第3回公認心理師試験・午前問2は、統合失調症の症状が増悪した場面で、公認心理師としてどの対応を優先すべきかを問う問題です。
正答は③「緊張病性昏迷では、身体管理が必要となる可能性があることを家族に伝える」です。
この問題の中心は、精神症状だけを見るのではなく、緊張病性昏迷では身体的合併症にも注意が必要であることです。特に、著しい活動性低下や摂取低下がある場合には、心理的支援だけで完結せず、医療的評価と身体管理が重要になります。
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【問2】統合失調症の症状増悪時の公認心理師の対応
問2 統合失調症の症状が増悪したクライエントへの公認心理師の介入について、適切なものを1つ選べ。
① 症状増悪時は、心理的支援を行わない。
② 幻聴に関して、幻覚であることを自覚させる。
③ 緊張病性昏迷では、身体管理が必要となる可能性があることを家族に伝える。
④ 作為体験によるリストカットは、ためらい傷程度であれば特に緊急性はない。
⑤ 服薬を拒否するクライエントに対して、薬は無理に服薬しなくてよいと伝える。
正答:③
第3回公認心理師試験の午前問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式ページで確認できます。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター
③が正しい理由:緊張病では身体管理が重要になる
緊張病(catatonia)は、著しい精神運動の異常を示す状態で、統合失調症に限らず、気分障害やさまざまな医学的・神経学的状態に伴うことがあります。
British Association for Psychopharmacologyの2023年コンセンサスガイドラインでは、緊張病では基礎疾患の評価だけでなく、身体的合併症の評価と予防・管理が重要であるとされています。
また、日本の統合失調症患者を対象としたFunayamaら(2018)の研究では、緊張病性昏迷を示した群で、肺炎、脱水、深部静脈血栓症、肺塞栓、褥瘡、腎不全など複数の身体的合併症のリスク上昇が報告されています。
緊張病性昏迷 → 精神症状だけでなく身体状態の評価・管理が必要
したがって③は適切です。
「昏迷だから意識がない」とは限らない
緊張病性昏迷では、外から見るとほとんど動かず、反応も乏しく見えることがあります。
しかし、これは単純に「意識がない状態」と同義ではありません。無動、無言、拒絶などの緊張病症状によって、外界への反応が著しく低下していることがあります。
そのため、反応の乏しさだけから心理的・身体的状態を決めつけず、医療チームによる評価につなげることが重要です。
①「症状増悪時は心理的支援を行わない」が誤りの理由
症状が増悪したからといって、心理的支援を一律に中止するわけではありません。
ただし、急性期では安全確保や医学的評価が優先される場面があります。公認心理師が単独で対応するのではなく、主治医や多職種と連携し、その時点で可能な支援を検討します。
つまり、
「症状増悪=心理支援を全面的に行わない」
という一律の判断が不適切です。
② 幻聴を「幻覚だと自覚させる」が誤りの理由
急性期の幻聴や妄想は、本人にとって非常に切迫した体験になっていることがあります。
そのため、本人の体験を頭ごなしに否定したり、直ちに「それは幻覚だ」と認めさせることを目標にするのは適切ではありません。
まずは、本人がどのような体験をしていて、どれほど不安・恐怖・苦痛があるのかを把握し、安全を確認しながら、医療チームと連携して対応します。
急性期では「訂正させる」より、苦痛と安全の把握、関係維持、連携が優先
と整理するとよいでしょう。
④ 自傷の傷が軽く見えても「緊急性なし」とは判断できない
④は不適切です。
自傷行為がある場合、外見上の傷の程度だけで緊急性を判断することはできません。
特に、作為体験などの精神病症状と関連して自傷が生じている場合には、本人の意思だけでは行動をコントロールしにくい可能性も含め、安全性を慎重に評価する必要があります。
この問題で重要なのは、傷の程度から「まだ大丈夫」と判断しないことです。
なお、試験対策としては具体的な自傷方法や重症度判定の手順まで覚える必要はありません。
⑤ 服薬拒否に対して「無理に飲まなくてよい」と伝えるのが誤りの理由
服薬を拒否している人に対して、公認心理師が独自に「薬は飲まなくてよい」と助言するのは適切ではありません。
まず、服薬を拒否する理由、副作用への不安、病識の状態、治療への懸念などを丁寧に確認し、主治医を含む医療チームと共有することが重要です。
公認心理師の役割は、処方の中止・継続を独自に決めることではなく、本人の意思や困りごとを把握し、医療との連携を支えることです。
5つの選択肢を整理
| 選択肢 | ポイント | 判定 |
|---|---|---|
| ① 症状増悪時は心理支援を行わない | 一律に中止するのではなく、安全・医学的評価と連携しながら支援を検討する | 誤り |
| ② 幻聴を幻覚だと自覚させる | 急性期に体験を直ちに訂正させることを優先しない | 誤り |
| ③ 緊張病性昏迷では身体管理が必要となる可能性 | 身体合併症の評価・管理が重要 | 正答 |
| ④ 傷が軽ければ緊急性はない | 外見上の傷の程度だけで安全性を判断しない | 誤り |
| ⑤ 服薬拒否なら薬は飲まなくてよいと伝える | 処方判断を独自に行わず、理由を把握し医療チームと連携する | 誤り |
旧記事から修正したポイント
旧記事では、DSMの診断基準を長く引用し、オープンダイアローグや服薬について広い範囲まで説明していました。
今回の改訂では、第3回午前問2の正答根拠に必要な内容へ絞り、
- 緊張病は統合失調症だけに限定されない
- 緊張病性昏迷では身体的合併症への注意が必要
- 急性期の幻聴・妄想に対して「自覚させる」ことを単純な目標にしない
- 自傷は見た目の傷の軽さだけで緊急性を判断しない
- 服薬について公認心理師が独自に中止を勧めない
という点を、現在のガイドラインと研究に沿って整理しました。
また、旧記事にあった「傷が軽ければ緊急性には猶予がある」と読める表現は削除しています。
試験対策ではここまで覚える
- 緊張病性昏迷 → 身体管理が必要になることがある
- 症状増悪時でも心理支援を一律に中止しない
- 急性期に幻聴を頭ごなしに否定・訂正しない
- 自傷は外見上の傷の程度だけで安全性を判断しない
- 服薬の可否を公認心理師が独自に決めない
問2の中心:急性期こそ、心理症状だけでなく身体状態・安全・医療連携まで見る
まとめ
第3回公認心理師試験・午前問2の正答は、③「緊張病性昏迷では、身体管理が必要となる可能性があることを家族に伝える」です。
緊張病性昏迷では、無動や摂取低下などを背景に身体的合併症が生じることがあり、精神症状への対応だけでなく身体管理が重要になります。
公認心理師は、急性期の支援を単独で完結させるのではなく、安全性を確認しながら医師・多職種と連携して対応することが重要です。



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