公認理師資格試験 過去問解説 問15 ADHD児のアセスメント

公認理師資格試験 過去問解説 問15 ADHD児のアセスメント

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第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問15 注意欠如多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉の児童へのアセスメントについて、最も適切なものを 1 つ選べ。

① 親族についての情報を重視しない。

②  1 歳前の行動特性が障害の根拠となる。

③ 運動能力障害の有無が判断の決め手となる。

④ 家族内での様子から全般的な行動特性を把握する。

⑤ 保育園、幼稚園などに入園してからの適応状態に注目する。

出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ⑤ 保育園、幼稚園などに入園してからの適応状態に注目する

選択肢の解説

①親族についての情報を重視しない

ADHDの疫学を確認してみましょう。

家族研究からは、患児の第一度親族はコントロールに比べてADHDのリスクが5倍になることが示されている。双生児研究では発病一致率は一卵性で 50~80%であり、二卵性で 30~40%で遺伝率は76%と推定されている。

出典:村上佳津美(2017). 注意欠如・多動症(ADHD)特性の理解 Jpn J Psychosom Med, 57, 27-38.

このように、ADHDのアセスメントでは、親族にADHDの既往があるかどうかを確認すると重要な情報が得られることがわかります。

よって、選択肢①「親族についての情報を重視しない」は不適切な記述といえます。

②1 歳前の行動特性が障害の根拠となる

自閉スペクトラム症(ASD)では、1〜2歳の幼児期前期に行動的な特性が目立つようになるとされており、乳幼児期からのアセスメントが可能とされています。

一方で、ADHDでは、幼児期の後半(3〜6歳)あるいは学童期(小学校)にならないと行動的な特性が顕著にならないとされています。

国立精神・神経医療研究センターによれば、”注意欠陥多動性障害は「1歳6か月での発見は困難」””注意欠陥多動性障害や学習障害は「学校に上がってから治療のニーズがわかる」”とされています。

続いて、文部科学省によるADHDの定義を見てみましょう。

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
 また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

出典:ADHDの定義と判断基準(試案)|文部科学省

定義をみると、概ね7歳以前の行動特性がADHDの根拠となることがわかります。

ちなみにDSM-5では、12歳以前に行動特性が示されていることが診断基準に含まれています。

以上のことから、選択肢②「1 歳前の行動特性が障害の根拠となる」は最も適切とはいえません。

③運動能力障害の有無が判断の決め手となる

ADHDの診断基準では、「不注意」または「多動性ー衝動性」のいずれか、あるいは両方ともが持続的に存在していることが、判断の決め手となります。

運動能力障害の有無は含まれません。

ちなみに、運動能力障害の定義によりますが、例えばDSM-5の同じ神経発達症に含まれる運動障害群には以下のものが含まれています。

  • 発達性協調運動障害
  • 常同運動障害
  • チック障害群(トゥレット障害など)

ADHDではチック障害群に含まれるトゥレット障害の併存率の高さが指摘されているため、チック症状の有無は注目すべきポイントになります。

よって、選択肢③「運動能力障害の有無が判断の決め手となる」は不適切な記述となります。

④家族内での様子から全般的な行動特性を把握する

ADHDの特性は、児童であれば、家庭・学校(幼稚園や保育園も含む)どちらかではなく、両方ともから観察することが重要になります。

特に、学校での学習の困難さからADHD特性が明らかとなる場合が多いです。

よって、選択肢④「家族内での様子から全般的な行動特性を把握する」は不適切な記述といえます。

⑤保育園、幼稚園などに入園してからの適応状態に注目する

ADHDの診断基準には、ADHD特性(不注意・多動性-衝動性)による機能障害(不適応)の有無が重要な判断の基準となります。

特にADHDでは、3歳〜12歳の間の行動的な特性が障害の根拠となるため、保育園や幼稚園での適応状態は早期発見のために非常に重要となります。

したがって、選択肢⑤「保育園、幼稚園などに入園してからの適応状態に注目する」は適切な記述といえます。