公認理師資格試験 過去問解説 問110 公認心理師の成長モデルとスーパービジョン

公認理師資格試験 過去問解説 問110 公認心理師の成長モデルとスーパービジョン

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

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問110 心理臨床の現場で働く公認心理師の成長モデルとスーパービジョンについて、不適切なものを1つ選べ。

① 自己研さんの1つとして、教育分析がある。

② 公認心理師の発達段階に合わせたスーパービジョンが必要である。

③ 自己課題の発見や自己点検といった内容の促進は、スーパービジョンの目的である。

④ M. H. RφnnestadとT. M. Skovholtは、カウンセラーの段階的な発達モデルを示した。

⑤ 経験の浅い公認心理師のスーパービジョンにおいては、情緒的な支えよりも技術指導が重要である。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ⑤  経験の浅い公認心理師のスーパービジョンにおいては、情緒的な支えよりも技術指導が重要である

となります。

選択肢の解説

①自己研さんの1つとして、教育分析がある

教育分析 training analysisは、もともとは精神分析の概念で「自分自身が精神分析を受けること」でしたが、現在では心理職自身が訓練の一貫として心理療法やカウンセリングを受けることを意味しています。

教育分析の意義として以下のような点が挙げられています。

  • 自分自身の問題を自覚して解決に導くことができる
  • クライエントの立場で心理療法を経験できる
  • セルフケアの一貫となる
  • 技法や介入方法について体験的に学習できる

このように教育分析は単に心理療法を受けるということではなく、自己研鑽の役割を担っています。

よって選択肢①「自己研さんの1つとして、教育分析がある」は正しい記述となるため、問題の回答としては不適切といえます。

②公認心理師の発達段階に合わせたスーパービジョンが必要である

スーパービジョンでは、スーパービジョンを受ける側であるバイジーの専門家としての発達段階と個別の課題に合わせたものが必要とされます。

そのあり方としてはいくつも研究がなされていますので一度調べてみてください。

選択肢②「公認心理師の発達段階に合わせたスーパービジョンが必要である」は正しい記述であるため、問題の回答としては不適切となります。

③自己課題の発見や自己点検といった内容の促進は、スーパービジョンの目的である

スーパービジョンに関する理論のひとつであるHolloway(1995)による「SAS(The Systems Approach to Supervision)」には、スーパーバイジーの課題として以下のものが挙げられています。

  • カウンセリングスキル
  • ケースの概念化
  • 専門職の役割
  • 情緒的気づき
  • 自己評価

このうち「自己評価」では、自己の能力の限界について認識することも含まれています。

自己の能力の限界を認識していくには、適切な自己課題の発見や自己点検などが欠かせません。

そのため、自己課題の発見・自己点検もスーパーバイズの目的のひとつと捉えることができます。

④M. H. RφnnestadとT. M. Skovholtは、カウンセラーの段階的な発達モデルを示した

Rφnnestad ロンスタットSkovholt スコウフォルト は、アメリカの大学院生やセラピストに対してインタビュー調査を行い「カウンセラーの発達モデル」を提唱しました。

素人援助者期専門的訓練を受ける前身近な家族・友人の相談相手として、自分の体験や知識に基づくアドバイスをする。過剰な同一視や動揺を示しやすい。
初学者期修士課程在学中専門的なトレーニングを受け、熱意・不安が高い。理論やバイザー、私生活の影響を受けて圧倒されやすい。
上級生期インターンや受付業務継続的にスーパービジョンを受けている。間違いを恐れ、プレッシャーを強く感じて完璧主義になりやすい。
初心者専門家期博士課程終了から5年これまでの訓練の有効性を固める。自分自身や専門的な内容を追求しようとする。
経験を積んだ専門家期臨床経験15年自己認識とカウンセラーとしての役割が一致している。治療関係の重要性を理解し、理論・技法を柔軟に使用できる。
熟練した専門家期臨床経験20年以上自己受容感・職務満足感・謙虚さが高まる。不安や恐れが減少し、あらゆる技法を広く使用できる。

この理論では以上の6つの成長段階があるとされています。

ちなみに、ロンスタットらの研究をもとに割澤は日本版として以下の段階を示しています。

  • 素人援助段階(大学生ボランティア経験者)
  • 訓練生段階(大学院修了者)
  • 初心者段階(実務経験5年未満)
  • その後の自分

よって選択肢④の記述「 M. H. RφnnestadとT. M. Skovholtは、カウンセラーの段階的な発達モデルを示した」は正しい内容となるため、問題の回答としては不適切になります。

⑤経験の浅い公認心理師のスーパービジョンにおいては、情緒的な支えよりも技術指導が重要である

経験や発達段階に即したスーパービジョンの重要性についてはよく指摘されています。

鑪(1997)では、「クライエント・カウンセラーとセラピストの関係性」「臨床的技法と情緒的支えの割合」「スーパービジョンの次元」で臨床経験によるスーパービジョンのレベルの違いを説明しています。

これによると、初心者段階では技法と支えの割合は「情緒的な支え」が圧倒的に多くなっています。

よって選択肢⑤「経験の浅い公認心理師のスーパービジョンにおいては、情緒的な支えよりも技術指導が重要である」は、正しくは「技術指導よりも情緒的な支え」となります。

本問題では不適切なものを選ぶ必要があるため、選択肢⑤が本問の回答となります。

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問110は「公認心理師の成長モデルとスーパービジョン」についてでした。

以下の用語に関してはしっかりと押さえておきましょう。

  • Rφnnestad ロンスタットSkovholt スコウフォルト →「カウンセラーの発達モデル」
  • SAS(The Systems Approach to Supervision)