第3回公認心理師試験・午後問81は、複数の観測変数から個体を識別しやすい重みつき合計得点を作る方法を問う心理統計の問題です。
正答は③「主成分分析」です。
この問題の決め手は、「観測変数を重みづけして合成する」「個体間のばらつきがよく表れる得点を作る」という2点です。
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【問81】主成分分析
問81 個体を最もよく識別できるように、観測変数の重みつき合計得点を求める方法として、最も適切なものを1つ選べ。
① 因子分析
② 重回帰分析
③ 主成分分析
④ 正準相関分析
⑤ クラスター分析
正答:③ 主成分分析
第3回公認心理師試験の午後問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式ページから確認できます。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター
なぜ③「主成分分析」なのか
主成分分析(principal component analysis:PCA)は、複数の観測変数を重みづけして足し合わせ、新しい合成変数である「主成分」へ要約する方法です。
たとえば、ある人について5つの量的な測定値があるとします。主成分分析では、それぞれに重みをつけて、
第1主成分 = a₁×変数1 + a₂×変数2 + … + a₅×変数5
のような主成分得点を作ります。
第1主成分は、一定の制約のもとで、その主成分得点の分散が最大になるように重みを決めるのが基本です。つまり、個体ごとの得点ができるだけ広く散らばる方向を見つけるため、設問の「個体を最もよく識別できるように」という表現につながります。
主成分分析の中心的な目的は、単に個体を分類することではなく、多くの変数が持つ情報を、より少数の主成分へ要約することです。多変量データの次元削減・情報の要約として理解するとよいでしょう。
第2主成分以降はどうなる?
第1主成分だけでは元のデータの情報を十分に表せない場合、第2主成分、第3主成分……と続けて主成分を求めます。
標準的な主成分分析では、第2主成分以降は、すでに得られた主成分と直交し、相関しないという条件のもとで、残されたばらつきをできるだけ大きく表す方向として求められます。
ここで注意したいのは、「無相関」と「統計的に独立」は同じ意味ではないことです。旧記事では主成分を「お互いに独立」と説明していましたが、試験対策としては「主成分同士は直交し、標準的なPCAでは無相関」と整理する方が正確です。
主成分分析でよく出てくる用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 主成分 | 元の観測変数を重みづけして作る新しい合成変数。 |
| 主成分得点 | 各個体について計算された主成分上の得点。 |
| 主成分負荷量 | 各観測変数と主成分との関係を解釈する手がかりとなる値。 |
| 固有値 | その主成分がどれだけ大きな分散を担っているかに関係する値。 |
| 寄与率 | 元データ全体のばらつきのうち、その主成分がどの程度を表しているかを示す割合。 |
| 累積寄与率 | 第1主成分から順に寄与率を合計した値。 |
試験対策では、まず「多くの変数を、情報をなるべく保ちながら少数の合成変数へ要約する」という中心概念を押さえてください。
① 因子分析との違い
主成分分析と最も混同しやすいのが因子分析です。
- 主成分分析:観測された複数の変数そのものを少数の主成分へ要約する
- 因子分析:観測変数の背後にある共通因子を想定し、その構造を検討する
国立・大学等の研究でも用いられる統計解説では、主成分分析は多変数を「要約」して新しい主成分にまとめる一方、因子分析は変数の背景にある「共通因子」を探索する方法として区別されています。
「観測変数から共通因子を探す」なら因子分析、「観測変数を重みづけして新しい合成得点へまとめる」なら主成分分析と整理すると区別しやすくなります。
ほかの選択肢が正答ではない理由
| 選択肢 | 主な目的 | この問題で違う理由 |
|---|---|---|
| ① 因子分析 | 観測変数の背後にある共通因子を検討する | 観測変数の重みつき合計得点そのものを作って情報を要約することが中心ではない。 |
| ② 重回帰分析 | 複数の説明変数から1つの目的変数を予測・説明する | この設問には予測対象となる目的変数が設定されていない。 |
| ③ 主成分分析 | 複数の観測変数を重みづけして合成し、少数の主成分へ要約する | 正答。 |
| ④ 正準相関分析 | 2組の変数群どうしの関連を、線形結合を用いて検討する | 1つの変数群を少数の主成分へ要約する設問ではない。 |
| ⑤ クラスター分析 | 類似性に基づいて個体や対象をグループ化する | 個体をグループへ分類することと、重みつき合計得点を作ることは別の操作。 |
「個体を識別する」=クラスター分析ではない
設問の「個体を最もよく識別できる」という言葉を見ると、⑤クラスター分析を選びたくなるかもしれません。
しかし、クラスター分析が行うのは、個体間の類似度・距離などをもとに似た個体をまとめてグループ化することです。
一方、この問題では「観測変数の重みつき合計得点を求める」と明記されています。ここが決定的な手がかりです。
重みつき合計で新しい得点を作る → 主成分分析
と押さえておきましょう。
旧記事から修正した重要ポイント
主成分分析では、観測変数を「原因」、主成分を「結果」と捉える必要はありません。PCAは回帰分析のように原因―結果や予測対象を設定する方法ではなく、観測された多変量データを線形結合によって要約する方法です。
また、「観測変数の共通点を抽出する」という表現は因子分析との混同を招きます。主成分分析では、元の変数が持つばらつきを効率よく表す新しい軸・合成変数を作る、と理解する方が適切です。
試験対策ではここまで覚える
問81では次の対応を覚えておけば十分です。
主成分分析 = 複数の観測変数を重みづけして、ばらつきをよく表す合成得点を作る → 次元削減・情報の要約
あわせて、
- 因子分析=背後の共通因子
- 重回帰分析=複数の説明変数から1つの目的変数を予測
- 正準相関分析=2組の変数群の関連
- クラスター分析=似た個体をグループ化
と整理しておくと、類題にも対応しやすくなります。
まとめ
第3回公認心理師試験・午後問81の正答は、③ 主成分分析です。
主成分分析は、複数の観測変数を重みづけして線形結合し、元のデータのばらつきをよく表す少数の主成分へ要約する方法です。
この問題では、「観測変数の重みつき合計得点」という表現が最大の手がかりです。さらに、「個体を識別しやすくする」という記述は、主成分得点の分散を大きくする方向を求めるというPCAの考え方と対応します。



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