公認理師資格試験 過去問解説 問111 児童相談所の体制と連携

公認理師資格試験 過去問解説 問111 児童相談所の体制と連携

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問111 児童虐待防止対策における、児童相談所の体制及び関係機関間の連携強化について、不適切なものを1つ選べ。

① 児童心理司を政令で定める基準を標準として配置する。

② 第三者評価など、児童相談所の業務の質の評価を実施する。

③ 都道府県は、一時保護などの介入対応を行う職員と、保護者支援を行う職員を同一の者とする。

④ 学校、教育委員会、児童福祉施設等の職員は、職務上知り得た児童に関する秘密について守秘義務を負う。

⑤ 家庭内暴力DV対策と児童虐待対応の連携を強化し、婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターなどとの連携・協力を行う。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ③  都道府県は、一時保護などの介入対応を行う職員と、保護者支援を行う職員を同一の者とする

となります。

選択肢の解説

① 児童心理司を政令で定める基準を標準として配置する

児童心理司は、児童相談所における任用資格(特定の職業に任用されるための資格)です。

従来は厚生労働省が定める「児童相談所運営指針」という基準により、「児童福祉司2人につき1人以上」配置されることが標準とされていました。

しかし、改正児童虐待防止法(2019年6月改正、2020年4月施行)により、児童心理司の配置人数は「政令で定める基準を標準として都道府県が定めること」とされています。

つまり、児童心理司の増員が図られたということになります。

児童心理司

(1)子ども、保護者等の相談に応じ、診断面接、心理検査、観察等によって子ども、保護者に対し心理診断を行うこと

(2)子ども、保護者、関係者等に心理療法、カウンセリング、助言指導等の指導を行うこと


出典:第2章 児童相談所の組織と職員|児童相談所運営指針

要件としては、大学で心理学を専修する学科やこれに相当する課程を納めて卒業した者、これに準ずる資格を有する者とされています。

以上から選択肢①「児童心理司を政令で定める基準を標準として配置する」は正しい記述といえます。

② 第三者評価など、児童相談所の業務の質の評価を実施する

児童相談所の業務の評価に関しては、児童福祉法に定められています。

第12条6項

都道府県知事は、第二項に規定する業務の質の評価を行うことその他必要な措置を講ずることにより、当該業務の質の向上に努めなければならない

出典:児童福祉法第十二条第六項

第3回の試験時点では、児童福祉法に規定された努力義務でしたが、実施している児童相談所の割合の低さを問題視した厚生労働省は徐々に第三者評価に関する規定を定めてきています(児童相談所における第三者評価ガイドライン)。

また児童相談所の第三者評価に特化した日本児童相談業務評価機関も設立されています。

試験実施時点では「努力義務」とされているので、選択肢②「第三者評価など、児童相談所の業務の質の評価を実施する」は正しい記載といえます。

ちなみに、児童養護施設などの社会的養護の施設においては、「児童福祉施設の設置及び運営に関する基準」において、第三者評価の実施と結果の公表が義務づけられているので、そちらも押さえておきましょう。

③ 都道府県は、一時保護などの介入対応を行う職員と、保護者支援を行う職員を同一の者とする

こちらの選択肢については、改正児童虐待防止法(2019年6月改正、2020年4月施行)に以下のように記載されています。

児童相談所の介入機能と支援機能の分離等

都道府県は、保護者への指導を効果的に行うため、児童の一時保護等を行っ た児童福祉司等以外の者に当該児童に係る保護者への指導を行わせることその 他の必要な措置を講じなければならないこと

出典:児童虐待防止法十一条第七項|第児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律 の公布について|厚生労働省

つまり、基本的には「一時保護」を行った児童福祉司以外の者が保護者への対応を行うということになります。

よって選択肢③「都道府県は、一時保護などの介入対応を行う職員と、保護者支援を行う職員を同一の者とする」は不適切な記述と考えられますので、本問題の正答となります。

④ 学校、教育委員会、児童福祉施設等の職員は、職務上知り得た児童に関する秘密について守秘義務を負う

こちらの選択肢は守秘義務に関するもので、直感的に正しいことがわかる内容となっています。今回の問題に関連づけると、「関係機関との連携」としての要保護児童対策地域協議会の守秘義務に関する問いだと考えられます。

要保護児童対策地域協議会の守秘義務では、「国又は地方公共団体の機関」「法人」「それ以外」と守秘義務の適用範囲が分けられています。

詳細は「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」をご参照ください。

こちらを見ると「学校、教育委員会、児童福祉施設等」は公的機関や法人に関わらず守秘義務の対象に含まれていますので、選択肢④は適切な記述となります。

⑤ 家庭内暴力DV対策と児童虐待対応の連携を強化し、婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターなどとの連携・協力を行う

配偶者からの暴力に関する法律は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法」となります。

この配偶者暴力防止法に関する事項が「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和2年4月1日公布)」に含まれています。

DV対策との連携強化のため、婦人相談所及び配偶者暴力相談支援センターの職員については、児童虐待の早期発見に努めることとし、 児童相談所はDV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターと連携協力するよう努めるものとする。

出典:児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の概要

よって選択肢⑤は正しい記述となります。

まとめ

本問題は主に児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律における「児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等」に関係する内容でした。

詳細は:児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の概要をご参照ください。

  • 児童相談所の体制強化:
    • 一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を行う職員を分ける
    • 弁護士の配置
    • 業務の質の評価
    • 児童福祉司の配置数の見直し
    • 児童福祉司とスーパーバイザーの任用要件の見直しと児童心理司の配置基準の法定化
  • 児童相談所の設置促進
  • 関係機関間の連携強化