公認理師資格試験 過去問解説 問151 事例問題 「ワークライフバランス」

公認理師資格試験 過去問解説 問151 事例問題 「ワークライフバランス」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問151 

50 歳の女性 A、看護師。A は看護師長として、職場では部署をまとめ、後進を育てることが期待されている。これまで理想の看護を追求してきたが、最近は心身ともに疲弊し、仕事が流れ作業のように思えてならない。一方、同居する義母の介護が始まり、介護と仕事の両立にも悩んでいる。義母やその長男である夫から、介護は嫁の務めと決めつけられていることが A の悩みを深め、仕事の疲れも影響するためか、家庭ではつい不機嫌になり、家族に強く当たることが増えている。

A の事例を説明する概念として、不適切なものを1つ選べ。

① スピルオーバー

② エキスパート・システム

③ ジェンダー・ステレオタイプ

④ ワーク・ファミリー・コンフリクト

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ② エキスパート・システム

選択肢の解説

① スピルオーバー

スピルオーバーとは、ワークライフバランスに関する心理学研究の用語で、簡単に説明すると「日常生活(ライフ)と仕事(ワーク)のどちらか片方がもう一方に影響を与えること」を意味しています。

日常生活での経験や状況が仕事に影響する、仕事での経験や状況が日常生活に影響する、といった事象は一般的によくみられることですが、このことを「漏出」という意味の英語であるスピルオーバーspilloverと表現していることになります。

スピルオーバーには、ポジティブとネガティブの両方があり、また方向性もライフ→ワーク、ワーク→ライフというように2方向があることになります。

ネガティブ・スピルオーバーは、日常生活や仕事での役割や葛藤などがそのままもう一方の領域に影響してストレスを感じるような状況となることを指しています。

反対に、ポジティブ・スピルオーバーは、日常生活と仕事での複数の役割がうまくかみ合って、個人的な成長や精神的健康の向上につながっている状態を指しています。

今回の事例を見てみると、仕事が先にあり、家庭状況の変化によって、いずれにも悪影響を及ぼしているネガティブ・スピルオーバーに該当する状況と考えられます。

よって、スピルオーバーは本事例を説明する概念として適当であり、問題の解答としては不適切なものとなりますね。

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② エキスパート・システム

エキスパート・システムとは、人工知能研究における用語で、簡単に説明すると「専門家(エキスパート)の知識を大量にコンピューターに蓄積し、AIによる問題解決や意思決定を行わせること」を意味します。

精神医学の領域や臨床心理学の領域でも最近研究が盛んになっている分野といえるので、興味のある方は一度調べてみると良いでしょう。

今回の事例とは全く関係ない用語といえますので、こちらが問題の正答となります。

③ ジェンダー・ステレオタイプ

ジェンダー・ステレオタイプとは、その名称通りに「男性・女性という性別(ジェンダー)の違いによる性格や役割の固定観念(ステレオタイプ)」を意味しています。

「男性は仕事をして、女性は家事をする」などが典型的なものとなりますね。

今回の事例においても、『義母やその長男である夫から、介護は嫁の務めと決めつけられている』と記載されているなど、Aの家庭では昔ながらのジェンダー・ステレオタイプが存在していることがわかります。

このステレオタイプにより家族からの理解が得られにくく、仕事と家庭の両立に悩んでいることがわかりますね。

よって、ジェンダー・ステレオタイプは本事例を説明する概念として適当であり、問題の解答としては不適切なものとなりますね

④ ワーク・ファミリー・コンフリクト

ワーク・ファミリー・コンフリクトとは、ワークライフバランスに関する心理学研究の用語で、簡単に説明すると「仕事上の役割と家庭での役割がうまく両立できていないことに対して葛藤がうまれていること」を意味します。

仕事→家庭の場合はワーク・ファミリー・コンフリクト、家庭→仕事の場合はファミリー・ワーク・コンフリクトと呼ばれます。

今回の事例では、「仕事」での看護師長という役割への燃え尽き感による疲労からはじまり、介護という家庭環境の変化に伴い家族から求められている役割が追加されたことで、Aの悪循環が生じているため、ワーク・ファミリー・コンフリクトといえるでしょう。

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