公認理師資格試験 過去問解説 問13 相互依存性理論

公認理師資格試験 過去問解説 問13 相互依存性理論

第5回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問13 コストに対する報酬の比が個人の期待である比較水準を上回る場合 に当事者はその関係に満足し、一方、別の他者との関係におけるコストと報酬の比である選択比較水準が比較水準を上回る場合には、その関係 に移行すると考える理論に該当するものを 1 つ選べ。

① バランス理論

② 社会的浸透理論

③ 社会的比較理論

④ 相互依存性理論

⑤ 認知的不協和理論

出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ④ 相互依存性理論

相互依存性理論

相互依存性理論は、Kelley & Thibaut(1978)による理論です。

相互依存性理論では、個人間の利得についての相互依存性のパターンを分析し、人々が主観的に利得構造をどのように変換しているかを考察している理論である。

出典:清水・藤原(2015). 道徳の起源に関する理論的研究 : 動学的相互依存性理論と制度分析アプローチによる考察, 関西学院大学社会学部紀要, 120, 181-196.

この理論では、対人面での相互依存的な関係(二者間でお互いに影響し合う関係)において、利益構造対人関係における相互作用の結果うまれたもの(=成果)は、相互作用で生じたコストと報酬の差(個人が利益と考えるもの=比較水準)によって決まるとしています。

比較水準は「個人が利益と考えているもの」であるため、「個人の期待」と同義といえます。

問題文にあるように、得られる報酬からコストを減じたものが、個人の比較水準を上回る場合は、当事者はその相互依存的な関係に満足感を示し、比較水準を下回る場合は、満足いく関係に移行するような動きをするといわれています。

よって、選択肢④「相互依存性理論」が本問題の正答といえます。

選択肢の解説

バランス理論

バランス理論は、Heiderによって提唱された対人関係に関連する理論です。

自己(p)、他者(o)、事物(x)という三者の関係性を扱うため、別名p-o-x理論ともいわれています。

この理論では、人間はバランス状態を好む傾向があり、もしインバランス(imbalance)が存在したならば、不快な緊張状態に陥り、インバランス解消とバランス追求の力が生ずると仮定する。バランスは、pとoとxの相互の関係の符号(正、負)によって定義され、関係には心情関係(sentiment relation)と単位関係(unit relation)がある。

出典:心理学辞典|有斐閣

「自己p」「他者o」「事物x」の三者関係をひとつのまとまりとして捉え、三者間のそれぞれ正負(プラスマイナス)の関係で表します。

Heiderによれば、この三者関係のなかで、すべてが正の関係、あるいは、二つが負でひとつが正という関係性(=記号の積が正となるであるとき、バランスが取れているとしました。

バランス理論では、三者関係でインバランスな状態(すなわち、記号の積が負)のときは、どれかひとつでも関係性が改善(負から正)することによって、インバランスな状態が解消されるとしています。

社会的浸透理論

社会的浸透理論は、Altman & Taylor(1973)によって提唱された対人関係の理論です。

個人のパーソナリティは、欲求や感情などの中心の層から、言語的行動などの周辺の層にわたり同心円的に構成されているという。二者が関係を進展させることを、両者の相互作用がパーソナリティの周辺の層から中心の層へと浸み込んでいくこと、つまり相互に相手の中心に向かって浸透していく過程として捉えている。

出典:心理学辞典|有斐閣

社会的浸透理論でも、二者間の関係性の進展は、相互作用で生じた報酬とコストの影響を受けるとしており、コストに対する報酬の比が大きいと関係が進展し、反対に小さいと関係が衰退していくと論じています。

社会的比較理論

社会的比較理論は、 Festinger(1954)によって提唱された理論です。

重要なキーワードは、社会的比較で、自分と他人とを比較することで、自分を正確に評価したり、考え方の正しさについて確認することを指します。

社会や集団で効率的に行動するためには、この社会比較による正確な自己評価を行う必要があります。

認知的不協和理論

認知的不協和理論は、Festinger(1957)によって提唱された理論です。

主に認知的な動機づけに関連する理論で、簡単に説明すると、個人の中でなにかひとつの事象に対して矛盾するような考えや行動(認知)が生じた際にあらわれる不快感(不協和)について説明しています。

この不協和は不快であるため、不協和が生じたときは、不快を減らしたり回避するような行動を取るようになります。

認知的不協和理論は依存症などのメカニズムで用いられることも多いです。