第4回公認心理師試験・午前問57は、司法場面で用いられる認知面接〈Cognitive Interview:CI〉の基本技法を問う問題です。
正答は①・②です。
この問題では、認知面接を「詳しく質問して事実を詰める方法」と捉えると迷いやすくなります。認知面接の中心は、目撃者や被害者が記憶を検索しやすくなるように検索手がかりを増やし、自由な想起を支援することです。原型の認知面接では、文脈の心的再現、悉皆報告、異なる順序での想起、異なる視点での想起という4つの記憶検索方略が重視されます。
問題
司法場面における認知面接で、面接者が被面接者に対して求めることとして、適切なものを2つ選べ。
- 文脈の心的再現
- 視点を変えての想起
- 毎回同じ順序での想起
- 確信が持てる内容を選んで話すこと
- 話す内容に矛盾があればその都度説明すること
正答:①・②
認知面接とは
認知面接は、目撃者・被害者から出来事についての記憶をより十分に想起してもらうため、認知心理学の記憶研究を背景として開発された面接法です。Fisher、Geiselmanらによる原型の認知面接では、被面接者の記憶検索を助けるために複数の検索経路を用いることが重視されました。
重要なのは、認知面接が「供述が真実かどうかを見抜く技法」ではないことです。また、面接者が答えを教えたり、誘導的な質問で情報を作り出したりする方法でもありません。被面接者自身が保持している記憶へアクセスしやすくするための手続として理解します。
背景にある考え方|記憶は「検索手がかり」に左右される
記憶は、記銘された情報がそのまま自動的に再生されるわけではありません。想起時に利用できる手がかりによって、取り出しやすい情報が変わることがあります。
そこで認知面接では、出来事が起きたときの環境や感情を心的に再現したり、順序や視点を変えたりすることで、普段とは異なる検索手がかりを増やします。これは「忘れていた情報を無理に作る」のではなく、別の検索経路から思い出せる情報がないかを探るという発想です。
長期記憶の種類そのものを整理したい場合は、第6回午前問4「手続き記憶」も関連します。本問では記憶の分類よりも、すでに経験した出来事をどのような手がかりで検索するかが中心です。
原型の認知面接で押さえる4つの技法
| 技法 | 要点 |
|---|---|
| 文脈の心的再現 | 出来事が起きた場所、状況、感情、身体感覚などをできる範囲で心的に再現する |
| 悉皆報告〈report everything〉 | 重要かどうかを本人が選別しすぎず、思い出したことを幅広く報告する |
| 異なる順序での想起 | いつも同じ時系列だけでなく、逆順や異なる開始点などから想起する |
| 異なる視点での想起 | 出来事を別の視点から検索してみる |
本問の①と②は、この原型4技法にそのまま対応します。
① 文脈の心的再現
適切であり、本問の正答です。
文脈の心的再現〈context reinstatement〉では、出来事が起きたときの場所、周囲の様子、自分がどこにいたか、どのように感じていたかなどを、可能な範囲で思い浮かべます。
同じ出来事の記憶でも、当時の文脈に関連する手がかりが増えると、それまで出てこなかった情報へアクセスできることがあります。したがって、文脈を心的に再現することは認知面接の代表的技法です。
ただし、面接者が「きっと○○だったはず」と内容を補うのではありません。あくまで、被面接者自身の記憶検索を支援することが中心です。
② 視点を変えての想起
適切であり、本問の正答です。
原型の認知面接では、出来事を異なる視点から想起する〈change perspective〉ことも検索方略の一つとして用いられます。いつもの自分の視点だけでなく、別の位置や人物からならどのように見えたかを手がかりとして検索することで、別の情報が想起される可能性を探ります。
ここで注意したいのは、他者の気持ちや見た内容を推測して作ることが目的ではない点です。試験対策上は「視点を変える=原型CIの4技法」と押さえつつ、実際の面接では被面接者が知らない情報を推測させることと区別して理解する必要があります。
③ 毎回同じ順序での想起
これは誤りです。
認知面接では、むしろ異なる順序での想起〈change order〉が原型技法の一つです。
日常的に出来事を語るときは、最初から最後まで時間順に話すことが多くなります。しかし、同じ検索経路だけを繰り返すと、同じ情報だけが出てくることがあります。そこで、出来事の終わりから逆にたどる、途中の場面から始めるなど、検索順序を変えることで別の記憶手がかりを利用します。
したがって、「毎回同じ順序」と固定する③は、認知面接の考え方と逆です。
④ 確信が持てる内容を選んで話すこと
これは誤りです。
認知面接の原型技法には、悉皆報告〈report everything〉があります。被面接者が「これは些細だから関係ない」「自信がないから言わない方がよい」と自己選別しすぎると、本来は別の記憶を引き出す手がかりになる情報まで失われる可能性があります。
そのため、認知面接では、思い出したことを重要性だけで選別せず幅広く報告してもらうことが重視されます。
ただし、これは報告されたすべての内容を事実として確定するという意味ではありません。情報を広く報告してもらうことと、その情報の正確性を後から検討することは別の段階です。
⑤ 話す内容に矛盾があればその都度説明すること
これは誤りです。
原型の認知面接の4技法に、「矛盾が生じるたびに、その場で理由を説明させる」という手続は含まれていません。
認知面接では、まず被面接者が自由に記憶を検索し、できるだけ多くの情報を想起できるようにすることが重要です。想起の途中で逐一説明を求めることを中心にすると、記憶検索の流れよりも整合的な説明を作ることへ注意が向く可能性があります。
矛盾や不一致を無視してよいという意味ではありません。必要な確認は後から行えますが、矛盾説明の要求そのものが認知面接の中核技法ではないことが選択肢判断のポイントです。
原型CIとEnhanced Cognitive Interview〈ECI〉
認知面接は、その後、面接全体のコミュニケーションや被面接者に合わせた質問の組み立てを含む形へ発展しました。Enhanced Cognitive Interviewでは、原型4技法に加えて、面接者と被面接者のラポール、被面接者に主導権を持たせる工夫、集中した検索を助ける質問、被面接者の認知的処理に合わせた面接構造などが加えられています。
公認心理師試験では、まず原型4技法を確実に押さえることが優先です。そのうえで「認知面接=4つの記憶方略だけ」ではなく、実践上は面接全体の質も重視されてきたことを知っておくと理解が深まります。
認知面接と「司法面接」を同一視しない
司法領域では「司法面接」という語も使われますが、認知面接と完全に同じ概念ではありません。
認知面接は、主として目撃者・被害者の記憶検索を支援するために開発された技法です。一方、司法面接は、特に子どもなどから法的判断に利用し得る情報をできるだけ正確かつ心理的負担に配慮して聴取するための、より広い面接手続を指す文脈があります。
両者には自由報告や誘導回避など重なる考え方がありますが、「司法面接=認知面接の4技法」と短絡しないことが重要です。
試験での見分け方
| 選択肢 | 判断 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 文脈の心的再現 | ○ | 原型CIの代表技法 |
| 視点を変えての想起 | ○ | 原型CIの代表技法 |
| 毎回同じ順序で想起 | × | 異なる順序での想起が用いられる |
| 確信のある内容だけ話す | × | 悉皆報告と逆 |
| 矛盾のたびに説明を求める | × | 原型CIの中核技法ではない |
この問題でありがちな混同
- 「正確な供述が必要だから、自信のあることだけ話す」と考える。
- 時系列を崩すと混乱するため、常に同じ順序がよいと考える。
- 視点変更を、他者の記憶や感情を推測する作業だと考える。
- 認知面接を、供述の真偽判定や尋問の技法と考える。
- 認知面接と司法面接を完全に同義だと覚える。
まとめ
第4回午前問57の正答は①・②です。
- 認知面接は、記憶検索を支援するための面接法である。
- 原型CIの4技法は、文脈の心的再現、悉皆報告、異なる順序、異なる視点である。
- ①文脈の心的再現と②視点を変えての想起は適切。
- ③「毎回同じ順序」は、異なる順序で想起する技法と逆。
- ④「確信のある内容だけ」は、悉皆報告と逆。
- ⑤矛盾説明をその都度求めることは、認知面接の中核技法ではない。
参考資料
- 日本心理研修センター「第4回公認心理師試験」
- 日本心理研修センター「第4回公認心理師試験 午前問題」
- 日本心理研修センター「第4回公認心理師試験 正答」
- National Institute of Justice, Enhancing Enhanced Eyewitness Memory: Refining the Cognitive Interview
- Office of Justice Programs, Evaluation and Field Implementation of the Cognitive Interview, Executive Summary
- Office of Justice Programs, Cognitive Interview Technique for Victims and Witnesses of Crime



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