公認心理師資格試験 過去問解説 問49 高齢者による犯罪について

公認心理師資格試験 過去問解説 問49 高齢者による犯罪について

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問49】高齢者による犯罪

問49 2018年(平成30年)の高齢者による犯罪について、誤っているものを1つ選べ。

① 刑務所入所時点で65歳以上である女性の罪名の80%以上が窃盗である。

② 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率は、約10%である。

③ 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率を男女別で比較した場合、男性よりも女性の方が大きい。

④ 窃盗による検挙人員の人口に占める比率を、20歳以上65歳未満と65歳以上とで比較した場合、後者の方が大きい。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ③

 

② 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率は、約10%である

となります。

 

こちらの問題はかなりピンポイントな問となっていますので、法務省が公開している『犯罪白書』を確認しておく必要があります。

 

 



 

選択肢の解説

① 刑務所入所時点で65歳以上である女性の罪名の80%以上が窃盗である

出典:平成30年版 犯罪白書 第7編 第3章 第4節 1

上の図は入所受刑者の罪名ごとの割合を示しています。

 

見るとわかるように、65歳から69歳までの女性の罪名は窃盗が80.6%、70歳以上では89.3%と、高齢者女性の刑務所入所時点での罪名は約8〜9割が窃盗だとわかります。

 

そのため、選択肢①「刑務所入所時点で 65 歳以上である女性の罪名の 80 % 以上が窃盗である」は正しい記述であり、問題の解答としては不適切になります。

 

② 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率は、約10%である

犯罪白書には以下のように記載されています。

総数における刑法犯検挙人員に占める各年齢層の検挙人員の比率は,平成10年には高齢者が4.2%と各年齢層で最も低かったが,29年は21.5%と最も高かった。65~69歳の者の構成比が,10年の2.1%から6.8%に上昇したにとどまるのに対し,70歳以上の者は,10年の2.1%から29年は14.7%と顕著に上昇した。

出典:平成30年版 犯罪白書 | 法務省

 

こちらは平成20年と平成29年における検挙人員中に占める高齢者の割合を比較したものとなっていますが、

平成29年…65〜69歳 = 6.8%、70歳以上 = 14.7%
検挙人員総数における高齢者の割合 = 21.5%

ということがわかります。

 

そのため、選択肢②「刑法犯による検挙人員中に占める 65 歳以上の者の比率は、約 10 %である」は正しくは約20%であり、不適切な記述といえます。

 

今回の問題は誤っているものを解答するため、こちらの選択肢が正当となりますね。

 

③ 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率を男女別で比較した場合、男性よりも女性の方が大きい

出典:平成30年版 犯罪白書 第7編 第3章 第1節 2

 

上の図は、刑法犯の検挙人員に占める年齢層別の比率について、全体と女性にわけて示したものになります。

 

少々回りくどくなってしまいますが、以下のことが読み取れますね。

総数 65〜69歳=147.4、70歳以上=125.4
女性 65〜69歳=  75.2、70歳以上=  77.2

 

人口比は10万にあたりの検挙された人員を示しているため、65〜69歳では大体10万いたら147人程度検挙されていることがわかります。

 

そのうち、女性は大体10万中の75人であり、総数の半分を越えていると判断することができます。

 

70歳以上に関しても同様に女性の比率が総数の半分を上回っていますね。

 

そのため、選択肢③「刑法犯による検挙人員中に占める 65 歳以上の者の比率を男女別で比較した場合、男性よりも女性の方が大きい」は正しい記述であり、問題の解答としては不適切になります。

 

④ 窃盗による検挙人員の人口に占める比率を、20歳以上65歳未満と65歳以上とで比較した場合、後者の方が大きい

出典:平成30年版 犯罪白書 第7編 第3章 第1節 4

 

こちらの図は、罪名ごとの検挙人員の年齢層別人口比をあらわしています。

 

④の窃盗をみてみると、20〜64歳までの人口比は平成30年には82.2であるのに対して、65〜69歳は86.470歳以上は90.7といずれも高い割合を示しています。

 

そのため、選択肢④「窃盗による検挙人員の人口に占める比率を、20 歳以上 65 歳未満と65 歳以上とで比較した場合、後者の方が大きい」は正しい記述であり、問題の解答としては不適切になります。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問49は、高齢者の犯罪に関する問題でした❗️

 

今回のポイントは以下のとおりです。

 

  • 刑法犯のうち約20%は高齢者が占めている
  • 高齢者犯罪では、窃盗の割合が最も高く高齢女性の犯罪の8割〜9割を占めている

 

また、高齢者犯罪の背景要因として、高齢化が進んだこと高齢者の経済状況の要因など、社会的な問題が大きく影響していること、再犯率や再犯までの期間が短いこともおさえておく必要があります。