公認心理師資格試験 過去問解説 問50 精神保健福祉法「措置入院」
- 2021.06.19
- 資格試験
- 保健医療領域, 第3回公認心理師試験, 精神保健福祉法

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- 1. 【問50】精神保健福祉法「措置入院」
- 2. 選択肢の解説
- 2.1. ① 裁判官は、精神障害者又はその疑いのある被告に無罪又は執行猶予判決を言い渡したときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
- 2.2. ② 警察官は、精神障害者のために自傷他害のおそれがあると認められる者を発見したときは、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければいけない。
- 2.3. ③ 保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害又はその疑いのある者であることを知ったときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
- 2.4. ④ 矯正施設の長は、精神障害者又はその疑いのある者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめその収容者の帰住地の都道府県知事に通報しなければならない。
- 3. まとめ
【問50】精神保健福祉法「措置入院」
問50 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉について、誤っているものを1つ選べ。
① 裁判官は、精神障害者又はその疑いのある被告に無罪又は執行猶予判決を言い渡したときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
② 警察官は、精神障害者のために自傷他害のおそれがあると認められる者を発見したときは、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければいけない。
③ 保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害又はその疑いのある者であることを知ったときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
④ 矯正施設の長は、精神障害者又はその疑いのある者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめその収容者の帰住地の都道府県知事に通報しなければならない。
① 裁判官は、精神障害者又はその疑いのある被告に無罪又は執行猶予判決を言い渡したときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない
となります。
今回の問題では、精神保健福祉法のなかでも『措置入院』に際する通報に関連する項目からの出題となっています。
措置入院
第二十九条
都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。
出典:精神保健福祉法 第二十九条
措置入院とは、精神保健福祉法の第29条に規定されている精神障害者の入院形態のひとつで、
- 入院させなければ自傷他害の可能性がある
- 精神障害の症状により入院の同意が得られない
場合に、都道府県知事の権限と責任によって強制的(本人の同意が得られなくとも)に精神科病院に入院させることをいいます。
といっても闇雲に入院させるわけではなく、精神保健指定医2名以上が診察を行い、“精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めること(精神保健福祉法 第二十九条の二)”という診察結果が一致した場合に、措置入院が決定となります。
この精神保健指定医による診察のことを措置診察と呼びます。
措置入院までの手続きは以下の通りとなっています。
選択肢の解説
今回の問題の選択肢はいずれも「措置入院に関する通報」の条文から抜粋して出題されています。
精神保健福祉法における通報に関する条文は以下の通りです。
- 22条 一般
- 23条 警察官
- 24条 検察官
- 25条 保護観察所長
- 26条 矯正施設長
- 26条2 精神科病院管理者
- 26条3 医療観察法の通院処遇者
① 裁判官は、精神障害者又はその疑いのある被告に無罪又は執行猶予判決を言い渡したときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
先ほど確認したように、精神保健福祉法の措置入院に際した通報に関する条文には、裁判官についての規定はありません。
今回の選択肢と近しい内容としては精神保健福祉法第24条の検察官に関する条文があります。
第二十四条
検察官は、精神障害者又はその疑いのある被疑者又は被告人について、不起訴処分をしたとき、又は裁判(懲役若しくは禁錮の刑を言い渡し、その刑の全部の執行猶予の言渡しをせず、又は拘留の刑を言い渡す裁判を除く。)が確定したときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。ただし、当該不起訴処分をされ、又は裁判を受けた者について、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号)第三十三条第一項の申立てをしたときは、この限りでない。
出典:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律|e-Gov法令検索
検察官は精神障害あるいはその疑いがある被疑者または被告人について、不起訴処分をしたとき、裁判が確定した際には都道府県知事に通報する義務があります。
以上のことから、選択肢①「裁判官は、精神障害者又はその疑いのある被告に無罪又は執行猶予判決を言い渡したときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない」の記載は、裁判官に関する記載はなく不適切といえるため、問題の解答となります。
② 警察官は、精神障害者のために自傷他害のおそれがあると認められる者を発見したときは、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければいけない。
第二十三条
警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。
精神保健福祉法第23条は警察官による措置入院の際の通報に関する条文となっています。
通称、23条通報とも呼ばれていますね。
警察官は精神障害の症状によって自傷他害のおそれがある者を発見した場合、保健所長⇨都道府県知事に通報する義務があります。
詳しくはこちらのガイドラインも参考にしてみるといいでしょう。
以上のことから、選択肢②「 警察官は、精神障害者のために自傷他害のおそれがあると認められる者を発見したときは、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければいけない」の記載は正しい説明といえるため、解答としては不適切となります。
③ 保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害又はその疑いのある者であることを知ったときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
第二十五条
保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害者又はその疑いのある者であることを知つたときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
出典:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律|e-Gov法令検索
精神保健福祉法第25条は保護観察所長による措置入院の際の通報に関する条文となっています。
保護観察所長の役割としては、保護観察となっている者が、精神障害あるいはその疑いがあると判明した時点で、都道府県知事に通報することが求められていることがわかります。
そのため、選択肢③「 保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害又はその疑いのある者であることを知ったときは、その旨を都道府県知事に通報しなければならない」の記載は正しい説明といえるため、解答としては不適切となります。
④ 矯正施設の長は、精神障害者又はその疑いのある者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめその収容者の帰住地の都道府県知事に通報しなければならない。
第二十六条
矯正施設(拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院をいう。以下同じ。)の長は、精神障害者又はその疑のある収容者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめ、左の事項を本人の帰住地(帰住地がない場合は当該矯正施設の所在地)の都道府県知事に通報しなければならない。
一 本人の帰住地、氏名、性別及び生年月日
二 症状の概要
三 釈放、退院又は退所の年月日
四 引取人の住所及び氏名出典:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律|e-Gov法令検索
精神保健福祉法第26条は矯正施設の長による措置入院の際の通報に関する条文となっています。
矯正施設(拘置所・刑務所・少年刑務所・少年院・少年鑑別所・婦人補導院)の長の役割として、精神障害あるいはその疑いがあるとされている者が退所・退院する際には、以下の項目を都道府県知事に通報することが求められています。
- 本人の帰住地、氏名、性別及び生年月日
- 症状の概要
- 釈放、退院又は退所の年月日
- 引取人の住所及び氏名
そのため、選択肢④「矯正施設の長は、精神障害者又はその疑いのある者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめその収容者の帰住地の都道府県知事に通報しなければならない」の記載は正しい説明といえるため、解答としては不適切となります。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問50は、精神保健福祉法「措置入院」に関する問題でした❗️
措置入院 = 精神保健福祉法の第29条に規定されている精神障害者の入院形態のひとつで、
- 入院させなければ自傷他害の可能性がある
- 精神障害の症状により入院の同意が得られない
場合に、都道府県知事の権限と責任によって強制的(本人の同意が得られなくとも)に精神科病院に入院させることをいいます。
措置入院までの流れは以下の通りです。
精神保健福祉法における通報に関する条文は以下の通りです。
- 22条 一般
- 23条 警察官
- 24条 検察官
- 25条 保護観察所長
- 26条 矯正施設長
- 26条2 精神科病院管理者
- 26条3 医療観察法の通院処遇者
基本的には、都道府県知事への通報となっています。
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