第6回公認心理師試験・午前問12は、社会心理学における原因帰属〈causal attribution〉と自己奉仕バイアス〈self-serving bias〉を問う問題です。
正答は②です。
この問題では、「自分に都合よく考える」という日常語だけで覚えるのではなく、成功を内的要因へ、失敗を外的要因へ帰属しやすいという自己奉仕バイアスの典型的パターンを押さえることが重要です。
問題
良い出来事は自身の内的属性に、逆に悪い出来事は自身の置かれた外的状況に、原因帰属する傾向を表す概念として、適切なものを1つ選べ。
- ポジティブ幻想
- 自己奉仕バイアス
- 根本的な帰属の誤り
- 自己中心性バイアス
- インパクト・バイアス
正答:②
まず「原因帰属」を理解する
原因帰属とは、ある出来事や行動がなぜ起きたのかについて原因を推論する過程です。
試験では、まず原因を大きく内的要因と外的要因に分けると判断しやすくなります。
- 内的帰属:能力、努力、性格、態度、技能など、本人側の要因へ原因を求める。
- 外的帰属:課題の難しさ、運、周囲の環境、他者、偶然など、状況側の要因へ原因を求める。
たとえば試験に合格したとき「自分が努力したからだ」と考えるのは内的帰属です。不合格だったとき「問題が難しすぎた」「運が悪かった」と考えるのは外的帰属です。
自己奉仕バイアスとは
自己奉仕バイアス〈self-serving bias〉は、自分にとって望ましい結果を自分の能力・努力などの内的要因に帰属し、望ましくない結果を運・課題・環境などの外的要因に帰属しやすい傾向を指します。
典型的には次のように整理できます。
- 成功・良い結果 → 内的帰属:「自分の能力が高かった」「努力したから成功した」
- 失敗・悪い結果 → 外的帰属:「課題が難しすぎた」「環境が悪かった」「運が悪かった」
したがって、問題文の記述に最も合うのは②です。
なぜ自己奉仕バイアスが起こるのか
自己奉仕バイアスには、自己評価や自尊感情を保つ自己高揚的な動機が関係すると説明されることがあります。また、結果に関する期待や情報処理の違いから生じる可能性も議論されています。
ただし、すべての人が常に同じ方向の帰属をするわけではありません。文化、状況、成功・失敗の領域、本人の気分状態、出来事の重要度などによって傾向の強さは変わります。
したがって、試験用語として典型パターンを覚えつつ、実際の人間理解では普遍的・絶対的な法則として扱わないことが重要です。
① ポジティブ幻想
これは不適切です。
ポジティブ幻想〈positive illusions〉は、自分自身や将来、統制可能性などを現実より好意的に評価する傾向を広く指す概念です。
代表的には、非現実的に肯定的な自己評価、統制の幻想、非現実的楽観などが含まれます。
自己奉仕バイアスと重なる自己高揚的な側面はありますが、問題文のような「成功は内的、失敗は外的」という原因帰属パターンそのものを最も直接表す用語ではありません。
② 自己奉仕バイアス
適切であり、本問の正答です。
良い出来事を自分の能力・努力などに帰属し、悪い出来事を環境や運などへ帰属するという問題文は、自己奉仕バイアスの典型的な定義です。
③ 根本的な帰属の誤り
これは不適切です。
根本的な帰属の誤り〈fundamental attribution error〉は、他者の行動を説明するときに、状況要因を過小評価し、性格や態度などの内的・ dispositional な要因を過大評価しやすい傾向です。
たとえば、遅刻した人を見て、交通機関の事故や家庭事情を十分考慮せず「だらしない性格だからだ」と判断するような場合です。
自己奉仕バイアスが自分の成功・失敗の帰属を中心に扱うのに対し、根本的な帰属の誤りは他者の行動を内的要因で説明しすぎる点が試験上の大きな違いです。
④ 自己中心性バイアス
これは不適切です。
自己中心性バイアス〈egocentric bias〉は、自分の知識、経験、視点、感情などを基準にして、他者の視点や状況を推測してしまう認知的偏りです。
たとえば「自分が知っていることは相手も知っているはず」「自分が注目していることは周囲も強く注目しているはず」と判断してしまうような現象と関連します。
Ig Knowledgeでは、第3回問14「自己中心性バイアス」で、自己中心性とスポットライト効果の関係を扱っています。名称が似ていますが、自己奉仕バイアスと自己中心性バイアスは別の概念です。
⑤ インパクト・バイアス
これは不適切です。
インパクト・バイアス〈impact bias〉は、将来の出来事が自分の感情へ与える影響の強さや持続時間を実際以上に大きく予測しやすい傾向です。
たとえば「昇進できたらずっと幸せなはず」「試験に落ちたら長期間立ち直れないはず」と予測しても、実際の感情反応は予想より弱かったり短かったりすることがあります。
これは感情予測〈affective forecasting〉のバイアスであり、出来事の原因を内的・外的に帰属する自己奉仕バイアスとは異なります。
自己奉仕バイアスと根本的帰属の誤りを区別する
この2つは公認心理師試験で混同しやすい概念です。
| 概念 | 誰について判断するか | 典型的な偏り |
|---|---|---|
| 自己奉仕バイアス | 主に自分 | 成功→内的、失敗→外的 |
| 根本的な帰属の誤り | 主に他者 | 状況要因を軽視し、内的要因を重視しすぎる |
「自分に都合よく帰属する」のが自己奉仕バイアス、「他人の行動を性格のせいにしすぎる」のが根本的な帰属の誤り、と整理すると覚えやすくなります。
原因帰属は「内的/外的」だけではない
達成場面の帰属理論では、原因をさらに安定性〈stable / unstable〉や統制可能性〈controllable / uncontrollable〉などの次元で整理することがあります。
たとえば、能力は比較的内的・安定的、努力は内的で比較的統制可能、運は外的・不安定と整理できます。
この枠組みを知っておくと、自己奉仕バイアスを単なる「ポジティブ思考」としてではなく、出来事の原因をどの次元へ割り当てるかという帰属過程の偏りとして理解できます。
臨床場面での注意
自己奉仕バイアスは社会心理学の一般的傾向として研究されていますが、個人を評価するときに「失敗を環境のせいにしているから自己奉仕バイアスだ」と即断するのは適切ではありません。
実際に環境要因が大きい場合もありますし、逆に、自分では変えにくい出来事まで過度に自己責任として受け止める人もいます。
臨床では、帰属の内容だけでなく、その帰属がどのような事実に基づき、感情や行動、自己評価、将来予測にどのような影響を与えているかを具体的に確認する必要があります。
5つの概念を一気に整理する
| 概念 | 中心テーマ | 見分けるキーワード |
|---|---|---|
| ポジティブ幻想 | 自己・統制・未来を好意的に捉える | 優越性、統制の幻想、楽観 |
| 自己奉仕バイアス | 自分の成功・失敗の原因帰属 | 成功は自分、失敗は環境 |
| 根本的な帰属の誤り | 他者行動の原因帰属 | 状況を軽視し性格を重視 |
| 自己中心性バイアス | 自分の視点を基準に他者を推測 | 自分の知識・経験・視点 |
| インパクト・バイアス | 将来感情の予測 | 感情の強さ・持続を過大評価 |
試験での見分け方
- 原因帰属という語が出たら、内的/外的をまず確認する。
- 成功→内的、失敗→外的なら自己奉仕バイアス。
- 他人の行動を性格で説明しすぎるなら根本的な帰属の誤り。
- 自分の視点を他者にも当てはめるなら自己中心性バイアス。
- 未来の感情を大きく見積もるならインパクト・バイアス。
まとめ
第6回午前問12の正答は② 自己奉仕バイアスです。
自己奉仕バイアスは、成功を能力や努力などの内的要因に、失敗を運や環境などの外的要因に帰属しやすい傾向です。
試験では、ポジティブ幻想、根本的な帰属の誤り、自己中心性バイアス、インパクト・バイアスを、何についての偏りなのかという軸で整理すると見分けやすくなります。
参考資料
- 日本心理研修センター「第6回公認心理師試験」
- 第6回公認心理師試験 午前問題
- 第6回公認心理師試験 正答
- The Social Psychology of Biased Self-Assessment
- The attribution of success when using navigation aids
- Revisiting the relationship between attributional style and academic performance
- Egocentric Bias in Perspective Taking
- Cognitive determinants of affective forecasting errors
- The costs and benefits of positive illusions


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