公認理師資格試験 過去問解説 問152 事例問題 スクールカウンセラーの初期対応
- 2023.08.04
- 公認心理師(第3回)
- スクールカウンセラー, 事例問題, 第3回公認心理師試験

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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問152
16歳の男子A、高校1年生。Aは、スクールカウンセラーBのいる相談室に来室した。最初に「ここで話したことは、先生には伝わらないですか」と確認した上で話し出した。「小さいときからズボンを履くのが嫌だった」「今も、男子トイレや男子更衣室を使うのが苦痛でたまらない」「こんな自分は生まれてこなければよかった、いっそのこと死にたい」「親には心配をかけたくないので話していないが、自分のことを分かってほしい」と言う。
BのAへの初期の対応として、適切なものを2つ選べ。
① Aの気持ちを推察し、保護者面接を行いAの苦しみを伝える。
② 性転換手術やホルモン治療を専門的に行っている病院を紹介する。
③ 誰かに相談することはカミングアウトにもなるため、相談への抵抗が強いことに配慮する 。
④ クラスメイトの理解が必要であると考え、Bから担任教師へクラス全体に説明するよう依頼する。
⑤ 自殺の恐れがあるため、教師又は保護者と情報を共有するに当たりAの了解を得るよう努める。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
選択肢の解説

本問題では、初期対応として適切な選択肢を2つ回答することが求められています。
事例を整理すると以下のようになります。
- 16歳 高校1年生 男子
- 性自認に関する問題、それによる苦痛を感じて希死念慮が存在している
- 教師・親に知られたくない気持ちと親には理解してほしい気持ちの両方がある。
①Aの気持ちを推察し、保護者面接を行いAの苦しみを伝える
問題文の記載からみると、性自認や希死念慮に関して、A自身は親に心配をかけたくない気持ちと一方で親に理解を得たい気持ちの葛藤が存在していることがわかります。
希死念慮に関しては自傷他害の恐れにより守秘義務の例外に該当するため別ですが、性自認に関してはこの葛藤を扱う前段階で不用意にAの気持ちを保護者に伝えることは得策とは考えられません。
性自認の問題を保護者に伝えるには入念な計画が必要でしょう。
よって、初期の対応としては不適切と考えられます。
②性転換手術やホルモン治療を専門的に行っている病院を紹介する
性転換手術やホルモン治療に関する話題は初期の対応としては早急と考えられます。
今回の事例のAの現状では、今後の見通しよりもまず性自認に由来する現状の苦しみにフォーカスを当てる必要があるでしょう。
また、病院受診後手術や治療にあたっては未成年であるため、保護者の同意も必要であり、保護者への説明後必要時に流れのなかで行われるのが妥当であると考えます。
よって、不適切な選択肢と考えられます。
③誰かに相談することはカミングアウトにもなるため、相談への抵抗が強いことに配慮する
一般的にも相談室に来室した生徒(クライエント)に対して、来室して話をしてくれたことに声掛けをすることは関係構築のために重要になります。
今回の場合は、選択肢にもあるように、相談すること=カミングアウトに該当しているため、A自身もかなりの勇気をもって相談に来たことが考えられます。
初期の対応として非常に適切な選択肢といえますね。
④クラスメイトの理解が必要であると考え、Bから担任教師へクラス全体に説明するよう依頼する
Aが強く希望しているのであれば、クラス全体への説明も選択肢に入ってくるかもしれませんが、Aの同意なくこのような対応をすることはアウティング(本人の許可なく他人に話すこと)に該当するため、厳禁です。
⑤自殺の恐れがあるため、教師又は保護者と情報を共有するに当たりAの了解を得るよう努める
「こんな自分は生まれてこなければよかった、いっそのこと死にたい」とやや積極的な希死念慮の訴えがあり、かつ、Aの状況は即座に変化が見込めないことから、自殺のリスクが否定できず、こちらは守秘義務の例外状況に該当し、初期の対応として最優先事項になります。
守秘義務の例外状況であっても、クライエントの同意を取得しての情報共有が望ましいことからAの了解を得ることは重要です。
A自身は最初に「ここで話したことは、先生には伝わらないですか」と確認をしているため、なおさら情報共有の必要性を伝え、了解を得るように努める必要があるでしょう。
よって、こちらの選択肢⑤「自殺の恐れがあるため、教師又は保護者と情報を共有するに当たりAの了解を得るよう努める」は初期の対応として正しい選択肢といえます。
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