公認理師資格試験 過去問解説 問109 公認心理師の対応

公認理師資格試験 過去問解説 問109 公認心理師の対応

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

Advertisement

問109 公認心理師の対応として、不適切なものを1つ選べ。

① 親友に頼まれて、その妹の心理療法を開始した。

② カウンセリング中のクライエントに自傷他害のおそれが出現したため、家族に伝えた。

③ 治験審査委員会が承認した第III相試験で心理検査を担当し、製薬会社から報酬を得た。

④ カウンセリング終結前に転勤が決まり、クライエントへの配慮をしながら、別の担当者を紹介した。

⑤ 1年前から家庭内暴力DVを受けているクライエントの裁判に出廷し、クライエントの同意を得た相談内容を開示した。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ① 親友に頼まれて、その妹の心理療法を開始した 

となります。

選択肢の解説

①親友に頼まれて、その妹の心理療法を開始した

選択肢①は「多重関係」に関する問題となっています。

多重関係は公認心理師とクライエントの間に「専門家」と「それ以外の役割」といった関係性があることを意味します。

今回の状況では「公認心理師ークライエント」関係の他に、「兄の親友ー親友の妹」という私的な関係性が生じているため、多重関係に該当します。

よって選択肢①は不適切な記述となり、問題の回答となります。

②カウンセリング中のクライエントに自傷他害のおそれが出現したため、家族に伝えた

こちらはいわゆる秘密保持義務(公認心理師法第四十一条)と、保護義務(警告義務)との倫理的ジレンマに該当する選択肢になります。

自傷他害のおそれに関しては、秘密保持義務よりも保護義務が優先されるため、秘密保持義務の例外状況となり、家族に伝える必要が生じてきます。

ただし、情報を共有するにあたって、クライエント自身の同意を得ることが望ましいため、丁寧に情報を共有する必要性について説得する必要があります。

選択肢②ではやや乱暴な感じは受けますが、「保護義務を優先する」という意味合いでは間違ってはいないため、回答として不適切とはいえません。

③ 治験審査委員会が承認した第III相試験で心理検査を担当し、製薬会社から報酬を得た

こちらは公認心理師法の枠組みでいうと多重関係(利益誘導)の問題、臨床研究の枠組みでいうと利益相反(Conflict of interest; COI)を意図した問題文だと考えられます。

利益相反とは、企業側の利益と研究者側の社会的責任の間で何らかの衝突が生じることをいい、簡単に説明すると「企業から沢山の報酬を貰っているため企業側に有利な結果を出す」などといった忖度が生じることです。

このような利益相反または利益誘導を避けるために、研究では倫理委員会による審査と承認を得る必要がありますが、今回は既に治験審査委員会に承認を得ている状態となっています。

通常であれば、心理検査実施に関する人件費(報酬)なども、審査前の計画に含まれているため、正当な手続きを経ての報酬であれば倫理的な問題は生じないといえます。

よって選択肢③「治験審査委員会が承認した第III相試験で心理検査を担当し、製薬会社から報酬を得た」は不適切な記述とはいえません。

④カウンセリング終結前に転勤が決まり、クライエントへの配慮をしながら、別の担当者を紹介した

こちらの問題文に関しては、「カウンセリングの引き継ぎ」に関する内容であり、問題文の通りで全く問題がないといえます。

⑤1年前から家庭内暴力DVを受けているクライエントの裁判に出廷し、クライエントの同意を得た相談内容を開示した

裁判での情報開示に関しても、秘密保持義務の例外状況にあたります。ただし、クライエントに開示する内容や開示する場所などの同意を得ておくことが前提となります。

こちらの問題文では、既に同意を得ているとのことなので、適切な記述といえます。

まとめ

公認心理師の職責から、「多重関係」「秘密保持義務」「倫理的ジレンマ」に関連する問題でした。

倫理的な問題に関してはよく押さえておきましょう。