公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問13|知能と知能検査

公認心理師過去問 第6回13 公認心理師試験
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第6回公認心理師試験・午前問13は、知能の加齢変化と知能検査の特徴を横断して問う問題です。

正答はです。

この問題では、流動性知能と結晶性知能、ウェクスラー式知能検査、知的障害におけるIQの考え方、田中ビネー知能検査Vの算出方法を一つずつ整理する必要があります。名称だけを暗記するより、「何を測るのか」「どのように得点を解釈するのか」を理解すると選択肢を見分けやすくなります。

問題

知能に関する説明として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 結晶性知能は20歳台で最も高まる。
  2. 流動性知能は40歳台で最も高まる。
  3. ウェクスラー式知能検査は、個人内差が評価できる。
  4. 知能指数〈IQ〉の平均−1SDが、知的障害の目安となる。
  5. 田中ビネー知能検査Vは、対象とする全ての年齢において、精神年齢〈MA〉を用いて知能指数〈IQ〉を算出する。

正答:③

まず「流動性知能」と「結晶性知能」を区別する

知能の加齢変化を考えるときに重要なのが、Cattellらによって整理された流動性知能〈fluid intelligence〉結晶性知能〈crystallized intelligence〉です。

  • 流動性知能:新しい問題を推理する、未知の状況に対応する、素早く情報を処理するなど、過去の学習内容に直接依存しにくい能力。
  • 結晶性知能:語彙、一般知識、経験を通して獲得した知識や技能など、学習や文化的経験の蓄積に支えられる能力。

一般的には、処理速度や新規課題への推理など流動性知能と関係する能力は若年成人期以降に低下傾向を示しやすい一方、語彙や一般知識など結晶性知能に関係する能力は中年期以降も比較的保たれ、長い期間にわたり伸びたり安定したりします。

ただし、実際の認知能力の発達軌跡は領域によって異なり、全ての能力が同じ年齢で一斉にピークを迎えるわけではありません。試験では「20歳台で最も高まる」「40歳台で最も高まる」のように、特定年齢に固定した断定に注意します。

① 結晶性知能は20歳台で最も高まる

これは不適切です。

結晶性知能は、教育や生活経験を通じて蓄積される知識・技能と関連するため、20歳台で一律に最高となるとは言えません。

語彙や一般知識などは成人後も蓄積され、中年期から高齢期にかけても比較的保たれやすいことが知られています。

したがって、「20歳台で最も高まる」と固定的に断定する選択肢は不適切です。

② 流動性知能は40歳台で最も高まる

これは不適切です。

流動性知能は、新規問題の解決、推理、処理速度、ワーキングメモリーなどと関連します。一般には若年成人期で高く、その後は加齢に伴い徐々に低下しやすい能力として説明されます。

そのため、「40歳台で最も高まる」という説明は典型的な加齢変化と一致しません。

ここでも、特定の年齢を絶対的なピークとして覚えるより、流動性は比較的早く低下しやすく、結晶性は比較的長く維持されやすいという対比を押さえる方が安全です。

③ ウェクスラー式知能検査は、個人内差が評価できる

適切であり、本問の正答です。

ウェクスラー式知能検査では、全検査IQだけでなく、複数の指標得点や下位検査の評価点を得ることができます。

たとえばWAIS-IVでは、全検査IQ〈FSIQ〉に加えて、言語理解〈VCI〉、知覚推理〈PRI〉、ワーキングメモリー〈WMI〉、処理速度〈PSI〉などの指標を算出します。

さらに、日本文化科学社のWAIS-IV換算アシスタントでは、合成得点と評価点の換算に加えて、ディスクレパンシー比較、SとWの判定、プロセス分析などを行えることが示されています。

このように、同じ人の中で認知機能の相対的な強みや弱みを検討できるため、「個人内差が評価できる」という③が最も適切です。

ただし、指標間や下位検査間の差があるだけで直ちに特定の障害を診断できるわけではありません。プロフィールは、行動観察、生活歴、学習歴、他の検査所見などと統合して解釈する必要があります。

WAIS-IVの下位検査については、第5回午前問17「WAIS-IVの下位検査」も合わせて確認すると整理しやすくなります。

④ IQの平均−1SDが、知的障害の目安となる

これは不適切です。

ウェクスラー式知能検査などの偏差IQでは、平均は100、標準偏差〈SD〉は一般に15です。そのため平均−1SDは約85です。

しかし、IQ85前後を知的障害の目安とするのは適切ではありません。知的機能の有意な制限については、一般にIQ70前後から75程度までが一つの参考範囲として扱われます。

さらに重要なのは、知的障害はIQだけで判断しないことです。AAIDDは、知的機能だけでなく、概念的・社会的・実用的スキルからなる適応行動にも有意な制限があること、発達期に生じることを重視しています。

したがって、試験では「IQが何点以下なら自動的に知的障害」と機械的に覚えないようにします。

⑤ 田中ビネー知能検査Vは、全ての年齢で精神年齢を用いてIQを算出する

これは不適切です。

田中ビネー知能検査Vは、年齢によって得点の扱いが異なります。

国立障害者リハビリテーションセンターの資料では、14歳未満では精神年齢〈MA〉を算出できる一方、14歳以上では偏差知能指数〈DIQ〉を算出し、精神年齢は原則として算出しないと説明されています。

したがって、「対象とする全ての年齢で精神年齢を用いてIQを算出する」という⑤は誤りです。

田中ビネー知能検査と知的能力の評価については、第3回問72「田中ビネー知能検査・知的能力障害」も関連します。

精神年齢〈MA〉と偏差IQは考え方が違う

古典的な比率IQは、精神年齢〈MA〉と生活年齢〈CA〉の比からIQを求める考え方です。

一方、ウェクスラー式知能検査で用いられる偏差IQは、同年齢集団の中で得点がどの位置にあるかを標準化して示します。

このため、ウェクスラー式検査のIQを「精神年齢○歳」と単純に置き換えるのは適切ではありません。

ウェクスラー式では「全体のIQ」だけを見ない

ウェクスラー式知能検査では、FSIQは重要な指標ですが、それだけで認知機能の全体像が決まるわけではありません。

指標得点や下位検査、課題中の反応、時間の使い方、誤答の特徴などを合わせて検討することで、本人の認知的特徴をより具体的に理解できます。

ただし、個人内差の解釈には測定誤差、統計的な出現頻度、検査時の体調や動機づけなども関係します。「差がある=障害特性が確定した」と短絡しないことが重要です。

試験での見分け方

論点押さえるポイント
結晶性知能知識・語彙・経験に支えられ、比較的長く維持されやすい
流動性知能新規問題解決・推理・処理速度などと関係し、比較的早く低下しやすい
ウェクスラー式FSIQだけでなく指標・下位検査から個人内差を検討できる
知的障害平均−1SDではない。知的機能と適応行動の両方をみる
田中ビネーV全ての年齢で精神年齢を使うわけではない

この問題でありがちな混同

  • 「結晶性=若い頃に完成する」と考える。
  • 流動性知能のピークを40歳台と覚える。
  • ウェクスラー式は全検査IQだけを見る検査だと考える。
  • IQ85前後を知的障害の基準と考える。
  • 田中ビネーは全年齢で精神年齢を使うと考える。
  • IQだけで知的障害を診断できると考える。

まとめ

第6回午前問13の正答はです。

  • 結晶性知能は20歳台で一律に最高になるわけではない。
  • 流動性知能は40歳台で最高になるという説明は不適切。
  • ウェクスラー式知能検査では、指標得点や下位検査を用いて個人内差を検討できる。
  • 知的障害は平均−1SDを目安とするものではなく、適応行動も重要。
  • 田中ビネー知能検査Vは14歳未満と14歳以上で得点の扱いが異なる。

参考資料

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