅠで「はい」(該当する)と回答した質問を中心に、臨床家は効率的に面接を進めることができます。
  • パートⅡでは、「障害」のレベルを特定する項目が設けられています。この障害評定の定期的な利用により、対象者への治療効果を確認し、治療法の決定に役立てることができます。
  • パートⅡは、ADHDの診断評価として使用するだけでなく、その後の経過を観察するために繰り返し使用することができます。

 

CAADID日本語版から分かること

  • パートⅠの目的は、対象者の生活歴を簡潔かつ包括的に把握することにあります。背景情報/成育歴の記録、ADHD危険因子の有無の確認、併存障害のスクリーニング(基準E)をします。
  • パートⅡの目的は、対象者がDSM-IVのADHD基準A~Dに該当するかどうかを判断することにあります。基準A~Dについて評価した後、小児期と成人期それぞれについて、ADHDの診断を行ったうえで、ADHDのサブタイプ(不注意優勢型/多動性-衝動性優勢型/混合型)を評価します。

出典:CAADID日本語版|心理検査専門所|千葉テストセンター

 

実施方法のポイントDSMの診断基準に沿って項目が設定されており、1つの項目に対して小児期と成人期それぞれについて尋ねていく。

小児期・成人期それぞれについて、機能障害(例えば、学校・家庭・職場)の程度を評価する。

症状のサブタイプ(不注意優勢型/多動性ー衝動性優勢型/混合型)を評価する。

 

ここでは説明は割愛しますがConners系のADHDの評価尺度として、以下のものがあります。

CAARS日本語版(自己記入式)
Conners3日本語版(自己記入式)
CCPT(持続性注意課題)

 

また、同じようにADHDの症状を評価する尺度として、DIVAという検査もあります。

 

本人評価のため、良くも悪くも本人の困り感や自覚の程度によって結果が左右されます。また、ADHDの不注意なのか、ASD含めた他の症状に関連する不注意なのかを判断する臨床観が必要な検査です。

 

現状ではDSM-Ⅳ-TRと対応しているため、現行のDSM-5とは異なる部分もありますが、ADHDに関連する症状を網羅的にアセスメントできる点で有用な検査といえます。

 



 

臨床認知症評価尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)

臨床認知症評価尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)は、認知症の重症度を評価する症状評価尺度で、本人・家族に対して実施します。

 

CDRの大きな特徴は、対象者の認知機能の評価のみではなく、日常生活や社会機能の観点から重症度を評価していくという点です。

 

概要は以下の通りです。

CDR は、記憶、見当識、判断力と問題解決などの 6 項目について被験者に行わせた検査結果と情報提供者の評価をもとに、認知症の重症度を測定する検査である。

出典:杉下守弘|特別企画 認知症テスト講習会(3)|Japanese Journal of Cognitive Neuroscience

 

対象者本人に対する認知症のスクリーニングや重症度評価としては、いくつも検査がありますが、そのなかでも家族からの視点を含めて多角的にアセスメントできる点がCDRの有用な点といえます。

 

杉下守弘先生と古川勝克先生が翻訳した日本語版CDRへのリンクを載せておきます。

https://mr-igaku.jp/ninti/pdf/cdr-j.pdf

 

以下のサイトに詳しい解説があるので、是非ご参照ください!

第3章 認知症の診断 4.認知機能検査|公益財団法人 長寿科学振興財団

 



 

まとめ

前回の記事と引き続き、今回の記事では大学院生のときに身につけておきたい症状評価と題して、ASDの症状を評価するPARS-TR、ADHDの症状を評価するCAADID、認知症の重症度を評価するCDRを紹介しました。

 

前回紹介したHAM-D、PANSSと合わせて、特に医療分野で働く心理職にとっては実施する機会が多いといえます。

 

また、各疾患に対する症状を網羅的に学習することもできるため、是非学習してみてはいかがでしょうか。

 

この記事のまとめ・自閉症スペクトラム(ASD)の症状評価としてPARS-TRがある(全年齢対応可、養育者に幼児期ピークと現在の評価を行う)。

・注意欠如多動症(ADHD)の症状評価としてCAADIDがある(18歳以上の成人、本人、小児期と成人期の評価を行う)。

・認知症の重症度評価としてCDRがある(本人と家族、日常生活や社会機能についても評価を行う)。