公認理師資格試験 過去問解説 問129 副交感神経について

公認理師資格試験 過去問解説 問129 副交感神経について

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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問129 副交感神経系が優位な状態として、正しいものを2つ選べ。

① 血管拡張

② 血糖上昇

③ 瞳孔散大

④ 胃酸分泌の減少

⑤ 消化管運動の亢進

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ①血管拡張 ⑤消化管運動の亢進

副交感神経

副交感神経とは、簡単に説明すると、「臓器や器官などの働きを抑制させる自律神経」といえます。

「自動車のブレーキ」に喩えられることが多いです。

反対の機能をもつ自律神経は交感神経で、「自動車のアクセル」に喩えられます。

この2つの神経は正反対の作用を示しますが、いずれも意思が関与せずに作用することから、自律神経と呼ばれるわけです。

本問題では、この交感神経と副交感神経の作用を理解できているかどうかがポイントとなります。

先ほど、副交感神経は自動車のブレーキに喩えられることが多いと記載しましたが、副交感神経の主な機能は「活動性を下げてリラックスモードにすること」です。

従って身体的には以下のような状態となります。

  • 呼吸:ゆっくり
  • 心拍:ゆっくり
  • 血圧:低下
  • 血管:拡張
  • 骨格筋:弛緩
  • 消化管:運動の亢進
  • 発汗:抑制
  • 瞳孔:縮小

選択肢の解説

①血管拡張

血管の拡張とは、血管壁の筋肉(血管平滑筋)が弛緩して、血管が開く(広がる)ことをいいます。

血管が拡張することで、心臓の負担は低下し血圧は低下することになります。

一般的に体温が高いときや気温が暑いときには、血管を拡張させることで血液を多く流して体内の熱を効率的に外に流すようにし、体温が低いときや気温が寒いときには血管を収縮させることで、熱を逃さないようにします。

副交感神経はいくつかの血管を支配して、血管拡張作用があることがわかっています。

副交感神経の末端から放出されるアセチルコリンが血管を拡張させるとされていますが、アセチルコリンではなく副交感神経に含まれるNO作動性神経繊維が関連しているともいわれます。

以上のことから、選択肢①「血管拡張」は副交感神経の作用として正しい記述であるといえます。

②血糖上昇

血糖とは、血液の中に含まれるグルコース(ブドウ糖)を意味します。

この血糖は主に食事によって体内に取り込まれ、身体全身のエネルギーとなります。

健康な方でも食事直後には一時的に血糖値が上昇して、高血糖の状態になります。この高血糖の状態を脳の視床下部が感知すると、副交感神経を通して、膵臓のランゲルハンス島のB細胞からのインスリンの分泌を促します。このインスリンはグルコースの貯蔵(グリコーゲンの合成促進)や脂肪への合成を促進することで、血液中の血糖値を下げる役割があります。

このように副交感神経が優位の状態では、インスリンの分泌が促進されるため、血糖は低下すると考えることができます。

反対に、交感神経が優位の状態では、インスリンの分泌が抑制されるため、血糖は上昇します。

よって、選択肢②「血糖上昇」は不適切な記述といえます。

③瞳孔散大

瞳孔とは、黒目の中央にある丸くて黒い部分で、光が目に入る入り口の役割を担っています。この瞳孔は、明るいところでは小さくなり、暗いところでは大きくなることで、目に入る光の量を調整しています。

瞳孔は、驚いたり興奮しているときなど交感神経優位な状態では散大し、眠いときや疲れたときなど副交感神経優位な状態では縮小する特徴があります。

また、副交感神経優位な状態では、大きさの変化のみではなく、瞳孔の揺らぎも大きくなることがわかっています。

よって、選択肢③「瞳孔散大」は不適切な記述といえます。

④胃酸分泌の減少

胃酸は、胃のなかにある食べ物の消化に必要な働きをしています。

この胃酸は副交感神経が優位のときに分泌量が増加します。

「胃酸の分泌量が増加する」と聞くと、ストレス値が高いように感じるため、直感的には副交感神経よりも交感神経が関与していそうな印象があります。

詳細なメカニズムは不明瞭ですが、交感神経による緊張状態のなかでも一時的に副交感神経が優位になることがあり、その切り替わったときに「胃酸分泌量の増加」がみられるようです。

よって選択肢④「胃酸分泌の減少」は副交感神経の働きとして不適切な記述となります。

⑤消化管運動の亢進

副交感神経が興奮するとアセチルコリンが放出されて消化管運動が亢進されます。

アセチルコリンは、副交感神経の末端や運動神経の末端から放出される神経伝達物質で、心拍数の低下・消化管運動の亢進・発汗などに関わり、学習・記憶・睡眠などにも関係しています。

ちなみに、アセチルコリンの放出量の調整にはドーパミンやセロトニンが関わっています。

ドーパミン→アセチルコリンの放出が抑制 

セロトニン→アセチルコリンの放出が増加

以上から、選択肢⑤「消化管運動の亢進」は副交感神経の働きとして正しいとわかります。

まとめ

副交感神経の働き:アセチルコリンも関連

  • 心拍:ゆっくり
  • 血圧:低下
  • 血管:拡張
  • 血糖:低下(インスリンの分泌量が増加)
  • 骨格筋:弛緩
  • 消化管:運動の亢進、胃酸分泌の促進
  • 発汗:抑制
  • 瞳孔:縮小