公認理師資格試験 過去問解説 問140 事例問題 取り繕い反応

公認理師資格試験 過去問解説 問140 事例問題 取り繕い反応

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

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問140 

75 歳の男性 A。A の物忘れを心配した妻の勧めで、A は医療機関を受診し、公認心理師 B がインテーク面接を担当した。B から「今日は何日ですか」と聞かれると、「この年になったら日にちなんか気にしないからね」と A は答えた。さらに、B から「物忘れはしますか」と聞かれると、「多少しますが、別に困っていません。メモをしますから大丈夫です」と A は答えた。

A に認められる症状として、最も適切なものを1つ選べ。

① 抑うつ状態

② 取り繕い反応

③ 半側空間無視

④ 振り返り徴候

⑤ ものとられ妄想

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ② 取り繕い反応

事例の概要

事例問題では、はじめにざっくりと事例の概要を整理することが正解に導くための鍵となります。

本事例を整理すると以下のようになります。

  • 75歳 男性 物忘れを心配した妻の勧めで受診
  • 面接の問診時に、「この年になったら日にちなんか気にしないからね」と質問に対して回答せずに取り繕う様子が見られた
  • 妻の心配とは裏腹に、「別に困っていません」という反応を示した

アルツハイマー型認知症に関してはこちらの記事を参照してください!

選択肢の解説

① 抑うつ状態

抑うつ状態は、認知症の前駆症状や周辺症状として、比較的よくみられる症状となっています。

また、抑うつ状態が原因で認知機能の低下が生じるという場合もあり、鑑別が非常に重要となってきます。

今回の事例では、抑うつ状態を示唆するような所見は得られていないため、こちらの選択肢は不適切となりますね。

② 取り繕い反応

取り繕い反応とは、

「取り繕い」は多くのAD患者にみられる、もっとも「アルツハイマーらしい」症状のひとつである。

(中略)

結局,取り繕い反応とは自身の欠陥を隠そうとする言動であり、恥をかかずにその場を切り抜けようとする反応である。そしてそれは一定の神経ネットワークの障害に単純に還元できるような神経心理症状ではなく、「周囲から取り残されたくな
い、馬鹿にされたくはない」という AD 患者の心理的機転が生み出す coping skill とも解釈できるのである。

出典:松田実(2009). 認知症の症候論, 高次脳機能研究, 29(3), 312-320.

とされるなど、アルツハイマー型認知症のような後天的な認知症でみられることが多いといいます。

この「取り繕い反応」は、人格の変化などが生じず「人との関係性を維持しようとする」からこそアルツハイマー型認知症の方にみられるともいわれ、病識の欠如とは異なるものです。

典型的には、心理検査や問診によって、言い訳のような形で表出されます。

よって、こちらの事例でのAの言動は、取り繕い反応に該当するといえるでしょう。

③ 半側空間無視

半側空間無視とは、脳の損傷によって、損傷部位とは逆の空間が認識できなくなる状態を指します。

一般的には、脳梗塞や事故などによって右脳を障害された場合に左側の空間を認識できなくなるケースが多いとされます。

このとき、視力は保たれているのですが、空間を全く認識できなくなるため、不自然に左側の食事だけ残したりするなどの状態がみられるようになります。

④ 振り返り徴候

振り返り徴候とは、問診や質問を受けた際に、付き添いの家族や介護者などの方をうかがって確認を求めることを指します。

認知機能の低下によって、他者への確認を求める行為が日常的にも増加するため、比較的早期に発見できるサインとされています。

⑤ ものとられ妄想

ものとられ妄想とは、その名の通り、「誰かに自分の物を盗まれた」という妄想が出現することを指します。

こちらもアルツハイマー型認知症に多く出る症状のひとつではありますが、本人の精神的な不安や孤立感からくる被害者意識から発現することが多いようです。