第3回公認心理師試験・午後問90は、MMPI(ミネソタ多面人格目録)の実施と解釈に関する問題です。
この問題を復習するときは、ひとつ注意があります。2020年の試験で問われたMMPIの知識と、現在のMMPI-3では、項目数や尺度構成、性別に関する扱いなどが異なります。まずは試験当時の正答を押さえ、そのうえで現在の版との違いも整理します。
【問90】MMPIの実施と解釈
問90 MMPIの実施と解釈について、正しいものを1つ選べ。
① 各質問項目には、5件法で回答する。
② 追加尺度は、20尺度開発されている。
③ F尺度は、心理的防衛の高さを示している。
④ 第5尺度Mfは、性別により解釈基準が異なる。
⑤ 第0尺度Siと第7尺度Ptが90の場合は、精神的混乱状態と解釈できる。
正答:④ 第5尺度Mfは、性別により解釈基準が異なる。
この問題では、MMPIの回答形式、尺度構成、妥当性尺度、臨床尺度の解釈がまとめて問われています。
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選択肢の解説
① 各質問項目には、5件法で回答する
→ 不適切です。
MMPIは、5件法のように「非常に当てはまる〜まったく当てはまらない」と段階的に回答する形式ではありません。
第3回試験で前提となる旧来の日本版MMPIでは、各項目に「そう」「ちがう」で回答します。また、現在のMMPI-3日本版でも、各項目に「あてはまる」「あてはまらない」で回答します。
したがって、①の「5件法で回答する」は不適切です。
② 追加尺度は、20尺度開発されている
→ 不適切です。
旧来の日本版MMPIには、基礎尺度(妥当性尺度・臨床尺度)に加えて、多数の追加尺度があります。日本版MMPIの公式出版社である三京房も、採点プログラムでは何百もの追加尺度の中から有用な尺度を算出できると説明しています。
したがって、②の「追加尺度は20尺度開発されている」は不適切です。
ただし、MMPIは改訂によって尺度構成そのものが変化しています。現在のMMPI-3日本版は52尺度で構成されているため、旧版で学んだ尺度数を現在版へそのまま当てはめないことも重要です。
③ F尺度は、心理的防衛の高さを示している
→ 不適切です。
F尺度はInfrequency(出現頻度の低い反応)に関する妥当性尺度です。MMPI-2の公式トレーニング資料では、F尺度はover-reportingを検討する際に用いられ、上昇には意図的な過大報告だけでなく、ランダム回答、固定的な回答、強い精神病理や心理的苦痛など複数の可能性が挙げられています。
したがって、「F尺度が高い=心理的防衛が高い」と一対一に解釈することはできません。
一方、K尺度はunintentional under-reportingを検討するために設計された尺度で、上昇理由のひとつとしてdefensivenessが挙げられています。
ここでは、F尺度とK尺度の役割を混同しないことがポイントです。
④ 第5尺度Mfは、性別により解釈基準が異なる
→ 適切。正答です。
第5尺度Mf(Masculinity-Femininity)は、旧来のMMPIで用いられてきた臨床尺度のひとつです。第3回試験当時に参照される日本版MMPIは性別を含む人口学的要因に基づいて再標準化され、関連する解釈資料にも男女別の区分が用いられていました。
この旧来MMPIの文脈を前提として、2020年に実施された第3回公認心理師試験では④が正答です。
ただし、この知識を現在のMMPIへそのまま一般化するのは適切ではありません。
現在のMMPI-3日本版では、ジェンダーに関連する項目が削除され、性別によらない単一の基準で評価する方式へ変更されています。
つまり試験対策では、
- 第3回試験の文脈:④が正答
- 現在のMMPI-3:性別のない単一基準
と、版と時代を分けて理解することが大切です。
⑤ 第0尺度Siと第7尺度Ptが90の場合は、精神的混乱状態と解釈できる
→ 不適切です。
SiはSocial Introversion、第7尺度PtはPsychastheniaとして、従来のMMPIで用いられてきた尺度です。
しかし、MMPIの解釈では2つの尺度の得点だけを見て、特定の精神状態を確定することはできません。
まず回答の妥当性を確認し、そのうえでプロフィール全体や複数の尺度を組み合わせて解釈する必要があります。MMPI-2の公式Interpretive Strategyでも、妥当性尺度、コードタイプ、個別尺度など複数の情報源を用い、個別尺度だけよりコードタイプに基づく記述を重視する考え方が示されています。
さらに実際の心理アセスメントでは、MMPIの結果だけで診断や特定の精神状態を断定せず、面接、行動観察、その他の臨床情報と照合して仮説を検討します。
したがって、SiとPtがともに高いという情報だけから「精神的混乱状態である」と決める⑤は不適切です。
問90で押さえておきたいポイント
- 回答形式:MMPIは5件法ではない。
- 尺度数:「追加尺度20」と固定して覚えない。版によって尺度構成は異なる。
- F尺度:Infrequencyに関する妥当性尺度で、防衛性そのものを直接示す尺度ではない。
- Mf:第3回試験では旧来MMPIの文脈から④が正答。
- プロフィール解釈:一部の尺度得点だけから特定の精神状態を断定しない。
現在のMMPI-3との違いにも注意
公認心理師試験の過去問を学ぶときには、問題が作成された時点の検査と、現在使用されている検査を区別する必要があります。
現在のMMPI-3日本版は、335項目・52尺度で構成され、性別によらない単一基準が採用されています。したがって、「550項目」「Mfを男女別に解釈する」といった旧来MMPIの知識を、そのまま現在のMMPI-3の説明として使用することはできません。
このように、過去問では「当時の正答を正しく理解すること」と「現在の検査情報へアップデートすること」を分けて整理すると混乱しにくくなります。
まとめ
第3回公認心理師試験・午後問90の正答は、④「第5尺度Mfは、性別により解釈基準が異なる」です。
この問題では、F尺度とK尺度の役割、MMPIの尺度構成、プロフィール解釈の基本に加えて、検査は改訂によって内容や解釈基準が変わるという点まで押さえておくと理解が深まります。
前の問題:第3回 問89「知能検査実施の心構え」
関連する心理検査問題:第3回 問96「Clinical Dementia Rating」



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