公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問1 秘密保持義務の例外

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第6回公認心理師試験・午前問1は、公認心理師の秘密保持義務と、その例外となる「正当な理由」を問う問題です。

正答は④です。

この問題では、「本人の同意がなければ絶対に情報共有してはいけない」と覚えるのではなく、公認心理師法第41条の秘密保持義務と、虐待通告や切迫した生命危機などの正当な理由を区別することが重要です。

問1の正答は④

選択肢は次の5つです。

  • ① 被面接者が配偶者から身体的暴力を受けているという事実を知り、警察に通報した。
  • ② 面接で自殺念慮と具体的な準備を語った被面接者の家族に、切迫した危険を伝えた。
  • ③ 面接した児童が親から虐待を受けている可能性があると考え、児童相談所に通告した。
  • ④ 被面接者の信条に関わる問い合わせを被面接者の職場の上司から受け、面接で知り得た関連情報を伝えた。
  • ⑤ 面接した高齢者が、家族によって食事も十分に与えられず、脱水を起こしかけているという事実を知り、市町村に通報した。

本人の同意なしに行った場合、秘密保持義務違反に該当するのはです。

公認心理師法第41条の秘密保持義務

公認心理師法第41条は、公認心理師について、「正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない」と定めています。

したがって、守秘義務は公認心理師の基本的な義務ですが、条文自体が「正当な理由」がある場合を区別しています。

試験では、本人同意の有無だけで機械的に判断するのではなく、法律上の通告義務や生命・身体の安全確保など、情報共有に正当な理由があるかを考えます。

① 身体的DVを警察へ通報する

①は秘密保持義務違反には該当しません。

配偶者暴力防止法では、配偶者から身体に対する暴力を受けている者を発見した者は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察官へ通報するよう努めなければならないとされています。

さらに同法は、守秘義務に関する法律の規定について、この通報を妨げるものと解釈してはならないとしています。

本問では「配偶者から身体的暴力を受けている」という状況が明示されているため、警察への通報には法的な根拠があります。

② 切迫した自殺危険を家族へ伝える

②も、この設問の状況では秘密保持義務違反には該当しません。

ポイントは、単に「死にたいと言った」というだけではなく、自殺念慮に加えて具体的な準備があり、切迫した危険があるとされている点です。

自殺念慮と具体的な計画・準備をどうリスク評価するかは、「自殺予防や自殺のリスク評価」の過去問解説でも整理しています。

公認心理師法第41条は「正当な理由」がある場合を秘密保持義務違反から区別しています。また、専門職倫理では、秘密保持には限界があり、本人や他者に重大な危害が及ぶおそれがある場合には安全確保のための対応が必要と整理されます。

したがって、切迫した生命危機に対して必要な範囲で家族等と情報共有することは、安全確保のための正当な理由がある対応と考えられます。

ただし、自殺念慮がある人について常に本人の同意なく家族へ情報を伝えてよい、という意味ではありません。危険の切迫性、具体性、共有する相手や情報の必要性を評価することが重要です。

③ 児童虐待の可能性を児童相談所へ通告する

③も秘密保持義務違反には該当しません。

児童虐待防止法第6条では、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに市町村、福祉事務所、児童相談所等へ通告しなければならないと定められています。

虐待が完全に確認されてから通告するのではなく、「虐待を受けたと思われる」段階で通告の対象になります。

また、守秘義務に関する法律の規定は、この通告義務の遵守を妨げるものと解釈してはならないと明記されています。

④ 被面接者の信条を職場の上司へ伝える

④が正答です。

被面接者の職場の上司から問い合わせを受けたというだけでは、本人の同意なく面接で知り得た情報を伝える正当な理由にはなりません。

公認心理師は、業務上知り得た秘密について、公認心理師法第41条の秘密保持義務を負っています。

さらに、「信条」は個人情報保護法上の要配慮個人情報に含まれ、取扱いに特に配慮が必要な情報です。

本問では、生命・身体の安全確保や法令に基づく通告といった事情も示されていません。そのため、本人の同意なく職場の上司へ関連情報を伝える④は秘密保持義務違反に該当します。

⑤ 高齢者虐待を市町村へ通報する

⑤も秘密保持義務違反には該当しません。

高齢者虐待防止法第7条では、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見し、生命または身体に重大な危険が生じている場合には、速やかに市町村へ通報しなければならないと定めています。

さらに、守秘義務に関する法律の規定は、この通報を妨げるものと解釈してはならないとされています。

本問では、食事を十分に与えられず脱水を起こしかけているため、生命・身体への重大な危険がある状況として、市町村への通報が必要です。

5つの選択肢を整理する

選択肢 情報共有の根拠 秘密保持義務違反
① 身体的DVを警察へ通報 DV防止法上の通報 該当しない
② 切迫した自殺危険を家族へ共有 生命の安全確保という正当な理由 該当しない
③ 児童虐待を児童相談所へ通告 児童虐待防止法上の通告義務 該当しない
④ 信条を職場上司へ伝達 本人同意も安全・法令上の正当な理由もない 該当する
⑤ 高齢者虐待を市町村へ通報 高齢者虐待防止法上の通報義務 該当しない

試験対策:「本人同意がない=すべて違反」ではない

この問題で最も重要なのは、本人の同意がない情報共有をすべて秘密保持義務違反と考えないことです。

次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 原則として秘密保持義務がある
  2. 本人の同意があるか
  3. 同意がなくても、法令上の通告義務・通報規定があるか
  4. 本人や他者の生命・身体に切迫した重大な危険があり、安全確保のための正当な理由があるか
  5. 情報共有は必要な相手・必要な範囲に限定されているか

特に公認心理師試験では、秘密保持と安全確保・虐待対応を対立するものとしてではなく、法令と専門職倫理の両方から判断することが求められます。

まとめ

  • 第6回公認心理師試験・午前問1の正答は④
  • 公認心理師法第41条は、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らすことを禁止している
  • 身体的DVの通報、児童虐待の通告、高齢者虐待の通報には法令上の根拠がある
  • 自殺念慮に具体的準備が伴い切迫した危険がある場合、安全確保のために必要な情報共有が正当化されることがある
  • ただし、自殺念慮一般について無制限に情報共有できるわけではない
  • 本人の同意も法令・安全上の正当な理由もなく、面接で知った信条を職場上司へ伝える④は秘密保持義務違反に該当する

参考資料

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