公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問21 Dembo・Wrightの障害受容理論

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第5回公認心理師試験・午前問21は、T. DemboとB. Wrightらによる障害受容の理論について問う問題です。

問題

T. Dembo とB. Wright らが提唱した障害受容の理論に関する説明として、正しいものを1つ選べ。

① 価値範囲を縮小する。
② 相対的価値を重視する。
③ 失われた能力の回復を重視する。
④ 精神障害の病識研究を端緒とする。
⑤ 障害に起因する波及効果を抑制する。

正答は⑤「障害に起因する波及効果を抑制する」です。

Dembo・Wrightの障害受容理論

DemboやWrightらの理論では、障害受容を単に「障害をあきらめて受け入れること」と捉えるのではなく、障害によって生じた価値の喪失や自己評価の低下に対し、価値体系を再編成していくこととして考えます。

Wrightの価値転換理論は、主に次の4つで整理されます。

  1. 価値範囲の拡大:失われた価値だけに限定せず、ほかの価値や可能性にも目を向ける。
  2. 障害の影響の抑制・限定:障害の影響を、その人の人格や能力のすべてにまで広げない。
  3. 身体的外観・身体的価値の相対化:身体的特徴だけを自己価値の中心に置かない。
  4. 比較価値から資産価値への転換:他者との比較だけで価値を決めず、その人自身が持つ価値や強みに目を向ける。

このうち問題文の⑤「障害に起因する波及効果を抑制する」は、2つ目の障害の影響を必要以上に広げないことに対応します。

「波及効果を抑制する」とは

たとえば、ある身体機能に障害が生じたときに、「この機能が失われたから、自分には価値がない」「何もできない」と自己全体まで否定的に評価してしまうことがあります。

Wrightの理論では、障害による制約を現実的に認めつつも、その影響を自己全体の価値や、障害とは直接関係しない能力・役割にまで一般化しないことが重要とされます。これが「障害に起因する波及効果を抑制する」という選択肢につながります。

各選択肢の解説

① 価値範囲を縮小する

誤りです。理論では逆に、価値範囲を拡大する方向が示されます。ある価値を失ったとしても、それ以外の価値や可能性に気づくことが重視されます。

② 相対的価値を重視する

誤りです。他者との比較による価値だけを重視するのではなく、比較価値から資産価値へ転換することが挙げられます。

③ 失われた能力の回復を重視する

誤りです。この理論の中心は、失われた能力が必ず回復することを障害受容の条件とすることではありません。回復可能性を否定する理論でもありませんが、価値転換の焦点は、回復そのものよりも価値体系や自己評価の再編成にあります。

④ 精神障害の病識研究を端緒とする

誤りです。Demboらの障害受容研究は、戦争などによって切断、脊髄損傷、重度熱傷などの目に見える身体障害を負った人への研究を背景として発展しました。精神障害の病識研究を出発点とする理論ではありません。

⑤ 障害に起因する波及効果を抑制する

正しい選択肢です。障害の影響を、実際に障害されていない能力や自己全体の価値にまで広げないという考え方に対応します。

「障害受容」を固定的な段階として扱わない

試験ではWrightの価値転換理論を正確に覚える必要があります。一方、臨床や支援の場で「障害を受容できている/できていない」と本人を単純に評価することには注意が必要です。

障害をどう意味づけるかは、身体状態だけでなく、生活環境、社会的障壁、周囲の態度、利用できる支援、本人が大切にする価値などにも左右されます。したがって、この理論は本人に受容を要求するためではなく、障害による価値の喪失や自己評価の変化を理解する歴史的・理論的枠組みとして整理するとよいでしょう。

試験対策として覚えること

  • Dembo・Wright → 障害受容と価値転換
  • 価値範囲は「縮小」ではなく拡大
  • 障害の影響を自己全体へ広げない → 波及効果の抑制
  • 身体的価値だけを中心にしない
  • 比較価値 → 資産価値
  • 失われた能力の回復そのものを障害受容の条件にはしない

参考資料

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