公認理師資格試験 過去問解説 問116 動機づけ面接

公認理師資格試験 過去問解説 問116 動機づけ面接

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問116 動機づけ面接の基本的スキルとして、不適切なものを1つ選べ。

① クライエントが今までに話したことを整理し、まとめて聞き返す。

② クライエントの答え方に幅広い自由度を持たせるような質問をする。

③ クライエントの思いを理解しつつ、公認心理師自身の心の動きにも敏感になる。

④ クライエントの気づきをより促すことができるように、言葉を選んで聞き返す。

⑤ クライエントの話の中からポジティブな部分を強調し、クライエントの価値を認める。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ③クライエントの思いを理解しつつ、公認心理師自身の心の動きにも敏感になる

となります。

動機づけ面接とは

動機づけ面接法 motivational interviewing :MI とは、簡潔にまとめると「人間の変化」を支援する方法です。

クライエントの変化したい方向を見つけ、その方向に変化しようとすることをサポートしていくような関わり方を探り、クライエント自身が本来持っている変化することへの動機づけを高められるように導いていきます。

変化する際に強制的ではあまり効果がないため、面接のなかで内発的な動機づけを引き出しながら、目標に向けた行動を支援するためにさまざまな技法や態度が必要となります。

動機づけ面接が開発された背景には、「アルコール依存症を対象とした行動療法の効果研究」があります。

Miller(ミラー)は、この効果研究の失敗要因を詳細に分析して、「セラピストのセラピーの効果に偏りがあること」「正確な共感を示すセラピストほど高い効果を示していること」を見出しました。

これをきっかけとして、治療効果の高いセラピストの面接場面での言動を細かく分析することで、動機づけ面接が生み出されました。

変化を促すためのセラピスト側の態度という点で、動機づけ面接は「ロジャースの来談者中心療法」の影響を強く受けています。

動機づけ面接の土台となる4つの原理は以下の通りです。

  • 共感を実現する
  • 矛盾を拡大する
  • 抵抗に巻き込まれ転がりながら進む
  • 自己効力感を援助する

選択肢の解説

動機づけ面接では、面接を通して行われる5つの方法があります。

・開かれた質問

・振り返りの傾聴

・認めて肯定する

・要約して締めくくる

・チェインジ・トーク

今回の問題の選択肢は、この5つの方法に関連するものといえます。

①クライエントが今までに話したことを整理し、まとめて聞き返す

こちらは「要約して締めくくる」に関連する記述です。

「要約して締めくくる」とは、クライエントがその面接のなかで話した言葉を整理して伝え返すことで、会話内容をつなげ合わせて強化する役割を果たします。

締めくくるとされてはいますが、重要な話題や変化に向けたキーワードが出てきた際にその都度要約を行うと良いとされます。

よってこちらの選択肢①「クライエントが今までに話したことを整理し、まとめて聞き返す」は正しい記述となります。

②クライエントの答え方に幅広い自由度を持たせるような質問をする

こちらは「開かれた質問」に関連しています。

「開かれた質問」とは、質疑応答のように「はい・いいえ」で答える質問形式と異なり、幅広く自由に答えることが可能な余地を残した質問となります。

動機づけ面接では、クライエントが自分の経験を開放的な気持ちで表現するなかで、変化への動機が形成されていくと考えるため、クライエントが主体的に話す時間を増やすことが重要となってきます。

そのために、開かれた質問が用いられるというわけです。

よって、選択肢②「クライエントの答え方に幅広い自由度を持たせるような質問をする」は正しい記述といえます。

③クライエントの思いを理解しつつ、公認心理師自身の心の動きにも敏感になる

こちらの記述はカウンセリングの態度として正しくないわけではありませんが、動機づけ面接に特徴的な態度ではありません。

それ以外の選択肢が「動機づけ面接」の具体的な技法を適切に示しているため、こちらの選択肢③が除外的に不適切となります。

本問題では、不適切なものを選択する必要があるため、こちらが正答となります。

④クライエントの気づきをより促すことができるように、言葉を選んで聞き返す

こちらは「振り返りの傾聴」に関連する記述となります。

「振り返りの傾聴」とは、ただ黙って話を聞くのではなく、クライエントが表現した内容のなかから本当に伝えたいことだと推測される言葉を選んで聞き返すことです。

一般的な会話においても同様ですが、人は何かを話す際に何らかの伝えたい意味を持っており、言葉に含まれていることが多いですが、正確に表現できたり伝えることができないこともよくあります。

そのため、振り返りの傾聴では、話を支持的に聞きつつも、クライエントの表現から伝えたい本質を推測して言葉で伝え返すことによって、クライエント自身が自分の本当に伝えたいことへの気づきを促すことに繋がります。

よって選択肢④「クライエントの気づきをより促すことができるように、言葉を選んで聞き返す」は適切な記述といえます。

⑤クライエントの話の中からポジティブな部分を強調し、クライエントの価値を認める

こちらは「認めて肯定する」に関連する記述となります。

クライエントを直接的に認めて肯定して支持することは、治療関係をよくすることと、クライエント自身が自分を振り返ることを促すことに繋がります。

クライエント自身が抱いている価値を認めて理解を示すことも「認めて肯定する」に含まれています。

よって選択肢⑤「クライエントの話の中からポジティブな部分を強調し、クライエントの価値を認める」は正しい記述といえます。

まとめ

  • 動機づけ面接:Miller(ミラー)によって開発された「人間の変化」を導くためのコミュニケーションの方法や技法。
  • 動機づけ面接は、ロジャースの来談者中心療法にも関連性が高い。
  • 動機づけ面接を通して行われるセラピスト側の技法として、「開かれた質問」「振り返りの傾聴」「認めて肯定する」「要約して締めくくる」「チェインジ・トーク」がある。

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