公認心理師資格試験 過去問解説 問16 Ebbinghausの文章完成法

公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問16は、H. Ebbinghaus〈エビングハウス〉が文章完成法を開発した当初、何を測定しようとしたのかを問う問題です。

正答は④「知的統合能力」です。

この問題のポイントは、現在の文章完成法〈SCT〉の用途と、Ebbinghausが最初に用いたときの目的を分けて考えることです。

問16の正答は④「知的統合能力」

選択肢は次の5つです。

  • ① 性格
  • ② 病態
  • ③ 対人知覚
  • ④ 知的統合能力
  • ⑤ 欲求不満耐性

Ebbinghausが文章完成法を開発した際に測定しようとした対象として、最も適切なのは④ 知的統合能力です。

Ebbinghausの文章完成法は、もともと知的能力をみるための方法だった

Ebbinghausは記憶研究でよく知られる心理学者ですが、19世紀末には児童の知的能力を調べるために、文章の一部を補って完成させる課題を用いました。

歴史的な文献では、Ebbinghausのcompletion testは児童のmental abilities〈知的・精神的能力〉を評価するための初期の検査として説明されています。

公認心理師試験では、この当初の目的を「知的統合能力」として問うています。

ここでいう知的統合能力は、文章の文脈を読み取り、欠けている部分を補いながら、全体として意味の通る内容を構成するような知的働きを指すものとして理解するとよいでしょう。

重要なのは、「知的統合能力」という名称の現代的な独立尺度がある、と覚えることではありません。この問題では、Ebbinghausが文章完成課題を知的能力の研究・測定に用いたという歴史を押さえることが中心です。

現在のSCTとの違いが最大のひっかけ

現在、文章完成法〈Sentence Completion Test; SCT〉は、未完成の文章を提示し、その続きを自由に書いてもらう方法として知られています。

臨床心理学では、回答内容からその人の考え方、感情、対人関係、自己像などを理解するための投映法の一つとして用いられることがあります。

そのため、「文章完成法=性格検査」と覚えていると①を選びたくなります。

しかし、本問は「Ebbinghausが文章完成法を開発した際に」と時点を限定しています。

文章完成という方法は、その後パーソナリティ理解へ応用・発展していきましたが、Ebbinghausの当初の目的は知的能力の測定でした。

①「性格」が誤りの理由

性格は、現在のSCTを考えると非常に迷いやすい選択肢です。

現在の文章完成法では、回答された内容からパーソナリティを理解する目的で用いられることがあります。

しかし、これはEbbinghausが最初に文章完成課題を用いた目的とは異なります。

したがって、本問の「開発した際」という条件では①は正答ではありません。

②「病態」が誤りの理由

文章完成法は臨床場面で用いられることがあり、回答から心理状態を理解するための情報が得られる場合があります。

しかし、SCTそのものが特定の疾患や病態を直接診断する検査というわけではなく、ましてEbbinghausが当初測定しようとした対象でもありません。

したがって②は正答ではありません。

③「対人知覚」が誤りの理由

現在のSCTでは、「父」「母」「友人」「他者」などに関する文章への反応から、対人関係についての考え方や態度を理解することがあります。

その意味では対人関係に関する情報が得られる場合がありますが、Ebbinghausが文章完成法を開発した当初の測定対象ではありません。

したがって③は正答ではありません。

④「知的統合能力」が正しい理由

Ebbinghausの文章完成課題は、欠けた文章を文脈に沿って補い、意味のある全体へまとめる課題でした。

このような課題を通して児童の知的能力をみようとした歴史があり、公認心理師試験ではその対象を知的統合能力としています。

したがって④が正答です。

⑤「欲求不満耐性」が誤りの理由

欲求不満〈frustration〉への反応と関係が深い心理検査としては、S. RosenzweigのP-F Study〈絵画欲求不満テスト〉が代表的です。

P-F Studyでは、欲求不満を生じさせる対人場面の絵を提示し、それに対する反応を通して欲求不満場面での反応傾向を検討します。

これはEbbinghausの文章完成法の開発目的とは異なるため、⑤は正答ではありません。

5つの選択肢を整理する

選択肢 関連する理解 本問での判断
① 性格 後に発展したSCTのパーソナリティ理解では重要 ×
② 病態 臨床情報の一部は得られ得るが、直接の病態診断や当初の目的ではない ×
③ 対人知覚 SCT回答に対人関係テーマが表れることはある ×
④ 知的統合能力 Ebbinghausが当初、文章完成課題でみようとした知的能力
⑤ 欲求不満耐性 欲求不満場面への反応はP-F Studyとの関連が深い ×

試験対策:「誰が・いつ・何のために」を分けて覚える

心理検査の歴史問題では、現在の使われ方だけを覚えていると誤答しやすくなります。

  • Ebbinghausの初期の文章完成課題 → 知的能力・知的統合能力
  • その後のSCT → 投映法としてパーソナリティ理解に利用
  • RosenzweigのP-F Study → 欲求不満場面への反応

このように、検査名だけではなく開発者・開発時の目的・現在の用途を分けて整理すると覚えやすくなります。

まとめ

  • 第5回公認心理師試験・午前問16の正答は④ 知的統合能力
  • Ebbinghausは文章完成課題を児童の知的能力をみるために用いた
  • 公認心理師試験では、その当初の測定対象を「知的統合能力」として問うている
  • 現在のSCTは投映法としてパーソナリティ理解に利用されることがあるため、①「性格」はひっかけになりやすい
  • SCTは特定の病態を直接診断する検査ではない
  • 欲求不満場面への反応はRosenzweigのP-F Studyと関連が深い
  • 「開発時の目的」と「現在の用途」を分けて覚えることが重要

参考資料

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