第3回公認心理師試験・午前問33は、公認心理師の業務について、専門職として適切な対応を理解できているかを問う問題です。
正答は③「心理療法の効果に焦点を当て、限界については説明を行わず、心理療法を開始する」です。
心理支援では、期待できる効果だけを伝えるのではなく、支援の目的・方法・料金・予想される利益やリスク・守秘とその限界など、意思決定に必要な情報を説明し、本人の理解と同意を得ながら進めることが基本です。
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【問33】公認心理師の業務
問33 公認心理師の業務について、不適切なものを1つ選べ。
① 必要に応じて、他の保健医療の専門家と協力する。
② 心理療法の料金については、心理療法を始める段階で合意しておく必要がある。
③ 心理療法の効果に焦点を当て、限界については説明を行わず、心理療法を開始する。
④ 心理的アセスメントには、心理検査の結果だけではなく、関与しながらの観察で得た情報も加味する。
⑤ クライエントが、被虐待の可能性が高い高齢者の場合は、被害者保護のために関係者との情報共有を行う。
正答:③
第3回公認心理師試験の午前問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式資料で確認できます。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター
③が不適切な理由:効果だけでなく「限界やリスク」も説明する
③では、心理療法の「効果」に焦点を当て、限界については説明せずに開始するとしています。
しかし、心理支援を受ける本人が、自分にとってその支援を受けるかどうかを判断するためには、期待できることだけでなく、支援の限界、予想される利益やリスク、他の選択肢、守秘の範囲や例外なども含めて必要な情報が示されることが重要です。
日本公認心理師協会の倫理綱領に関するガイダンスでも、心理支援に際して、目的、形態、技法、契約期間、料金、予想される利益とリスク、守秘とその限界、緊急時の対応などを説明することが望ましいと整理されています。
「効果がある」と良い面だけを強調し、限界を説明しないまま開始するのは不適切です。
① 他の保健医療の専門家と協力する
①は適切です。
公認心理師法第42条では、公認心理師は、その担当する人に対して保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、関係者との連携を保つことが求められています。
したがって、本人の支援に必要な場合に、医師、看護師、その他の保健医療専門職等と協力することは、公認心理師の業務として重要です。
ただし、連携することと、本人の情報を無制限に共有することは別です。秘密保持、本人への説明、共有目的、必要な情報範囲などを踏まえて連携します。
② 料金は心理療法を始める段階で合意しておく
②も適切です。
心理支援を開始してから予期しない料金が発生するような状態は、本人の自己決定や信頼関係を損なう可能性があります。
そのため、支援を始める段階で、
- 料金
- 支払い方法
- キャンセル時の扱い
- 支援のおおよその枠組み
など、契約に関わる条件を分かりやすく説明し、合意しておくことが重要です。
料金は、インフォームド・コンセントに含まれる重要な情報の一つです。
④ 心理検査だけでなく観察情報もアセスメントに用いる
④も適切です。
心理的アセスメントは、心理検査の得点だけで完結するものではありません。
面接での語り、行動観察、生活状況、対人関係、発達歴、本人を取り巻く環境など、複数の情報を統合して理解します。
そのため、関わりの中で得られた観察情報を心理検査の結果とあわせて検討するという④は適切です。
試験対策では、
アセスメント=心理検査の点数だけではない
と押さえておきましょう。
⑤ 高齢者虐待が疑われる場合の情報共有
⑤も、本問では適切です。
高齢者虐待防止法では、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、生命または身体に重大な危険が生じているときには、市町村への通報義務が定められています。それ以外の場合にも、市町村への通報に努めることが規定されています。
また、同法は、この通報について守秘義務に関する法律の規定が妨げになると解釈してはならないと定めています。
したがって、虐待が疑われる高齢者の保護が必要な場面で、関係機関と必要な情報共有・連携を行うことは適切です。
ただし、ここでも重要なのは、「虐待が疑われれば誰にでも情報を広げてよい」という意味ではないことです。法令上の通報先や支援に必要な関係者を確認し、本人の安全確保に必要な範囲で情報を扱います。
5つの選択肢を整理
| 選択肢 | ポイント | 判定 |
|---|---|---|
| ① 他職種と協力する | 必要な多職種連携は公認心理師の重要な業務 | 適切 |
| ② 料金を開始段階で合意する | 契約条件を事前に説明し合意する | 適切 |
| ③ 効果だけ説明し、限界を説明しない | 十分な説明と同意を欠く | 不適切・正答 |
| ④ 検査結果と観察情報を統合する | 多面的な心理アセスメント | 適切 |
| ⑤ 高齢者虐待が疑われる場合に情報共有 | 被害者保護のため、法令と必要性に沿って連携する | 適切 |
インフォームド・コンセントは「署名をもらえば終わり」ではない
インフォームド・コンセントは、単に説明書へ署名をもらう手続ではありません。
本人が支援内容を理解し、自分の意思で選択できるように、必要な情報を分かりやすく説明し、疑問に答え、支援の途中でも必要に応じて確認していくプロセスです。
心理支援では、
- 支援の目的と方法
- 料金や契約条件
- 期待される利益と限界・リスク
- 守秘義務とその限界
- 他の専門職との連携
- 緊急時の対応
などを、本人の状態に合わせて説明することが重要です。
試験対策ではここまで覚える
- 心理療法では効果だけでなく限界やリスクも説明する
- 料金などの契約条件は開始時に確認・合意する
- 公認心理師は必要な多職種連携を行う
- 心理的アセスメントは心理検査だけでなく観察や面接など複数情報を統合する
- 虐待等では守秘義務だけで抱え込まず、法令と安全確保に沿って必要な連携を行う
- 情報共有は必要性と範囲を検討し、無制限に行わない
問33の中心:公認心理師は、本人が十分な情報を得て意思決定できるよう、心理支援の効果だけでなく限界・リスク・料金・守秘の範囲なども説明する。
まとめ
第3回公認心理師試験・午前問33の正答は、③です。
心理療法を始める際に、効果だけを強調し、限界について説明しない対応は適切ではありません。
心理支援では、本人が十分な情報に基づいて選択できるよう、目的・方法・料金・期待される利益・限界やリスク・守秘とその限界などを説明し、本人の理解と同意を得ながら進めることが重要です。
あわせて、必要な多職種連携、多面的なアセスメント、虐待が疑われる場合の法令に基づく安全確保も、公認心理師の専門的業務として整理しておきましょう。



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